AnotherStory〜もしかすると〜



眼鏡は正義だ!!


秋も過ぎ去り、すでに町はクリスマスのイルミネーションで飾られている。
駅前の通りでは、もうクリスマスソングが流れる。
真っ赤なお鼻の〜トナカイさんは〜いつも皆の〜笑いもの〜、なんてこの3年ずっと聞いている。
この時期になると、カップルが増えて、腕を組む二人組みの姿が増える。

はぁ…………

ため息交じりに吐き出した息は、空気中の物質に触れて白くなり、
星の広がるこの空に広がり見えなくなる。
唯一覚えているオリオン座の姿を見つけようと探してみるが、
横浜の明かりが、その形を消し去っている。

家路を黒いコートを着て進む。
横目で、手をつなぐと2人組を見ながら、またため息をつく。
ふと思った、

どうして俺には、彼女がいないんだろうか。


コツコツと、黒い革靴がアスファルトを踏む音を聞きながら、俺はどうしようもないことを思う。

2ヶ月前に25歳になり、リアルに落ち込んだ俺は、
自分への虐げとして録音ラジオを公開するほどの真性のマゾな自分にだって、
彼女の一人や二人欲しいものである。
しかし、どこで人生を誤ったのか、年齢と彼女いない歴の数値が、
見事にがっちり合うのだ。うん、泣いていいかな……。

本気で泣き出しそうだったので、駅への足を早める。
ここで泣いたらかなりの不審者だから。
さすがに、警察にお世話になりたくない。

終電に乗り、唯一空いてた席に座り今日職場であったことを思い返す。
そういえば、定例報告またしてなかったな、まあでも、上司も気にしてないし、いいか。
なんて考えながら、過ぎ去る昨日。そしてまた、今日が始まる。

Another Story 〜もしかしたら〜

12月中旬。木々が紫や茶色の装いを脱ぎ捨て、
新しい季節への夢や希望をその幹に残し、生きている。
そして、歩き出す。そんなことを思いながら、朝の街路樹の道を進む。
落ち葉の踏む音を聞きながら、職場を目指す。
そのときはまだ、どれだけ一日が大変かなんて、全く創造もしなかった。


午後8:30。職場の時計はその時間を指し示す。
外は真っ暗で、クリスマスツリーの電飾が窓の外で点滅しながら輝く。
長時間、気を詰めすぎたと思い、体をうーんと伸ばす。

「お疲れ様ですー。」

ふと、背中から声がかかる。振り返って見ると、そこには同じく残業だったのだろう、眼鏡先輩がいた。

「あ、いえ、そちらこそ、お疲れ様です。」
「じゃが○こ食べますー?」
「はい、いただきます。」

何度も食べ物を眼鏡先輩からいただいているので、今回もまた、遠慮せずにいただく。

「どうですかー?仕事のほうは?」
「ええ、なんとか。これなら、向こうの社に行く前に済みそうですよ。」

俺には、最近決まったことがある。
来年の1月より、刈谷の社のほうに異動し、結構な重役に就くことになる。
入社3年目だが、俺は真性のマゾヒストなので、その職場を望んだ。
一時はどうなるかわからなかったが、最近決まったことである。
そのために今残っているこの仕事をさっさと終わらせて、
こっちに気がかりなく向こうへと行きたかったので、今日も残業している。

「そうですかー。あと、チョコも食べる?」
「はい、もらいます。」

眼鏡先輩に話しかけられたタイミングがちょうどキリがよかったので、談笑をはじめた。
どうやら、眼鏡先輩もキリがよかったみたいで、どんどん話に花が咲く。
上司も残っているみたいだが、気にせずどんどん話を進める。

「ねこ鍋のDVD、どうします?」
「どうしましょうか。借りても次返すのがなかなかできなくなりますからね。」
「2つ持っているから、片方ならいつ返してもらってもいいですよ。」
「そうですか?じゃあ、借りますね。」

話のネタがつき、静かになった。唯一この部屋に残ってた上司も仕事を一旦止めたみたいで、
コーヒーを飲みに行っている。

今この部屋には俺と眼鏡先輩しかいない。
二人しかいないこの部屋は、えらく静かで、相手の呼吸すら聞こえそうだ。

「あの……。」
「はい?」

眼鏡先輩が話しかける。うつむいたままで。

「吉村君って、来年からもうこっちにいないよね。」
「ええまあ、もう決まったことですから。」
「こっちにいた間、楽しかった?」
「そうですね……。楽しかったですよ。SEは大変ですが。」
「そうだよねぇ。」

二人してかすかだけど、笑った。

「あのさ、こっちにいて、その……、気になった人とかできた?」
「え?」

以前、

『こっち(横浜)に心を決めた人はいないんですか?』

と聞かれたことがある。そのときは笑って誤魔化したが、
また同じような質問だった。
今回もまた誤魔化そうとしようと思った。

「私は、いるんだよ。」
「へぇー、そうなんですか。恋が叶うといいですね。」

「……気づかないの?」

「え?」

眼鏡先輩がふいに顔を上げる。
そこには、少女のように顔が真っ赤になっても、一途にただ俺だけを、見つめている女性がいた。

「私、いつからか、ある人しか見ることができなくなっていた。
気がつけば探してたし、気をひいてもらおうと、お菓子とかを上げたりした。」

なんだろう、とても近親感を覚える。
いつかあった光景のように、そこで流れつつける記憶の残影が、
今だけ具体化し、頭の中に流れる。
そう、それはまさしく……。

「あんまり感情を出さないようにしてた。気づかれるのが恥ずかしかったから。でもね、もう無理なんだって思うんだ。」
「それは……。」

眼鏡先輩は目をつぶり、深呼吸をしている。
初めてだった。
この雰囲気が。
こんなに鼓動が、早く動くのが。
こんなに体が固まっていることが。
そして、こんなに輝いて見えることが。

意を決したように、目の前の女性は立った。
そして、言った。

「私は、吉村君のことが……。」









































「ゆ、夢か……。」



























「夢じゃないよ。」

「え゛」




















〜あとがき〜
ふとこんな話が思いつきました。
最後は、急に電波が。石を投げないでくださいね。
ご希望があれば、最後をきれいにまとめますが。
といっても、そんなに大袈裟に変わることはありません。
書いてて恥ずかしくなりましたよ。

本当はもっとまゆまゆのキャラを崩壊させたかったのですが、
この話の進行上、こうしないと、というかこうとしかできなかったのでご勘弁を。
「これでまゆまゆのキャラ像が変わった。どうしてくれるんだ。」
といわれても、何もできませんので。