対極地戦闘用装備


「さて、帰るかな」

はるねぇに買い物を頼まれ、
マンションへの帰り道。

「……ん?」

中学校の前で、ふと立ち止まる。

校庭で運動会へ向けて練習に励む姿があった。

「懐かしいなぁ」

中学高校時代の頃の自分と重ねて、
感傷にふけってみる。

まだ、数年前の出来事なのに、
酷く昔な気がしてくる。

今考えると高校時代は男子校だったから、
異様にむさ苦しかったよなぁ。

特にあの生徒会長が。

………………

…………

……

「少し残念だったな」

「何が?」

夕飯の片付けを始めたはるねぇが、
俺の呟きに返事をした。

夕飯の時は運動会の話で、
結構盛り上がった。

「いや、はるねぇと体育祭一緒にやりたかったなぁ、ってさ」

「お互い学校が別だったからねぇ」

しかも、近いからって言って同じ日にやるんだよなぁ。

「はるねぇに応援されたら、
 陸上部相手でも勝てたかもなぁ」

「トラック競技系?」

「あぁ」

トラック以外の競技って、
あまり足の速さが顕著に出ないしな。

「勿論、他の競技でもな」

「そう言って、ゆーちゃんが三年の時の体育祭は応援しに行ったじゃん」

そう言えばそうだったな。

しかも、その応援があっても負けてたし。

現実って厳しいよな。

「だが、確かに応援はあったけど、
 あれじゃ足らないのだよ」

「足らない?」

洗い物に手を付けながら、
はるねぇは首をかしげる。

「あの時、はるねぇは父兄での応援で、
 普段着だったろ?」

「そうだね?」

「考えて見てくれ、もし共学だったなら、
 応援も本格的だったんじゃなかろうか!?
 それならあの生徒会長が黙ってる筈はない!
 体育祭での役員も兼ねていた委員長だから、
 全学年の応援団員に衣装統一とか言って用意するに決まっている。
 男子は学ラン、女子はチアリーダー。
 いや、あえて女子も学ランをしかも上着だけっ!
 それではるねぇが応援してくれるなら、
 一年坊主の俺だろうが愛の力で学年混合競技で三年生にだって勝ってみせるぜ!」

一気に言い切った。

息継ぎのポイントが難しいぜ。

流石にKには敵わんな、
固有結界なんて俺には張れないぜ。

「どうしたの?」

虚空を眺める俺にはるねぇが、
何かを感じ取ったのだろうか、
俺の方に振り向いた。

「いや、某ひぐらしが鳴き散らす雛見沢に思いを馳せただけさ」

所で、雛見沢って何処だろう?
Kって誰だろう?

「ゆ、ゆーちゃんが壊れちゃっても、
 あたしがずっと看護してあげるからね?」

はるねぇがこの世の終わりみたいな顔をする。

本気で心配されてしまったようで、
声が所々震えてる。

なんとなく頭に浮かんだ単語を繋げて口から出してみたが、
さっぱり覚えがない単語ばかりだ。

ヤバイ電波を受信したらしい。

「もう、大丈夫だ」

「ホント?」

まだ心配らしく、
しつこく食らいつくはるねぇ。

「あぁ、ホントだ」

多分な。

………………

…………

……

「ねぇ、ゆーちゃん」

「どうした?」

リビングでグダグダとテレビを眺めていると、
背後からはるねぇに呼ばれ振り向いた。

ドアから顔だけだして、
恥ずかしそうな困ったような笑顔を見せる。

うん、見た瞬間に可愛いなって頬が緩んだ。

「えっとね、毎日頑張ってるゆーちゃんの応援がしたいなって思って……」

そろそろと恥ずかしがりながら部屋に入ってくる。

はるねぇの格好に、
俺は一瞬言葉を失った。

ちょっと、装備を紹介してみよう。

まずは、防具からだ。

頭部装備は額に巻かれた赤鉢巻き。

前髪だけを出して、
スタンダードな風貌を演出している。

次に上半身装備の鎧はコットン100%の半袖白シャツ。

胸の真ん中に張られた学年クラスと、
【和泉】と名字の書かれた白布がアピールポイントだ。

次に下半身の上部腰装備だ。
膝上丈のシックな赤紫色したハーフパンツ。

普段のナイスなスパッツ姿に似ているようで違う部分に魅力を感じる。

そして足元、脛の真ん中辺りまでのワンポイント白ソックス。

ただ室内という事もあり、スリッパ姿なのが残念ではあるが、
これはこれでギャップに来るものがある。

そして武器はなんと両手持ち。

いつかの川原での攻防を彷彿とさせるいでたち。

スズランテープ製のボンボンはその安易で幼稚な作り故の懐古的な可憐さ与える。

そう、それはセット装備と言って良いだろう。

体操服対応援合戦仕様であるっ!

「久しぶりに高校の体操服着てみたんだけど、どうかな?」

はるねぇがモジモジしながら、
期待した表情で俺をチラ見する。

もう、体全体から『誉めて・構って・愛でて』、
なんてオーラを放っているのが俺には見える……いや、視えるのだ!

「はるねぇサイコー!」

俺は格好を誉めるのも忘れてはるねぇを抱きしめる。

両頬に軽いキスをしてから、
少し長めに唇を奪う。

舌を絡める訳でもない、フレンチなキスを。

「ゆーちゃん、元気だね」

少し押され気味な現状に苦笑を浮かべる。

「よ〜し、ゆーちゃんは今夜も頑張っちゃうぞ〜!」

演技がかった掛け声と共に、
俺ははるねぇをお姫様抱っこしてリビングを抜け出した。













〜あとがき〜

ども、You平です。

『平凡な日』の4話をお届けしました。

3話同様、こちらもチャットでリクエストのあった、
『運動会』ってお題で書かせて頂きました。

運動会じゃなくて体操服しか出てないじゃないかってツッコミはスルー推奨。(笑)

そしてゆーちゃんがはるねぇを連れ去ってどこへ行ったとか、
何をしたとかってのは詮索しないように。

……察してあげましょう(笑)

それでは、またネタなどありましたら、
次回も書かせて頂くかと思います。

でわでわ〜

(2007年7月30日)