あきのの。 〜In the School

 

1.



夜。窓から見える半月は、教室を照らす。影を作り、影が重なり、濃くなる黒。
遠くまで響く足音。反響する廊下。


「あっ、レポート忘れた。」
久しぶりに、部屋で鞄を開けた気がする。もちろん勉強のために。
10月20日。火曜日。PM7:00。窓から見える星野と、遠い遠い半分の月は、昨日と同じ。
俺は、月には詳しくないが、ほんのりと、光が強い気がした。

レポートというのは、先週課せられた、保健の「健康と体」についてまとめたものだ。
一人一人が、健康と結びつく何かについて詳しく調べなさい、と権田という体育教師によって出された宿題だ。
俺は、「タバコと生活」というタイトルでそのレポートを、先週から書いていた。

しかし、先週は、はるねぇと一波乱があったために、そのレポートの存在を意識の外に追いやっていた。
それが解決した今、普通の日常に戻っている。つまり、そのレポートの存在も、頭の中に戻ってきている。
しかもそのレポートは、まだ半分ぐらいしか出来ていない。明日学校にいる間で完成するのは難しい。

レポートを取りに行くために、ジャンバーを手に取り、バイクの鍵を探していた。
ちょうどそんなときに、運がいいのか悪いのか・・・

「ゆーちゃん、国語の辞書貸して〜〜。」

ノックもせず、姉であり、大切な人である、はるねぇが部屋に入ってきた。

「あれ、なんでジャンバー着てるの?」
「あぁ、ちょっと学校に行ってくる。」
「えっ、ゆーちゃんの学校に行くの?私も行く!」

俺は顔をしかめた。もともと俺が今、手に持っている国語の辞書を取りに来たんじゃないのか。
でも、姉は俺のことなど気に介せず、

「ゆーちゃんの学校がどんなのか気になってたし、男子校だから、女子高にはありえない、
何かが眠っているかもしれないし。」

学校には、はるねぇの気を引くようなものなどないし、まず何かが眠っているなら、とっくに町中の噂になっているはずだ。
はぁ、と俺はため息をつきながら、こっちを上目遣いで見るはるねぇに言う。

「あのなぁ、俺はただ学校に忘れたレポートを取りに行くだけだから、わざわざはるねぇが来る必要はない。」
「ゆーちゃん一人はじゃ心配だよう。」
「そんな、はるねぇじゃないんだから・・・。」

姉はまったくあきらめていない。困った。正直一人のほうが動きやすい。誰かに見つかったら、
停学とか、何かあるかもしれない。それに、はるねぇに何かあったら、俺は、またつらい。

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、はるねぇは駄々をこねている。あなたは本当に俺の姉なのか、
と思うぐらいに。小学生か、あんたは。

結局、いつものごとく、俺が折れて、はるねぇを連れて行くことに。伯母さんに、その旨を伝えて、
玄関を出る。そのまま、駐車スペースにおいてある、バイクのエンジンをふかし、バイクを広いスペースに持ってくる。

そこで待っていたはるねぇに、ヘルメットを渡して、俺は運転席に、はるねぇは後ろから、俺に抱きつくように乗る。
そのまま、学校に向けて、バイクを走らせた。

虫の合唱が響く。周りを山に、田畑に、自然に囲まれているためか、いたるところから虫の鳴き声が聴こえる。
俺は珍しく、風流を感じた。時速40キロでコンクリートの道を走る。風は空気抵抗となり、強く、
俺らの顔に、手に、体に、吹きつけてくる。見上げれば、東京では見られない、満天の星。
後ろに、走るバイクと、俺の体に抱きつくはるねぇと、ふと、幸せをかみ締めている俺の影を作り出す半分の月が、
空の一区画を支配し、太陽に代わって存在している。

月の光を浴びるネックレス。揺れながらも輝き続ける。色あせていない、金色のネックレス。

10月の、秋の姿だった。


「とうちゃ〜〜〜く!!」
背中から元気な声が聞こえる。走ってて気づいていたことだが、この姉は、ずっと寝ていた。
風よりも大きな寝言と、より暖かさが欲しいのか、強く抱きしめてくる行動から手に取るようにわかる。
「しっかし、よく寝たなぁ、ふぁあ〜〜あ・・・。ふぅ。」
欠伸をしたはるねぇは、バイクから降り、ヘルメットをはずす。
まだまだ寝たりないらしく、目を半分ぐらいしか開けていなかった。

「さっさと行くぞ。あんまり時間は掛けれない。」
バイクを裏の通りに置き、鍵をポケットにしまって、俺は歩き出した。うしろから、はるねぇは機嫌よく、ついてくる。

「こっから入るぞ。」

裏の通りから少し歩いて、運動場側へ回る。
運動場の隅には、野球部のボールが誤って飛んでいかないように多分どこの学校にもあるだろう、大きなネットがある。
その先に、草木に覆われたフェンスがある。ただ、ある一部のみ、ただのフェンスだけが剥き出しているところがあった。
今回は、そこから忍び入ることにした。

「はるねぇは、待ってて。」
そういうと、俺は先にフェンスによじ登り、てっぺんで一旦止まる。
てっぺんから、地面まではさほど高くないので、落ちても着地の姿勢さえ気にすれば、怪我はしない。

俺がてっぺんに着いたのを確認してから、はるねぇは登りだす。俺の手が届く範囲まで登ると、
俺の手を握り、てっぺんまで俺が引っ張りあげて、向き合うようにてっぺんを足ではさむ。

先にはるねぇを降ろし、続けて俺も降りる。はるねぇを降ろす際には、ものすごく気を使った。
はるねぇが下に降りた時、ふと、繋いでた右手を見る。何気ない行為だけど、少し嬉しかった。

ちなみに今日のはるねぇは、スカートだ。いわずもわかるがな、そういうことだ。
俺が先に行ってしまうと、怒ってしまうし、見ても怒る。駄々っ子な姉のために、俺はそんな風にフェンスを登った。
もちろん、やましい気持ちなんて・・・気持ちなんて・・・・・・・

運動場の外側を通り、あまり人に気づかれにくい道を通る。誰に見られているかわからない。
常に、備えておかなければならない。俺は周囲に目を配らせた。

姉は、ただ騒がしいだけで、
「こっわ〜〜い、怖い怖い!なにあの光〜!うっわ〜!」
さっきから妙にテンションが高かった。夜の校舎は興奮するらしい。俺にはわからないし、むしろわかりたくもない。

中が真っ暗な校舎を見ながら興奮する姉を抑え、窓を調べる。
夕方、家に帰るときにはこんなことになるとは思わなかったから、まったく準備などしていない。
目に付くドアが開いてないか、一つ一つ調べて歩く。姉も、同じようにしているが、
「ゆーちゃんより先に見つけてやる・・・」
と小声でつぶやいている。どうやら俺に対して対抗意識を燃やしているみたいだ。
そんなことをするために来たんじゃないのに・・・、姉はどこまでも、俺に嘆息させるみたいだ、無意識のうちに。

数分たち、先に開いている窓を俺が先に見つけた。その瞬間、姉の負けは決定。

開いていた窓があったのは、教職員トイレ。男子便所。
俺は躊躇った。すごく。見たかぎり、用を足している人はいないようだが、男子便所に、
仮にも女性である、姉を入れるのは、何だろう、無意識のうちに、怒られそうな気がする。

俺がどうしようかと考えていると、何の躊躇もなく、姉は窓を開け、窓のサッシに足を掛け、
便所内に飛び入る。それから小さな悲鳴で「ひっ・・・」と聴こえたが、姉はすたすたと歩いてくい。
ただ、ふらふらしている。個室のドアにぶつかりそうになったり、こけようとしている。

もう見るに見れなくなった俺は、静かに飛び入り、はるねぇの側まで駆け寄る。
顔を見てみると、頬を赤く染めながら、手で目を覆い、さらにまぶたまで、ぎゅっと締めている。
どうやら入ってすぐに、ここが男子便所だと判断したみたいだ。さっきの声はその声だろうか。

「はるねぇ、手を握って。」
「うん・・・」
冷えたはるねぇの手を握る。ゆっくりとした足取りで、はるねぇを歩かせる。

そのまま、ドアを開け、軽く辺りを見回し、誰もいないことを確認する。
すぐ側の職員室からは、窓の隙間からもれるわずかな光が廊下を照らすだけで、
ほとんど真っ暗だといっていい。

便所を出たことを、はるねぇに言うと、ゆっくりとまぶたを開けるはるねぇ。
辺りを見て、安堵感を覚えた後に、一気にしゃべれなかった事をまくし立てた。

「あ〜、怖かった。入ったらいきなり男子トイレだって、そんなコントないよ〜。
って、何でゆーちゃん言わなかったの!?すごく困ったんn・・・・もが・・・・ふー・・・・ちょ・・・・」

ああうるさい、先生にばれるだろ。姉の口をさらにうるさくなる前に手で無理やり閉じる。
うしろから抱えるように、右手で口を押さえる。はたから見れば、彼女を後ろから抱きかかえ、
彼女が抵抗するように体をうねらせているように見えるが、そんな、雰囲気は二人には微塵もない。
互いに、ただ懸命に、抑えるか、暴れるかの攻防戦。時折、はるねぇは俺の体を殴ってくる。
あまり痛くない。それに後ろから抱き付いていると、はるねぇの柔らかさがわかる。
やっぱり姉も女の子だと、実感したまま、数分。

ふとはるねぇは静かになった。

不思議に思い、手を口から離し、正面からはるねぇをみる。

顔が少し青い。体を少し震えさせている。手を反対の方に置き、ばってんを作っている。

俺は、どこか体調が悪くなったのかと思い、はるねぇに尋ねた。
「どうしたのはるねぇ?風邪引いたか?」
首を横に振るはるねぇ。どうやら病気ではないらしい。じゃあ何だろか、と頭に疑問を浮かべていると、
先にはるねぇが答えを言った。

「こわい・・・くらいよぅ・・・ゆーちゃん。」

小さくなったはるねぇ。俺の、ジャンバーの袖を右手の指で少しだけつまむ。
いつもはやかましい姉は、今だけ、小さな女の子だった。

その姿に、しばし呆然としていた俺だが、「ゆーちゃん・・・?」という、はるねぇの声で、我に返る。
「あ、ああ。えっと、どうしたの?急に・・・」
「うん、・・・ちょっと昔を思い出して・・・」

昔、星野のみんなと、私の家でかくれんぼしたことがあったの。
あの時、私は押入れにずっと入ってたんだ。最初から。
鬼の子がね、私以外のこを全員見つけて、あとは私だけになったの。
みんな私が押入れにいることがわかってたみたいだから、私をどう驚かそうか、考えてたみたい。
そんなときに、お兄ちゃんが、そのことを聞いて、・・・別の押入れから、わたしがずっと嫌いで、
いつも泣いてた、ものがあるの。なまはげって知ってる?秋田とかで悪い子を懲らしめるための、行事。

その仮面をつけたおにいちゃんが、突然私の入ってた押入れの戸をあけて、
お決まりの台詞を言うの。「悪い子はいねぇか〜!」って。
急に開いた戸から、大嫌いななまはげが出てくるから、私はすごく泣いた。

「あれから、暗いのは苦手。今は少しだけなら耐えれるけど、長いとだめなんだ・・・。」

そう言い終ったはるねぇは、ずっと震えている。まだあの頃の記憶が頭を巡るみたいだ。
そんな姿がいやで、見たくないから、

「・・・えっ、ゆ、ゆーちゃん・・・」
俺は小さくなったはるねぇを後ろから抱きかかえる。はるねぇの首の前で俺は手を結ぶ。
首を肩に置き、さらに少しだけ強く抱きかかえる。

「大丈夫だから。俺がここにいるから。」
はるねぇがさらに赤くなる。俺の顔も、台詞が恥ずかしくて、徐々に赤くなる。
二人して固くなった。
そこから、はるねぇは溶けていく。

ふたりして、なんともいえない微妙な雰囲気の中、俺の教室を目指す。
もちろん、手を繋いだまま。

職員室の上にある俺の教室の2−4に着く。ちょうど真ん中あたりの教室。俺は前側の扉から教室に入る。
はるねぇは教室に入ると、ものめずらしそうに、教室内を見回している。掲示物をゆっくりと見ている。

そんなはるねぇ様子を横目で見て、もう大丈夫だろうなと安堵する。
さっさとレポートを取り、はるねぇを連れて教室を出る。

その時だった。あの姿を見たのは・・・























〜あとがき〜
どうも。ガムテープです。今回から、ここにあとがきを書きます。
えーっと、あきのの。〜In the School〜を読んでいただきありがとうございます。
正直今回は、ここまで長くなるとは思いませんでした。
前作の〜約束〜があまりにも長くて(7時間ぐらい)、今回は短めにしよう、と思い立ったのですが、
結局、前後に分けることに。これでちょうど中間ですね。まだまだ先は長いです。

予定としては、あきのの。は「8作」作るつもりです。ただ、そこまで自分に時間の猶予があればの話しですが・・・
夏休みに多く進めたいと思います。
あきのの。のあとは、もちろんふゆのの。はるのの。と・・・・・・なるかもしれないです。


    

2.


はるねぇの手を握る。少しだけ震えている。恐怖に怯えるか細い右手。
白くて、俺が少しでも力を入れれば壊れそうな、そんな右手だった。

「どうしたの?」
繋いでた右手をじっと見ていたため、はるねぇが不審そうに尋ねる。
「いや、なんでもねぇよ。」
「そう。」

もと来た道を歩く。月の光を浴びる廊下は、今来た道の存在を示すようなはっきりとした
色で照らす。

階段にさしかかった時、ふと上のほうから、機械音が聞こえる。鉄と鉄をこすり合わせるような、
ガシャン、ガシャンという音がする。少し気になった。
階段の手前で立ち止まったはるねぇは、2,3段下から、こっちの顔をみている。
どうしたの、と軽く顔を引きつりながらこっちを見る。

「いや、上のほうで、機械音がしたから。ほら、ガシャン、ガシャンって。」
「えっ・・・。」
そう俺が言うと、はるねぇは固まる。
俺は、しまったと思った。今にも、半狂乱になって暴れそうな、はるねぇに、
導火線に火をつけるようなことを言ったのだ。ほら、どんどん顔が・・・。

俺は次のはるねぇの狂乱に対して、耳をふさぎ、待っていた。
しかし、はるねぇは何も声を出さず、呆然としたまま、顔に月の光を浴びる。

「・・・行こう、ゆーちゃん。」

廊下に震えながらもしっかりと伝わる声で、そういったはるねぇに、俺は驚いた。
さっきまで暴れまわっていたはるねぇが急に変わったのだから。
「このままじゃ、おねぇちゃんとしての威厳がないから・・・。」
「いや、元々ないだろ。」
ないものを引っ張り出してもなぁ・・・、と続けて言うと、俺の言葉が気に入らないのか、
結局、叫んだ。
「うるさい〜、おねぇちゃんだぞ〜。」
そんな小さくなった状態で、言われても・・・


俺の手をぎゅっと握りながら、小動物みたいにふるふる震えるはるねぇを後ろに控えながら、
さっきから響く鉄と鉄が叩かれるような音がする3階へ続く階段を上る。
3階には、主に技術教科の教室がある。
調理室、被服室、音楽室など。そんな3階に辿り着いて、音の出どこを調べる。
奥に進むたびに大きくなっていく音。そして一番大きかったのは・・・技術室。


「なぁ、はるねぇ・・・」
「な、なぁに、ゆ、ゆーちゃん・・・。」
さっきよりさらに小さくなったはるねぇ。もう姉の尊厳とかいろんなもんがマイナス数値まで入ってる。
そんなはるねぇが子犬みたいでかわいいと思ったのは、ここだけの話だ。
俺はひとつ悪戯を思いついた。

「はるねぇが、この音の原因を調べてくれないか?」

うん、見事に固まってる。目を見開いたまま、ぽかーんとした顔で、口を少し開いたままだ。
徐々に青くなっているはるねぇ。少しずつブルブル震えだす。そして・・・

「無理無理無理無理む〜〜〜り〜〜〜!!む〜〜〜り〜〜〜だっ・・・・・ふっ、ふぐ、む〜〜!」

ああうるさい、先生に気づかれたらどうすんだ。
また暴れだすはるねぇ。まあ、今回は俺に非があるのだが、一度言ったことは取り消すのが、
今回は特に面倒なので、そのままはるねぇを向かわせるよう説き聞かせる。

「はるねぇは俺のおねぇちゃんだよねぇ。」
「う、うん、あと、ゆーちゃんのこい『おねぇちゃんだったら、弟が危ないところに行こうとしたら、
先に調べて道を作るんじゃいのかなぁ。』え、ちょ、あお、そうかもしれないけど・・・。」
「じゃあ決まりだ。行ってきてね、お・ね・ぇ・ちゃ・ん?」
「はぅぅ・・・」

さらに小さくなるはるねぇ。ま、これもはるねぇが、怖いものがなくなるために考えた結果だ。
仕方のないことだ。別に、暗いところは怖くはないが、この雰囲気は流石に怖くなったとかじゃないぞ。

プルプル震えながらも、扉に手をかけ、ゆっくりと開けるはるねぇ。
奥には暗闇が広がる、が、少しずつ近づく光がある。
赤い、光が、二つ、近づいて・・・

「きゃゃゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」

気が付くと俺は、校門に乗っていた。
うん、弟に少し時間をちょうだい、後ろでさっきよりも震える、はるねぇさん。


どんどん頭が冴えて、理解できてきたので、何が起こったかここで語ろう。

絶叫はるねぇ→俺の手を掴む→何度となく、廊下や階段に打ち付けられる俺の体
→教職員トイレで外へ先に放り出される俺→また俺の手を掴み、校門に向かって走り出すはるねぇ
→運動場を引きずるられる俺の体→校門を越えようとするがうまくいかず、そこであの恐怖がよみがえってきたはるねぇ

こんな感じだろう。もちろん、全身ボロボロ、ところどころ穴が開いた服。軽く擦り傷や打撲があるのか、
体のところどころが痛い。しかも、校門に乗ったままの俺は周囲から見たら、かなりおかしな人だろう。

とりあえず、校門を乗り越えて、さっきから校門前で小さくなっているはるねぇを学校から引っ張り出そうとした。
しかし、呼びかけてもまったく反応がない。困ったものだと、頭を抱えて考える。結局辿り着いたのはひとつの案。
いや、しかし、ここでするとなるとなぁ・・・。けどしないと多分このままの状況で変わらないだろうな・・・・・・。

「・・・はるねぇ。」
「えっ・・・・・・」

俺しか出来ないんだろうなぁと、運命にぼやきつつ、背後からはるねぇを抱きしめる。
言葉じゃ伝わらない何かを伝えるための俺の考えた案の結果だ。

「大丈夫だって。もう外にいるから。ほら、空にだって、星が見えるし。」
「うん・・・」

無機質で寂しいだけの押し入れと、暖かい俺の鼓動を感じるこの暗闇。
同じようでまったく違う二つ。その思いを感じたはるねぇの顔は少しずつ柔らかくなって・・・

「うわぁ〜〜〜ん。」

泣いた。精一杯。さっき抱きしめたからもう羞恥心などどこ吹く風。後に回して、今はただ、泣きじゃくる、
はるねぇの気持ちをすべて受け止めようとすることに全力を注いだ。
空には半分の月。星を、見上げた。

「まったく、怖かったならやめればよかったのに・・・」
「ふ〜ん、じゃ、誰のせいで私が見なきゃいけなくなったのかな?」
「うっ、そ、それは・・・」


さっきよりも元気は取り戻したものの、まだ少しだけ、影が残るはるねぇ。
俺に対して文句や不満を言う元気が一番最初に戻ってきたらしく、さっきから後ろでずっと俺に対して、
不平不満を言い散らす。ま、今回の責任はほとんど俺が悪いから、甘んじて受け入れよう。

ただ、傷口を蹴るのはやめてくれ・・・・・・


家に着いたのは、PM8:00過ぎ。すっかり9時にはなっているだろうと思っていただけに、
いかに学校でのことがとんでもなく感じた。

伯母さんに、帰ってきたことを伝えて、部屋に戻りレポートを完成させる事を始める。
半分しかないために、思ったよりも早くできた。8:43。そろそろ風呂にでも入ろうか、と思い部屋を出ようとする。

ちょうどタイミングよく、ドアをノックする音。すぐにドアを開けると、風呂上りだろうか、まだちょっと頬が赤いはるねぇが、
パジャマを着て立っている。

「ゆーちゃん、お風呂開いたよ。」
「ああ、入ってくる。」
「あ、それと・・・」
「ん?」

下の階に降りようとする俺を引き止めるはるねぇ。またなにかするのだろうか。

「あの赤い目のやつが何か調べてきて。」
「やだ☆」
「ひ、ひどい〜〜〜。ゆーちゃん。私があの部屋を調べられないのを知ってて言うの!?」
「いや〜、無理だって。」
「む〜、ひどい〜。」
「だったら気にしなければ良いのに。」
「無理だって。あれだけ、鮮明に記憶に残ってるんだから・・・。」

また思い出してきただろうか震え始める。
まったく、この姉は。嘆息しながらも、どこか、嬉しかったのかもしれない。

「わかったよ。」

そういうと、はるねぇは意外そうな顔をして、こっちを向く。
みるみるのうちに顔は笑顔になっていき、近づいてくる。そして、抱きつかれた。

「あ、あり、がとう・・・」

まあ、この笑顔が見れただけでもよしとしよう。本当はものすごく怖いのだが。
「やっぱり男って、泣き顔を見せただけでころっと・・・すごいなぁ、みのり。」
「ん、神明さんがどうかしたの?」
「え、いや、あははは、なんでもないよ。」


10月21日。水曜日。PM7:00。
俺は、また校門前に立っていた。昨日と違うのは、今は多分、部屋で小さくなっているだろう、
はるねぇがいないだけ。そういえば、家を出る前に、何か霊でも追い払うようなことをしていたのだが、大丈夫だろうか。

昨日と同じように、教職員用トイレから侵入し、階段を上る。やっぱり機械音が響く。
俺の足音も重なっている。結構怖い雰囲気だ。昨日ははるねぇがいたのでまだこんなに怖くはなかったが、
一人になると、やっぱり怖さが広がる。

順調に三階に上り、あの技術室に近づく。徐々に大きくなる、機械音と恐怖。
逃げたい気持ちも徐々に・・・。不の感情が大きくなった。そんな思いを抱えながらも扉へ向かう。

扉の前で一回深呼吸。心を落ち着かせて、再び扉へ向かう。
恐怖は絶頂に達した。好奇心はどこかへ行った。もう戻ってこないだろう。

「ガラッ」

扉を開け、すぐさま電気をつける。暗闇だったから恐怖はそこにあったので、消すために俺が考えたことだ。

暗闇から急に明るくなったので、目が慣れるのに時間がかかった。

そして、目が慣れ、部屋を見回すと・・・

「げっ、ゆ、結城くんではないか!」

委員長がいた。ものすごく焦っている。ほんとに、漫画のような焦り方だ。よく見ると背後に、何か隠している。

「委員長、その後ろに隠しているものは何だ?」
「えっ、そ、それは・・・」
かなり怪しい。
「見せてもらうぞ。」

俺は机の間をぬって、委員長に近づく。委員長は慌ててあためいている。
委員長を静かにさせるため、とりあえず、手刀で首筋を打ち、委員長を気絶させた。
元々、親父に護身術を習わされていたため、これぐらいよういなのだ。

倒れた委員長を尻目に、目の前にある、大きな布がかかった何かの布を取る。
そこには・・・

「な、なまはげ?」

そう、なまはげなのだ。ただ、形状は雪だるま。顔の部分が、なまはげで、下の部分には棒が刺さっており、
顔さえ変えれば十分雪だるまに見える。
表面は鉄の色をしている。棒の先は穴が開いていて、何かが出てくるように開いている。
目にはスイッチらしきものがあって、「稼動」・「停止」・「緊急爆破」の三つが書いてあるミニレバーがある。
いまはちょうと「停止」にある。多分、レバーを動かして、自分のしたいところに動かし、スイッチを押せば稼動するような、
タイプだろう。

とりあえず、俺は委員長がこれを何のために作ったのかを探すために、委員長の制服の中を探した。
右ポケットに手を突っ込むと、紙に触れた。出してみると、

「男性誘惑機取扱説明書」

と書いてある。おれはなんだか、理由がわかったような気がして、溜息をつく。
気が進まないが、調べるために、冊子になったその紙を見る。
やっぱり書いてある内容は想像通りで、

「この機械は、あなたが虜にしたい男性の名前を稼動中に呼ぶと、相手がどこにいても、
あなたを気になって仕方がなくなる電波を送信します。なお、この製品の・・・」

委員長の字で、必要なことが大体書いてあった。

うん、やっぱりか。おれは、この機械の解体作業にすぐさま向かった。


PM9:30。家に着く。ただ、手には、土産というか、あるものが握られている。
伯母さんに帰ってきたことを告げ、はるねぇのへやに向かう。
ノックを二回する。今俺の顔は、悪ガキの顔だ。
「はるねぇ?」

がちゃ、と、ドアが開き、はるねぇが出てくる。ブルブルと震えながら。
俺は、にやけた顔と、右手に握っている物を隠して、はるねぇに今日の報告をした。

「・・・と、いうわけで、別に幽霊なんかじゃなかったよ。」
「よかったぁぁ〜〜〜。」

本当に安堵の溜息をつくはるねぇ。

「あと、お土産。」
「えっ、何々?」

俺からの突然のプレゼントに驚きつつも嬉しい顔をするはるねぇ。
しかし、俺が出したものは、

「ぎ、ぎゃぁぁ〜〜〜〜〜〜!!」

と、大きな悲鳴とともに、部屋に再び引きこもる、はるねぇ。俺は、この悪戯に成功したことに嬉しさを覚えた。
しかし、そんなに怖いのか、このなまはげは。俺はその仮面を部屋に置いた。
























〜あとがき〜
どうも、ガムテープです。
まず、遅れて済みませんでした。
テスト週間が終わり、部活の大会が近づいたため、執筆時間がまったく取れなかったのが原因です。
それに、間をおいて書くようになったため、話の流れがおかしくなったところもあります。
矛盾があるかも・・・。そこは報告をお願いします。暇を見つけたらまた修正したいと思います。

次の話は、今までに比べたら短くなります。
それでは。