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 『星のない空の下で』二次創作
   4周年記念短編小説集


筆者  海老天

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○諸注意

本作品は吉村麻之氏原作のゲーム、小説、Flashに登場するキャラクター、設定を用いた二次創作小説です。
原作のネタバレ要素を含みます。ネタバレと言うより、原作を知らないと理解できないと思います。

『星のない空の下で』
『雨のあと、晴れの前。』
『雲のない雨空の下で』

以上の3作品を読了しておくことを強く推奨します。

また、本作品は全て「筆者の妄想」であるため、原作、及びむきりょく。ファンの皆様のイメージを崩してしまう危険性があります。
できる限り原作に忠実な記述を心掛けますが、その辺りはご理解の程をお願いします。

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○筆者の言い訳

厨二病の季節がやってまいりました(挨拶)

せっかくの4周年なので、星空系小説を記念に書こうと思いまして。

で、毎日に合わせた内容の短編を一日一話投下してみようかと(死亡フラグ)


↑動機はこれだけです。
どう見ても計画性皆無です本当にありがとうございました。

もし「続きに期待してやってもいいぜ」という寛大な方は期待しないでお待ち下さい(何)

そういう製作ペースのため、推敲の時間はほとんど取ってませんorz
誤字脱字、その他「こんな喋りかたしねーよ馬鹿野郎」的なミスまで、
できれば大目に見てやってください……。
(二次的な設定と混ざってる可能性が一番怖いです……orz)

それでは。

「俺……この短編集書き終わったら結婚するんだ……」


P.S.
ところで「Readme」ってこんなので良かったんでしょうか……?(何)

その1


「……クシュン!」

寒い。ついでに頭痛もする……気がする。
最近冷え込んでるようだし、風邪を引いたのかもしれない。
……くしゃみをすると、風邪の心配をするのは人間の本能なのだろうか。

「――いけない。早く済ませよう」

体調が悪いならぼーっとしてる暇などない。
そう自分に言い聞かせて、私は作業を再開する。


空を仰げば、雲一つない青空。
足元には散り始めたイチョウの葉。
秋の終わりの季節。



――そして。



私の親友が、私の隣から消えた季節――





『11月26日』

遠野有希。彼女とは幼稚園からの付き合いだった。
出会ったときのことは、今でも忘れていない。
……まぁ、忘れる方が難しいとも言える。あれは衝撃が強すぎた。

それから、本当に色々なことがあった。
本気で喧嘩したことも、お互いに大泣きしながら仲直りしたことも。
彼女無しでは決して語ることが出来ないほど、『私』の中心に存在し続けている親友。

ずっと私の隣にいた。私はずっと有希の隣にいた。
今までも、そしてこれからも……そう、一度も疑ったことはなかった。
きっと有希自身もそう思っていただろう。

「……実は違ったりして」

と勝手に想像して、つい吹き出してしまった。
例え、近い将来の進路が分かれていたとしても。
私達の絆は一生結ばれ続けていたはず。
だって、今でも途切れてないのだから……。

「――なんて、ね」


――時の力は偉大だ、そう実感できたのはいつだったか。
彼女を失ったときの苦しみでさえ過去のものとなり。
いつの間にか、友人との笑い話にもできるようになっていた。
今ではこうして、何の苦もなく思い出すことができる。

……少し寂しくなるのは、時の力でも、どうにもできないだろうけど。



「ふぅ。やっと終わった」
汚れ一つなく、日光の照り返しが眩しく輝く。
……元から汚れてはいなかった、という説もあるが。
こういうのは本人にしか理解できないのだ。うん。
「とか言うだろうな、有希は」
最近、考え方が有希に似てきた気がするのは気のせいに違いない。

一仕事終えて悦に浸ってると、
「あらあら、今日は遅くなったかしら」
温和な笑顔で向かってくる女性。
「たまたま私が早かっただけですよ、三里さん」
私は遠野三里さんに笑顔を返した。
「掃除までしてくれちゃって、ごめんなさいね」
「いえ、そんな気分になっただけですよ」
気にしない気にしない、と手を振る。

それから有希のお墓の前で立ち話。
いつもの、と言えるくらい日常的な光景になっている。
「うーん……前から思ってたけど……」
突然神妙な顔をして何を言うかと思えば、
「最近有希に似てきたわね、遙ちゃん」
「……気のせいですよ、きっと」
「『その場の気分で行動する』っていう行動力は、昔はなかったわよねー」
実の娘なのに、褒め言葉だかどうだか微妙なところだ。
「あはは……少しは前向きになれたんでしょうかね……」
「……ええ」

一度言葉を切る三里さん。
私達の間を風が通り抜ける。

「――本当に、よく頑張ったわね」

『母』の顔で言う。



この人は、私にとっても、母のような存在だった。
苦しい時に、大きな支えの一つになってくれた人。
きっと、私のことが一番心配だったのだろう。
最も苦しいはずの自分のことさえ後回しにして。
今も変わらず気にかけてくれている。
『大丈夫?』と。



「……だって前を向かないと……」

でも私は――

「……有希に笑われちゃいますから」

――もう大丈夫です。



今、初めて三里さんに『有希』と言うことができた。
初めて笑顔で『有希』の名前を出すことができた。
これが、私の答えだった。

三里さんがどう受け止めたのかは分からない。
私の勝手な思い違いだったのかもしれない。
でも、

「そう、良かったわ」

にっこりと笑う三里さんは満足そうに見えた。





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11月26日の出来事と言えば、当然『事件当日』です。
……作中ではすぐ飛ばされてしまうので、拾い上げる題材があまりなかったのですが(汗)
とりあえず、『事件の傷跡』についてスポットを当ててみました。

――もう大丈夫です。
と、完全に立ち直り、一人で立つ遙さんを書きたかったので。

ちなみに時間軸についてですが、ご想像にお任せします。
というか、自分自身が考えてなかったりしまs(撲殺
少なくとも1年やそこらではないでしょうね。

それから……昨日の内に投稿しておくべきでしたね……orz
27日の分をこれから書くのか……もう挫折しそうな件(何)
とりあえず頑張ってみます。

(製作時間3時間)


その2


『11月27日』

「……雨、ですか」
今日の第一声はこれだった。

TVをつけて予報を見る。
……今日は一日中、憂鬱な気分となりそうだ。
こんな気分の時は外へ出たくなくなる。
本当は外へ出る予定があったのだが……。
どうしようかとしばらく悩んだ結果、

「……たまには引き篭もるのも悪くないですね」

彼女のところへは明日行けばいい――伊勢崎多奈はそう考えた。



今日は彼女――遠野有希の墓へ行くつもりだった。
本当は昨日が命日なのだが、多奈は当日に行くのを避けた。
……有希にとって多奈は『他人』だったから。

彼女と過ごしたのはたったの二日間。
でも、自分の人生で最も長い二日間だった。
そして、自分の人生が大きく変化した二日間だったと断言できる。
月並みだが、「彼女が私の人生を変えた」のだ。

「でも、貴女は覚えていないのでしょうね……」

それが彼女との『ルール』。
彼女と私の絆、未来を賭けたゲームに、私は勝ち、負けたのだ。
『もし、結果が変わっていたら』などと思ったことはない。
それは許されないのだ。遠野有希を冒涜することになるから。
だから、私は彼女の記憶を全力で消した。

「……後悔は、してません……」

だから、きっと関係ないはずだ。
あの少女のことは、きっと……。



葬儀の行われていた遠野家。
気がついたらその前に立っていた。
有希が亡くなったことを兄から聞いたところまでは覚えている。
だが、その後は全く記憶にない。
『力』を使わないようにしよう、と決意したのは無駄だったようだ。

現実を目の当たりにして、少し冷静になったのかもしれない。
傘を差していないことに気づいたので、仕方なく『力』を使って雨を避ける。
……本当に冷静だったら、こんな愚かな行動は取らなかっただろう。
幸いにも誰にも気づかれることはなかったが。

その時、ふと出てきた少女に目が留まった。
周りの学生より一回り小さい少女で、着ている物も違ったから妙に目立つ。
しかし、それ以上に少女を取り巻く雰囲気が周囲と違ったのだ。
……それは、『悲壮感』とでも呼ぶべきもの。
明らかに無理をして歩いている、怪我人のような痛々しさだった。

だから目の前を通り過ぎる少女に、思わず手を差し伸べてしまった。
それは何の意味もない行動、そのはずだった。
――少女に触れた瞬間、左手が突然輝くまでは。



その後、私は少女に関わらなかった。
『能力』が開花したのかを確かめることもなく、監視をすることもなかった。
もちろん、このことは一切誰にも言ってない。

何故こんなことをしたのかは分からない。
有希に対する行動の真逆を行ったことに、深い意味などないはずだ。

……分かっていても、私は絶対にそれを認めない。


もし、有希がこれを見ていたらどう思っただろうか。
そして、私の行動をどう評価したのだろうか。
――有希が助かる道を閉ざした私に何を言ったのだろうか。

「有希、貴女は私を――」

返るはずのない問い。
今まで何度繰り返してきたことか。

自分の妄想の中の有希が言う。
「いつまでくよくよしてるの」と笑い飛ばす。
それを見た冷静な自分が言う。
「それは都合の良すぎる幻だ」と蔑む。

たとえ有希に恨まれていても構わない。
それが彼女の意思なら受け止めよう。
だから――

「応えてください、有希――」

無常にも、答えは返らない。
それが私への罰なのかもしれない。


笑うのだろうか。泣くのだろうか。恨むのだろうか。

――こんな私を、許してくれるのだろうか。



TVがもう一度天気予報を流している。
……今日は一日中、憂鬱な気分となりそうだ。





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というわけで短編第二弾『11月27日』をお送りしました。
今日の出来事と言えば、有希さんのお葬式。
登場人物は多く、それぞれに一人称が作られています。
しかし、原作で多奈さん視点が語られていないので、妄想してみました。
だってそうしないと出番が……(何)
ついでに、『現在の多奈さん』も描こうかと思ったのですが……
どう見ても強引すぎる展開です。本当にありがとうございましたorz

この話は賛否両論だろうと思います。
他の人が、遙さんまで立ち直る中、一人だけ囚われたままの多奈さん。
自分の中のイメージをそのまま出したらこうなってしまいました。
「ここまでネガティヴな多奈さんを見たくなかった……」という方、ごめんなさい。
正直自分も軽く鬱になってますorz

補足ですが、短編同士の時間軸は同じ設定です。
つまり、今回は「その1」の次の日の話ですね。
一応それぞれが独立した話にしてるつもりですが、今後関わってくることもあるでしょう。
ネガティヴ多奈さんもどこかで救済する、かも?
どうなるかはお楽しみということで……でも期待しないように(何)
だって、明日の話すら考えてませんから(爆)

ではまた。

(製作時間4時間)←実は覚えてない罠orz 多分これくらいだと思う……どうでもいいか(何)
 

  


その3

  


『11月28日』

……どうしよう。
目の前のお墓を眺めながら考える。
つい先日掃除したはずのお墓は、また汚れがついている。
どうやら昨日の雨の影響らしい。
ついでに花なども雨のせいで散らかっている。
最も人が集まった時期と重なったため、『惨状』と呼ぶにふさわしい有様。

「うーん……掃除道具持って来てないんだけど……」

取りに戻るか、明日にするか。
その二択で先程から悩んでいる、楠木遙であった。

雨のおかげで今日来る人も多いだろうから、早めに掃除しておきたい。
しかし、今から楠木家まで取りに行き、戻ってきて大掃除をするのは時間的に苦しい。

「……仕方ない、今日は散らかったものだけでも――」
「――おや、遙ちゃんじゃないか」
行動に移そうとした時に声がかかる。
若い男の声で『遙ちゃん』と言う人物は一人しかいない。
「あ、一郎くんこんにちは」
振り向きながら挨拶する。
「こんにちは遙ちゃん……これはすごい状況だね……」
隣まで歩いてきた一郎くんも、お墓の惨状に引いてる様子。
「うん、一昨日掃除したんだけどね……」
「それで、これから掃除を?」
「そのつもり……そうだ、一郎くんも手伝ってよ」
我ながら名案だと思った。……誰でも思いつく、というツッコミは受け付けてません。
で、一郎くんの返事は……

「――条件付きで手を打とうじゃないか」

ニヤリ、という表情で条件を提示したのだった。



――30分後。

「つかれたー……」
「はい、お疲れさまー」
散らかったものを片付けただけなのだが、意外と重労働だった。
お墓の管理人さんからもらったポリ袋が一杯になっても少し残るほど。
その袋を、離れたゴミ捨て場まで持っていった一郎くんに感謝しなくちゃね。
「さて、私はそろそろ帰りましょうか」
「えぇ!?そりゃないよ遙ちゃん……」
うわぁ……本気で泣きそうだよこの人……。
「冗談よ……場所は『こなゆき』でいいのね?」
「もちろん!」
子犬のような反応を見せる一郎くん。……精神的に全く成長してない気がする。
そんなわけで、『一緒にお茶』という条件を実行するべく、歩き始めたのだった。



「いらっしゃいませー」
駅前の甘味屋兼喫茶店『こなゆき』は、相変わらず学生達のたまり場となっていた。
店員に案内され、窓の広い隅の座席に座る。
「……ここは変わらないなー……」
窓の外を眺めながらしみじみと言う一郎くん。
「一郎くんはあんまり来てないんだ?」
「甘いものがそこまで好き、ってわけじゃないからね」
「……何か含みのある言い方だけど……」
「いや、そんなことは……」
あわてて首を振る一郎くん。
「ふーん……あ、すいませーん」
ちょうど通りがかった店員さんを呼び止める。
「この『秋の味覚満載パフェ』一つくださーい」
「…………」
「一郎くんは?」
「……ホットコーヒーを一つ……」
かしこまりましたー、と離れていく店員さん。
「どうかしたの?」
「相変わらずだなぁと思ってさ」
「甘いものばっかりで悪うございましたねー」
どうせ、私は甘味女王ですよ……。
「そうじゃなくて、ここに初めて来た時も同じもの頼んでたよね」
少し、遠くを見るような表情で言う。
「…………」

初めて来た時。それはあの事件の――

「……そうだったね、『一浪』の一郎くん」
「!?……それをまだ言うか……」
テーブルに突っ伏す一郎くん。
「思い出させたのは自分でしょ。そもそも一浪してたほうが悪いんじゃ」
「しくしく……」
「ひとに『探偵さん』と言わせるのもどうかと思うし」
完全に沈黙。ちょっと言い過ぎた気もしたので、
「ま、過去のことは気にしないけどね」
とフォロー(?)をしてみる。

「……本当に?」
突然の変化。
びっくりして一郎君を見る。
一郎くんは真面目な表情でこっちを見ている。
真正面から、視線が合う――
「……本当に?」
さっきと同じ、一言の問い。
でも、何を言いたいのかは伝わってくる。

――ホントウニ、カコヲ、キニシテナイノカ?――



……一昨日と同じだ。
そして、私は決めたんだ。
だから、


「……私は、もう大丈夫」


はっきりと、言った。
もう、私は大丈夫だと。
一人で歩けると。


「…………そっか」
長い沈黙の後、一郎くんは笑顔で言った。
それだけで場の雰囲気が軽くなる。
やっぱり一郎くんはすごい人だと思った。
「ゴメン。ここで話す話題じゃなかったね」
「ううん、いいの。それより、今まで心配かけて――」
ごめんなさい、と続けようとする私を制する一郎くん。
「ストップ。それは言わない約束だ」
片目を閉じながら、冗談めかして言う。
「俺が勝手に心配してただけ。それに、今の『確認』も俺自身のために聞いたんだ」
「どういうこと?」
「遙ちゃんの心配をして聞いたわけじゃないんだ、今のは」
おまたせしましたー、と注文の品が届けられた。
そのコーヒーに口をつけながら続ける。
「本当は今日会った瞬間に分かってたよ、もう大丈夫だって事くらい。
でも、遙ちゃんの言葉で初めて、俺は心配するのをやめることができる。
表現しづらいけど……『儀式』みたいなものかな?俺にとっては、重要なことだったんだ」
『儀式』……。
人は何かをするとき、または終わらせるときに『きっかけ』が必要なことが多い。
きっと、そういうことだろう。
「だから、遙ちゃんは謝る必要なんてないのさ」
「三里さんも、そうだったのかな……」
『?』という表情の一郎君に、一昨日のことを説明する。
「うん、そうかもしれないな」
一口、コーヒーを飲む一郎くん。
「……もしかしたら、他にも居るんじゃないかな?
もし同じことがあったときは、同じように答えてあげて欲しい」
「……うん、分かった」

それなら、私が言うことは一つだけ。


「今まで心配してくれて、ありがとう」


一郎くんは、ちょっとびっくりした表情をしていた。
でもすぐに笑顔に戻り、


「どういたしまして」


一郎くんらしい返事だと思った。





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・前回のあとがき(下段)より
>>一応それぞれが独立した話にしてるつもりですが、
  _, ,_
 ( ‘д‘) <舌の根も乾かないうちに続編か!
   ⊂彡☆)))Д´) <生まれてきてゴメンナサイ

というわけで、今後もこの路線で行くことになりそうです……。
もうこれ、長編じゃんorz

というわけで短編第3弾『11月28日』でした。
この日の出来事といえば、捜査開始→ヘボ探偵に出会うって辺りですね(何)
ええ、ものの見事なツーショットです。
だが ラ ヴ ラ ヴ は 認 め な い (死)
ところでファンの皆様のうち、何人が「遙さん×一浪くん」を脳内完成させてるんですかね?
ちなみに自分は「結局友達止まり」派です(きっぱり)

あと、今回の話で悔いが残ってるのは「ウエイトレス沙雪さん」を出演できなかったこと(何)
タイミングを外してしまった……チキショウ。
全国数十人の沙雪ファンの皆様すいませんでしたorz

ちなみに、勘の良い方ならもう気づかれているかもしれませんが、
出演メンバーは基本的に「鎮魂祭」の「辺境紳士(今野隼史)様」の絵を参考にしてます。
……誰も気づかないって?ですよねーwww(殴)
今見ても、あのスタッフロールFlashは鳥肌が立ちます。これを読んだ方は今すぐ見てきなさい(何)

というわけで続き物っぽくなってしまったので、上手くまとめられるよう頑張ります。
……誰も読んでなかったら大爆笑(自滅)

ではまた。

(製作時間:きっと4時間前後)

  


その4


『11月29日』

「――よし、行くぞ」
玄関で靴を履き終えた私は、気合を入れなおした。
これから厳しい任務を実行しなければならない。
「……どうしたの?おねーちゃん……」
そんな姉の奇怪な行動を目撃してしまった、楠木千夏である。
「戦争にでも行く気?」
戦闘態勢を整えたように見えたらしい。
まぁ、そんな感じの気合の入れ方だったけど。
「違うわよ。お墓の掃除をするから気合入れたの」
昨日見た様子だと、先日の比じゃない労力が必要だと感じた。
生半可な覚悟では任務を完遂できないだろう。
「ま……まぁ、頑張ってね……」
「おうっ!」
完全に引いてる我が妹。
それを尻目に行軍を開始したのだった。

――その直後に、
「ゆうねぇに似てきたな……」
という、あまり嬉しくない評価をもらったのは知る由もない。



幸いなことに、何の妨害もなく目的地に到着。
ほどなく任務を……うん、このノリはもうやめとこう。
というわけで、掃除を開始する――つもりだった。
「……え?」
お墓に近づいた私の目に、予想外の光景が飛び込んだ。
既に綺麗に掃除されていたのだ。

……いや、それは大したことじゃない。
そんな事を忘れるほどの衝撃。
お墓の前にいた人物。
それは――


「……お久しぶりです、楠木遙さん」


高城とうな、だった。



「――それは掃除道具ですか?」
「う、うん、昨日見たときに汚れてたからね」
我に返って、あわてて答える。

「そうですか、一足遅かったですね」
「そうだね、無駄になっちゃったかな。あはは……」
……もう終わったことだ、変に意識することは無い――

「――その反応が普通だと思いますよ?」
「え……」
見透かしたように言うとうな。

「私は貴女の親友の命を奪った敵。意識しない方が異常です」
淡々と喋る彼女の言葉に、私も冷静になってきた。
「……確かに、そうだね。私には無理だよ」
私は彼女を敵として意識している。しているけど――

「――でも、あの時ほど憎んではいない」

やはり、私の中でも過去のことなのだ。
当時は犯人を殺してしまおうかとも思った。
逆に、自分が死んでしまおうかというくらい落ち込んだ。

でも全部、過去のこと。
私はもう、大丈夫なのだ。

「……意外に薄情なんですね」
あくまで淡々と、とうなは喋る。
「貴女に言われる筋合いは無いわね」
「まぁ、その通りですね。貴女達の絆について関与する気はありません」
……鼻につく物言い。どうやら根本的に相性が悪いらしい。
「それで、今日は何をしに来たの?」
「面白いことを言いますね、見て分かりませんか?」
訂正。相性は最悪だ。断言する。
「昨日来たときに気になったので、掃除をしたところです」
「……え?」

改めて、有希のお墓を見る。
先日、私が掃除をした直後のように輝いている。昨日の汚れが嘘のようだ。
高城とうなが、これを……?

「……意外でしたか?」
「そりゃ……ね」
「心外です」
「それは失礼」
お互いに感情を込めない、冷静なやり取り。
でも、それと裏腹に私の頭の中は混乱し続けている。
「……それは贖罪の意味を込めてるのかな?」
可能性が高いものを挙げてみる。
しかし、彼女は予想外の反応をする。


「いえ、そもそも贖罪をするつもりは全くありません」

淡々と、言い放つ。


「贖罪をする……意思が無い……?」
「ええ。私が謝るのは、遠野有希という存在を奪ってしまったことに対する、遺族の方々へ。
そして、私の我が侭で迷惑を掛けてしまった皆さんに対して、これだけです。
貴女と遠野有希さんに対して謝罪する気はありません」

絶句。何を、言い出すのか。
自分が殺しておいて、『謝りません』?

「……ふざけないで!」

――と、叫びそうになった。思わず、手が出そうになった。
でも、理性を総動員してなんとか抑える。
それよりも先に、確認すべきだ。


「どういうことか、説明してもらえる?」

私は、彼女がつまらない意地を張り続ける子供ではないことを知っている。
だから、この言葉には真意が隠されているはずだ。
それをまず、確認したかった。

「…………」
とうなは、軽く目を見開いてこっちを見ている。
まるで、予想外の反応だった、とでも言うように。
「……意外だった?」
「それは……そうですね」
「心外だなぁ」
「それは失礼しました」
先程のやり取りを、立場を逆転させてそっくり返す。
「私も、貴女も、成長してるのよ。いつまでも子供じゃない」
「……そう、ですね」
観念したように、一つ溜め息をつく。
そして、語り始めた――

「私は、自分の過ちを後悔しました。そして、謝罪したかった。
私の両親に、彼女の家族に、友人に、貴女に、そして彼女自身に。
ですが、謝れば全て元に戻るわけではありません。それでは贖罪にはならない。
だから、考えました。今後、私はどうすれば良いのかを、ずっと考えました。
その結論が……『謝らないこと』です」
「……なぜ?」
「もし私が謝れば……『自分が間違ったことをした』と認めれば……。
彼女は、『遠野有希』は『間違いで殺されてしまった』事になる。
つまり、彼女の死は『無意味』だったことになってしまう……そう思ったんです。
それは彼女を冒涜することになる。だから、彼女の死に意味があった事にしなければならない。
だから、私は、『私の正義のために彼女の命を奪った』事にしなければならない――」
「正義……」
「そして、私はその正義を一生貫かなければならない。間違いを認めてはならない。
……それが、私の贖罪です」


有希に贖罪しないことが贖罪――世間では絶対に理解されない話だろう。
ただでさえ、『犯罪者』に対する世間の目は冷たい。
まして、自分自身でさえ、間違ったことだと気づいている。
その孤独な戦いを続けるのは、想像を絶する苦しみだろう。


でも、それを本当に成し遂げるなら、私は――


「軽蔑しますか?」

「……どうでもいい話ね」
私はそう答えた。
「貴女が有希に対してどう考えようが、それに関与する気はないもの」
「……そうですか」
彼女は、最後まで、淡々と喋り続けていた。



「――ところで、なんで私にも謝罪しないの?」
彼女が立ち去ろうとした時、気になったので聞いてみた。

まぁ、想像はついているけれど。
彼女の『正義』の為には、私は『敵』でなければならないからだ。
……しかし、彼女はそう言わなかった。

「それは……」
一呼吸。そして――



「貴女が嫌いですから」



やはり、私と彼女の相性は最悪だ。





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短編第4弾『11月29日』をお送りしました。
この日は本格的に調査し始める日ですね。
登場キャラが増え、遙さんのブラックリストに続々と記入されていきます(何)
で、例の辺境紳士様作品は『佐久間&とうな』だったので、彼らを登場させる予定でした。
……し・か・し。
どうしても書きたかったんです……遙さんvsとうな第二ラウンドを(何)
二人とも大人になった時、どういう会話するのかが書きたかったんです。
で、書き始めたら……
  _, ,_
 ( ‘д‘) <長ぇよグズ野郎が!
   ⊂彡☆)))Д´) <存在しててゴメンナサイ

うん、なんかスゴイことになった(他人事)
これぞ厨二病の真骨頂『妄想超暴走』ですね。書き始めたら止まらない、ってアレです。
この本文製作時間、2時間ちょっとだったりする辺りがおかしい(爆)
しかも、これ書いてるの『その3』完成直後だし(休憩?なにそれ美味しいの?)
……ちょっと「前日の内に構想しておこう」と思ったら、これですよ。
この集中力をなぜ日常に活かせないのかと、小一時間(ry

で、今回の謝罪はもちろん佐久間麻之ファンの方々に対してです。
……まぁ、ファンが居るのか怪しいところですけd(殴)
もう彼が入る余地はありませんでしたorz
でもヤローを書く気は始めからなかtt(撲殺)
……気が向いたら後で出るかもしれません。

回を重ねるごとに長くなっていく短編(&地味にあとがきも)
まだ半分も行ってないのに、この後どうなってしまうのか?
……期待しないでください。筆者の容量オーバーしますから(何)
訂正。既にオーバーしてます(死)

ではまた。

(製作時間:あとがき合わせて2時間半ほど)

  


その5

  


『11月30日』

「いってきまーす」
私の耳にお姉ちゃんの声が届く。
今日もゆうねぇのところへ行くのだろう。
毎年、この時期になると毎日行っている。
あの事件の日数と同じなのは……偶然ではないと思う。

……あの事件。
それは、私達に……特に、お姉ちゃんの心に深い傷を負わせた。
それは、お姉ちゃんの命をも、奪いかねない出来事だった。
もし、お姉ちゃんまで――そうなったら、私もどうなっていたか分からない。
結果的にそれは回避されたのだが……今思い出すだけで震えがくる。

「……ふぅ」
結局、私の心にも深い傷が残っているということだろう。
どんなに時間が過ぎ去っても、こうして思い出すだけで恐怖が蘇るのだから。

少し薄情な話だが、ゆうねぇの事はもう平気だったりする。
思いっきり泣いた時に、吹っ切ることができたから。
でも……未だに、お姉ちゃんだけが心配だ。
ちょっと表情に陰りが見えると、それだけで心臓が凍る気がする。
いつまで私はお姉ちゃんに依存してるのか――

「そういえば、最近おかしいな……」

夕飯のときもあまり笑わなかった。
バラエティ番組を見ながら、時折考え込んでいたりする。
無理してる、というわけではなさそうだが……。
「悩みでもあるのかな……?」
あるとすれば、ごく最近。
直感的に、ゆうねぇのところへ行ったのが原因だと思った。

思ったときはすぐ行動。
ゆうねぇを思い出しながら、出かける準備を済ませる。
靴を履いているとき、お母さんに買い物を頼まれたのを頭の隅に留める。
「……よしっ!」
気合を入れて、お姉ちゃんを『尾行』するべく出発したのだった。



「ぜーぜー……早すぎるよおねーちゃん……」
出発は5分も遅れてなかったはずが、全力でも追いつかなかったのは何故だろう。
結局、目的地までお姉ちゃんの姿を見ることはなかった。
「っと、いけない。目立たないようにしないと……」
あわてて周囲を警戒する。
あくまでも『尾行』だ。気づかれたら任務失敗である。
任務を完遂するぞ、と小さく気合を入れる。
「……昨日のおねーちゃんみたい……」
これは気にしたら負けなのだろう。



「……誰も、いない?」
周囲を警戒しながら、ゆうねぇの墓が見えるところまで来たのだが、人影が見えない。
「あれぇ……?ここに来たんじゃなかったのかなー?」
首を捻りながら墓の前まで進む。
やはり、誰かが隠れている様子も無い。
「……当たり前か」
こんなスパイごっこをやる人間など自分くらいしか――


「――楠木?何してるんだ?」
「ふぇっ!?」

あまりの不意打ちに、情けない声が漏れる。
振り返ると、そこに居たのは……
「……なんだ、妹の方か」
「か、神崎さん……」
お姉ちゃんとゆうねぇの元クラスメート、神崎智也さんだった。



「で、楠木妹は何をしてたんだ?」
恥ずかしいところを見られた。
『あの事件』以来、久しぶりの再会だったのに……。
「……気にしないで下さい」
「………………分かった」
すごく微妙な表情をしながらも、頷いてくれた辺りは流石だ。
この人は相変わらず優しいな、と思った。
「ただ、お姉ちゃんを尾行してただけです」
観念して白状する。
「尾行?」
当然、事情が分かるはずもなく。
最近の姉がおかしいことを説明する。
「――それで、姉が何をしてるのか知りたかったのですが……」
「ここには居なかった、と」
なるほど、という様子で頷く神崎さん。
「神崎さんは、お姉ちゃんがどこに居るか……?」
ダメ元で聞いてみる。
「最近は、全然会う機会がなかった」
「そうですか……」
予想通りだが、肩を落とす。
これは諦めるしかないか……。

「……なぁ、楠木妹」
突然呼ばれたので、返事を……。
……そういえば。

「…………」
「……楠木?」
「そう呼ばないで下さい」
「……あ」
どうやら思い出したようだ。
「えーと……千夏?」
「はい、何ですかー?」
笑顔の私の前で溜め息をつく神崎さん。
「なんか……あいつらに似てるな、やっぱり」
「あの人『達』の妹ですから」
語尾に音符がつきそうな感じ。何故か、すごく楽しい。
「そんなにお姉ちゃん達にイジメられてたんですか?」
「……いや……そんなことは……」
と言いつつ黙り込む神崎さん。
これは、相当ゆうねぇにいじられてたな……。
惚れた弱みって奴だろうか?

「話が逸れちゃいましたね、なんでしたっけ?」
「あぁ……」
コホン、と咳払いをして仕切りなおす。
「……千夏はなんで楠木を心配するんだ?」
「それは……」
少し、沈黙。
「……お姉ちゃんが、心配だからです……」
的外れな回答。
でも、神崎さんには分かったようだ。
「……まだ、心配なのか」
「はい……」

あの時のお姉ちゃんは、本当に酷かった。
支えがなければ……いや、支えても立ってられるのが不思議なくらいだった。
どれだけ時が経とうとも、あの光景だけは忘れられない。

「――もう、いいんじゃないのか?」
突然、神崎さんが口を開く。
「……え?」
「千夏は、あの時楠木を助けようと頑張った。
その結果、今の楠木は普通に生活できている。
まだ不満があるのか?」
「不満なんて……心配なだけで……」
「普通に生活してれば、ちょっとくらい悩む事だってあるだろう。
楠木に限らず、俺も、千夏も、みんな悩む。それが普通だろ。
それとも、今の楠木は、そんなに弱い奴か?」


……分かってる。


「――そんなの、分かってます!」

もう、支え無しに一人で歩いていることくらい。
もう、私の力なんか必要ないことくらい。


「でも、怖いんです!もう失いたくないんです!」

でも、あの光景が忘れられない。
二度とあんな恐怖を味わいたくない。
――私が、傷つきたくない。


「『私のために』心配して何が悪いんですか!?」


……そう、これは自分勝手な気持ち。
それを、『お姉ちゃんのため』という嘘で塗り固めていただけ。
剥がしてしまえば、残るのは、臆病な私の心。
誰よりも、『あの時』に囚われているのは、私だったのだ。



「……良いんじゃないか?それで」
普段より、ずっと優しい声。
「その言葉を直接伝えてやればいい。心配をかけさせてる元凶に」
「……え?」
「楠木自身が『大丈夫』と言えば、心配しなくて済むんじゃないか?
本人の言葉で初めて、心配するのをやめることができる。
なんというか……『儀式』みたいなものだとさ。
そういうのが、大事なこともあるだろう」
また受け売りだけどな、と苦笑する神崎さん。

考えもしなかった。この気持ちを直接ぶつけるなんて。
永遠に迷い込んでいた迷宮に、新しい道が開けたような気分。
私の中の何かが、解放されたような気がした。

だから、笑った。

「……千夏?」
呆然とする神崎さん。
「あはは……いえ、大丈夫……っくく……」
どこに溜め込んでいたのか、というくらい、思いっきり笑い続けた。
知らない人が見れば私の頭を疑うだろうが、そんなのどうでも良かった。
日が暮れそうになるまで、ずっと、笑っていた。



「……恥ずかしいところばかり見せちゃってますね」
何とか落ち着いたので、改めてお礼を言う。
「本当にありがとうございました。気分がすっきりしました」
「いや、大した事はしてない」
「時間も取らせちゃいましたし……って、もうこんな時間!?」
まずい。買い物頼まれてたんだっけ。
名残惜しいが、仕方ない。
ここで神崎さんと別れることにした。


「……ところで、神崎さんは、どうですか?」
別れ際に、尋ねてみる。
曖昧な質問だが、意味は通じているだろう。
「……俺自身は、もう吹っ切ったよ」
ゆうねぇの墓を見ながら微笑む。
「あいつが、立ち止まることを許さないだろうから、さ」
「……強いんですね」
「そんなことはないさ。本当に吹っ切ったのならここへは来ないだろうし」
自嘲するように笑う。
それを見た私は、

「そんなのは神崎さんじゃありません」

……つい言ってしまった。
この言葉は、受け取り方次第で意味が変わってくる。
でも、私があわてて弁解しようとするより早く、

「過大評価だな、それは……でも、ありがとう」

と笑ってくれた。



この人はやっぱり優しいな、と思った。





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短編(?)第5弾『11月30日』をお送りしました。
今日の出来事、と言ってもたいした事はありませんね。
みんなのうなうなが初登場したくらいですか。
……ファンの皆様。彼女はきちんと後で出しますよ。どこかの生徒会♂と違って(撲殺)
なので、『雨晴』の方から引っ張ってきました。
ちなちーも立派な主役ですよ?忘れないであげてくださいね。
てなわけで……ついにやってきました、この瞬間。

そう、俺のジャスティス『千夏×智也』のお時間です(何)

書きたかったことリストPart2:千夏と智也の会話、というわけです。
ついでに紳士様絵も智也だったし。
これは妄想爆発でしょう。なんせ、ジャスティスですから。

だがっ…!ここまでっ…!展開無し…生殺しっ…!(ざわっ… ざわっ…)

あまりにもひどい文章。何とかここまで纏め上げました……まとまってないですがorz
でも、この後の展開はさらに酷いことになりそうだったので、
それは自分の脳内だけに留めるべき、との啓示を賜りました(死)
啓示なので許してくださいorz

この話を書き始めた理由は、本気で↑の通りですw
その他、会話内容は全部後付け。
呼び方とか、『雨晴』引っ張り出してきて思い出しました。
こうやってもう一度プレイし直すのも、やっぱり○周年の醍醐味ですよね。
これを読んでいる方がもしいらっしゃいましたら……言われるまでもなくプレイしてるかw

そうそう、大体ですが『○日にどんな感じの話を書くか』の予定を立ててみました。
そんなわけで、次回予告(偽)します。
ヒントは……『12月1日』の出来事……そう、裸Yシャt(強制終了)

ではまた。

※追伸:『千夏×智也』の同志求む(何)

(製作時間:4時間半くらい)

  


その6

  


『12月1日』

こん、こん、こん。

ノックを3回。
意味しているのは
『真剣な話がしたいからその覚悟をしてください』という感情。

――これを使うのは、あの時以来だなぁ……

嫌でもあの時のことを思い出す。
私が、全てを賭けて、姉を救おうとした時のことを。
――姉を、救えなかったことを。

「……何弱気になってるの、私」

我に返って、気合を入れ直す。
今はあの時と状況が全く違うじゃないか。
少なくとも、緊迫した状況ではない。
むしろ、お姉ちゃんが扉を開けてからが本番なのだ。
そう、扉を開けてから……

「…………」

……開かない。
まさかの事態に心拍数が上昇する。

「おねえ……ちゃん……?」

震える手でドアノブを回す。
鍵は……かかっていない。
恐る恐る中を覗いた私の見た光景は――

「んぁー……?ちなつだったのー……?」

目を擦りながら起き上がる姉の姿だった。

……反射的に手近なぬいぐるみを投げつけたことは、許されるべきだと思う。



「はい、どーぞ」
「うん、ありがと」
何か飲みながら話そう、と居間に来た私達。
私が作ったココアを、お姉ちゃんは蕩けるような表情で飲んでいる。
つくづく、姉の甘いものに対する感情は異常だと思う。
「ぷはー……美味しかったー」
「って、もう飲み終わったの!?」
こっちは一口目だというのに……。

「うん、目が覚めた。……それで、話って何?」
一段落着いたので、真面目に聞く体勢になるお姉ちゃん。
出鼻は挫かれたが、私も真面目モードに切り替える。
「……最近、何かあった?」
突然の問いに、拍子抜けした顔をしている。
「特に何も……突然どうしたの?」
隠すつもりなのか、本当に分からないのか。
とりあえず別方向からアプローチをかけてみる。
「じゃあ……最近悩み事とかない?」
「そんなの無いわよ。千夏こそ何かあったの?」
逆に心配してくるお姉ちゃん。

……いつもそう。私がお姉ちゃんに心配されている。
そして私は、それに甘えている。あの時それを痛感した。

――このままじゃ、ダメだ。

「……ゆうねぇのことで、何かあったんだよね?」

断定する。
「別に――」
否定しかけたお姉ちゃんの言葉を、目で封じる。
そのまま目線が絡み合う。お互いに目を逸らさない。
……しばしの静寂。

先に根負けしたのはお姉ちゃんだった。
「ふぅ……妹に心配されるようじゃ、姉失格だよね」
苦笑しながら言う。
「確かに、有希に関係する出来事はあったよ」
「やっぱり……」
「んー……言っとくけど、有希は悩み事とそれほど関係ないよ」
……これは予想外だった。
お姉ちゃんを悩ませるものがゆうねぇ以外だったとは。
「じゃあ……?」
「……ちょっと長くなるのは、覚悟してね」
どうせ引き下がらないんでしょ、と笑うお姉ちゃん。
この辺りは、流石は姉妹、というべきだろう。
……決して私が単純なわけじゃない。はずだ。



――要約すると、あの事件の思い出話をしていたらしい。
三里さんや一郎さん、そして……『彼女』と。
「――それで、私もちょっと考えてたんだ。
自分の行動がどれだけの人に迷惑を掛けたのか、とかいろいろね」
「…………」
「というわけ。有希のことを直接悩んでたわけじゃないの、わかった?」
「…………」
「……おーい、聞いてるかー?」
私の顔の前で手を振るお姉ちゃん。

「……皆、一緒なんだね」
私だけではなかったことを、改めて認識した。
――直接伝えてやればいい。昨日の神崎さんの言葉を思い出す。

「え?何のこと?」
疑問符を浮かべる姉に、ぶつけてやる決心を固める。
一度だけ大きく深呼吸。そして。



「大丈夫ならさっさと大丈夫って言いなさいよ!!」

どこからともなく取り出したハリセンは、爽快な音を立てていた。

「ち……千夏……?」
軽く涙目になる姉の前で仁王立ちする。
今まで溜め込んでいたものが、爆発した。

「お姉ちゃんはどこまでも勝手すぎるのよ!
あの事件の時だって、勝手に落ち込んで勝手に動き回ってさらに落ち込んでいきなり元気になって!
その後だって、大丈夫っぽく振る舞ってたのに、何かあった時に抜け殻みたいにぼーっとして!
お姉ちゃんあの時言ったよね!?『心配掛けてごめん』って!
全然変わってないじゃない!私はいつまでお姉ちゃんを心配すればいいわけ!?
いつまでお姉ちゃんの行動に振り回されなくちゃいけないわけ!?
大丈夫なら大丈夫と言う、助けて欲しいならそう言う、そんな人だったら私もこんなに心配しなかったわよ!
でもお姉ちゃん何も言わないじゃない!もういい加減にしてよね!!」

――後で思い出してみても、よく息が続いたものだと我ながら感心する。
私の感情を、包み隠さず真っ直ぐにぶつけた言葉。
ぶつけられたお姉ちゃんは、目を見開いたまま微動だにしない。
「……聞いてるの?」
姉の顔の前で手を振る。……うん、無反応。
完全にオーバーヒートしてるようだ。
一つ溜め息をつく。
「分かりやすく簡単に言うよ?」
姉の頭をしっかり固定して、目線を無理やり合わせる。
『私』を認識したのを確認してから、はっきりと言う。


「貴女は、もう、『大丈夫』ですか?」


しばらく静寂が訪れる。
聞こえるのは時計の音のみ。それが無ければ、夢かと錯覚するくらい静かだった。
私の心も、静かだった。

姉は、きちんと言葉の意味を理解したようだ。
私の手をどかし、はっきり宣言した。


「うん、もう『大丈夫』だよ」


姉は笑顔で、それでも力強い意思のこもった目で、はっきり宣言した。

――なんというか……『儀式』みたいなものだとさ。

今ならそれがはっきり分かる。
これを経て、私はやっと、『自由』になれたのだ。
過去の呪縛から、解き放たれたのだ。



「よろしい。それじゃ、私寝るねー」
ひらひらと手を振りながら、居間を後にする。
何か言いたそうな姉を完全に無視して、自分の部屋に滑り込む。

扉を閉めて、一息。
そこでやっと、こらえていた涙を流すことを許可した。

「……っ、ひっく……」

この涙は安堵の涙。
この涙は歓喜の涙。
私が、『自由』になれたことへの、祝福の涙。

きっと、お姉ちゃんにも聞こえてたに違いない。
でも部屋の前を素通りしてくれたことに、感謝しなくちゃいけないだろう。
本当に私は良い姉を持ったものだ。

私が、一生誇りにできる、自慢の姉である。

……『結局、姉離れできてない』とは言わないで欲しい。





「……はぁ」
流石に、びっくりした。
「まさか、あんなに追い詰めてたとはね。……本当に姉失格ね……」
千夏が出て行った方向を見ながら、もう一度溜め息をつく。
一郎くんの言う通りだ。この分だと、まだまだたくさん居そうな気がする。
そんな人に会うたびに、こんな目にあうのかと思ったら落ち込みもする。
まぁ……自業自得、というやつだが。


――お姉ちゃん何も言わないじゃない
さっき言われた言葉を思い出す。
「何も言わない、か……」
確かに、私は一人で抱えすぎたのかもしれない。

私をずっと心配してくれていた妹。
はっきりと欠点を指摘してくれる妹。
姉の威厳としてはどうかと思うが、良い妹を持ったものだ。

私が、一生誇りにできる、自慢の妹である。



そういえば有希にも何度か言われた気がする、今更だが思い出した。
「……やっぱり、有希は最高の親友ね」
直接は口が裂けてもいえないが、小さい頃からずっとそう思っている。
多分、一生彼女に勝つことはできないだろう。

ふと、テーブルの上を見る。
そこには空のカップと半分くらいココアが残ったカップ。
……千夏、後片付けくらい自分でしなさい。

「有希には勝てないかもしれないけど……」
残っている冷めたココアを一気に飲み干し、二つのカップを手に台所へと向かう。

「……妹には負けないようにしないと、ね」

姉の威厳のためにも、頑張ろうと思った。





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「長編」第6弾『12月1日』をお送りしました(何)
ちなみに今日の出来事は

・「遙さん、警察署に行く」
・「捨て猫と私」
・「裸Yシャツについての論争(一郎くんは有罪or無罪?)」

の3本でした。
で、今日の出演メンバーは姉妹のみ。
……え?関係ないって?
何を仰います。今日の紳士様絵はちなちーじゃありませんか(爆)

紳士様>>>(越えられない壁)>>>まゆまゆ

↑という力関係が明白な以上、原作なんか知ったこっちゃ……
……ん?こんな時間に誰か来たのか。ちょっと行って来ます。


(ズシュウ)


〜しばらくお待ち下さい〜


どうも、お待たせしました。
何の話でしたっけ?あぁ、吉村麻之様のことでしたっけ。
あのお方は全人類の頂点に君臨するドM神でございます。
さぁ、貴方もご一緒に。ジークまゆまゆ!

うん。ちょっと調子に乗りすぎたね。
ごめんなさいしなきゃいけないよね。特にガンダムについて全く知らない辺りを(何)
ネタだけ知ってる、っていう事よくありますよね?


では、話を戻して。
今日の登場人物をこの二人にするのは、大分前から決まってました。
昨日(11月30日)の話を作ったときも、多少意識してました。

……で・す・が。
本当は全体を通じてパロディにするはずだった今回。
何をトチ狂ったか、結局シリアス系にまとまってしまいましたorz
いや、部分的にパロディが残ってる辺りタチが悪い(何)
ちなみに、パロディ原案について。
具体的には「遙さん×一郎くん」「ちなちー×神崎」を全面に押し出した話を……
……やめて正解だったかもしれませんね(死)

さて、無駄に長いあとがきもこのくらいにして(ガトリング土下座)
次回予告行きますか。
『11月2日』といえば。そう、あの娘が登場いたします。( ゚∀゚)o彡゜ようじょ!ようじょ!
もちろん、あのお方もセットで出します。( ゚∀゚)o彡゜きんにく!きんにく!
尚、内容は完全未定です(死)

ではまた。

(製作時間:4時間前後?)←途中で寝てたので分かりませんorz

  


その7


『12月2日』

「いってきまーす」

今日も、同じように家を出る。
いつもの風景、通いなれた道を進む。

――親友の眠る場所へと、続く道を。



あの事件から、毎年の習慣としている。
この時期は毎日のように、有希を訪れるようにしてる。
もう、一人で歩くと決めたから、普段は来ないようにしているのだが……。

「まだ、有希に依存してるのかな……」

どう思う?と尋ねても、返事は無い。
でも、なんて答えるのかは知っている。

「まだまだ、修行が足りないぞ」

有希らしい言葉だと思ったら、無性に笑いがこみ上げてきた。

――皆、私はもう大丈夫だと思ってくれている。
そして私自身、そう信じている。
もう、たくさんの月日が流れたのだから。
もう、私は笑っていられるのだから。

でも時々不安になる。
何かあったとき、すぐに有希を思い出してしまう。
まだ私は、有希を心の支えにしているのだ。
それは、一人で歩いていると言えるのだろうか。

――本当に、私は『大丈夫』なのだろうか。



「――あ、楠木先輩」
名前を呼ばれる。
振り返ると、そこには懐かしい後輩の姿があった。
「七穂ちゃん、久しぶり」
相変わらずの笑顔に、私も笑みがこぼれる。
「お久しぶりです……遠野先輩も、ですね」
そう言って、有希の方を見る。
懐かしむような表情。きっとあの頃を思い出しているのだろう。
しばしの静寂。
私は、七穂ちゃんの言葉を待ち続ける。
吹き抜ける風が心地よかった。

「……本当に、懐かしいです……」
そうつぶやいて、私に笑顔を向ける。
「ごめんなさい、先輩。ちょっと思い出に浸っちゃいました」
「いいのよ。私もいろいろ思い出してたから」
気にしない、と手を振って答える。
「それにしても……先輩に会えてよかったです」
――七穂ちゃんは、高校を卒業してから、一人暮らしを始めた。
そのため、こっちに帰ってくるのは何ヶ月かに一度程度のことだそうだ。
……余談だが、七穂ちゃんのお父さんは最後まで泣きながら反対していたらしい。
「うん、私もあえて嬉しいよ。……なんか、最近みんなとここで会えるのが楽しみになってきたね」
「え、他の皆さんとですか?」
というわけで、最近であった人々の話をしてあげた。
……『彼女』のことだけは伏せておいたけれど。

私の話を、七穂ちゃんは目を輝かせながら聞いてくれた。
ここまで聞き上手だと、話している方も気持ちが良くなる。
ついつい、話し込んでしまった。

「あれ?もうこんな時間なのね」
今日は、ちょっとここに寄ってから買い物をするつもりだったのだが。
……まぁいいか。
「ごめんね七穂ちゃん、引き止めちゃって」
「気にすること無いですよ、特に予定もありませんし。
それより、先輩の話が聞けて嬉しかったです」
「……うん、七穂ちゃんは今も昔もいい娘だね。変わってなくて嬉しいよ」
そう言うと、
「楠木先輩は、変わりましたね。なんか遠野先輩と似てきました」
……これは、褒め言葉として受け取るべきなのかな……?
複雑な表情をしていたのが分かったのか、
「遠野先輩の、前向きなところがそっくりですよ」
とあわててフォローしてくれた。
「うーん、嬉しいんだか悲しいんだか、最近いろんな人に言われるのよね……」
「あはは……なんか、本当に遠野先輩と話してるみたいです」


それは、突然だった。
ずっと笑顔だった彼女の目から、一筋の涙がこぼれた。

「――あ……あれ?」
七穂ちゃんは、隠すようにそれを拭う。
「えへへ……おかしいですよね、私――」
「――もういいよ、七穂ちゃん」

……気づいていた。笑顔を無理して作っていたことは。
本当は、初めから泣くためにここへ来たのかもしれない。
でも、私が居たから。だからずっと我慢していたのだろう。

「……泣きたいときは我慢しないで、ね?」

無言で頷くと、七穂ちゃんは静かに泣き始めた。
それは、次第に大きくなり。
私の隣で、ずっと泣き続けていた。



「……大丈夫?」
「はい。……ご迷惑をおかけしました」
「ううん。こっちこそ、気を使わせちゃってごめんね」
私の言葉に、首を横に振る七穂ちゃん。
「本当は、我慢しなきゃいけないんです。だって――」


「――私なんかより、楠木先輩の方が泣きたいはずなのに……」


「……え…?」

――言われるまで、気がつかなかった。
そう、一般的な考えをするならば、私は泣くべきなのだ。
確かに、初めの内は泣くことはあったが、いつの間にか泣かなくなっていた。
最後に泣いたのがいつだったか思い出せない。
私は、有希のために涙を流さなくなっていた。

「――先輩は、強いですね」
七穂ちゃんは、そう評価してくれた。
「ううん……我慢したとか、そういうのじゃない。私は、『泣けなかった』のよ」

有希のために流す涙がなかった。
私には、親友に対してその程度の感情しかなかったのか。

……ショックだった。
泣けなかった自分が。それに気づいてさえいなかった自分が。



「でも、先輩は『強い』です」

七穂ちゃんは、力強く断言した。

「私は、泣くことしかできなかったんです。
だから、思い出に蓋をして笑顔をつくってる。
そして、ときどき思い出しては泣くだけなんです。
……そんな私に比べたら、楠木先輩は眩しいくらいですよ。
泣かなくても『大丈夫』な先輩が、眩しいです」
必死に元気付けようとしてくれる七穂ちゃん。
「うん、ありがとう……。でも私は七穂ちゃんがうらやましいよ。
大切な人のために、泣くことができる七穂ちゃんが……」



七穂ちゃんと別れた後も、私は考えていた。
……なぜ、親友のために泣けないのか。

七穂ちゃんは、これを『泣かなくても大丈夫』と表現した。
確かに、そう言うこともできるだろう。
その辺りを根拠に、皆が安心してくれたのだろうから。
私自身も、泣かないようにしてきたと思う。

だが本当に、『泣かないこと』は『強い』ことになるのだろうか。
強いのなら、なぜ私は有希のところへ来ているのか。
……有希との思い出に依存している私が、有希のために泣けない。
この矛盾は、一体何なのか。
一度芽生えた疑問は、いつまでも私の頭を離れることはなかった。



――本当に私は『大丈夫』なのだろうか。





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長編第7弾『12月2日』をお送りします。

ちなみに現在午前1時半。

……はい。その通りです。
期待していた方々。誠も申し訳ありませんでした。

そんなわけで、一日一話製作の期限に間に合いませんでしたil||li _| ̄|○ il||l

構想は出来ていたのですが、なかなか文章が進まず。
気分転換に見た野球中継は白熱していて。
気がついたら午後11時半だったという孔明の罠(何)
  _, ,_
 ( ‘д‘) <言い訳のつもりか?
   ⊂彡☆)))Д´) <もっと罵ってください

……公約に反した以上、何かお詫び(と書いて罰ゲームと読む)を考えときます。
万が一リクエストのレスがあったら……いえ、何でもありません(ガクガク)


肝心の内容ですが、自分自身最悪の出来だと思ってます。
しかし、今日の話は今後につなげる為のものですので、今後挽回を目指します。

最後に、今日の反省。
七穂タソは出すことが出来ましたが……。
緒方父を出すことが出来なかったことをファンの皆様に深くお詫び申し上げますorz
筋肉出したかったよ筋肉(何)

ではまた。

(製作時間:実質の執筆時間だけなら4時間ほど)

   


その8

  



『12月3日』

「……暇だなぁ」
窓の外を眺めながら、そうつぶやく。
「…………」
「……ねぇ」
「黙って本でも読んでなさい」
「つれないなぁ……」
15歳も離れた姉さんは、妹に冷たかった。
「あーそーぼーぉーよー……」
「…………」
溜め息のリアクションすらない、完全無視。
だが。
「流石に歳食ってると違うわね――」
「遺言はその程度かしら?」
やはり反応した。最近シワが増えたのが悩みらしい。
……他人事ではないのが悲しいが。
「空耳よ。だからその重そうなハリセンはしまうべきだと思うんだ」
とりあえず、目前の危機を避けておく。
姉さんは本気になったらどこまでやるか分からない。
流石、あの娘にしてこの母あり。

……有希が居なくても、こうしたやり取りができる。
そんな、私達の平和な日常だった。


「千里」
突然、本から顔を上げた姉さん。
「なーに?」
「墓参りでもしてきましょうか」
「……そうだね」
読んでた雑誌をちらりと見てみる。
『娘に貰って嬉しいプレゼント特集』という文字が見えた。

小さく溜め息をついて、私はその場を後にした。



住んでる場所が近いだけあって、私は週に1回くらいの割合で通っている。
じゃあ姉さんはどれだけ通っているのか、と思うのだが。
ちなみに、以前さりげなく尋ねてみたときの回答は……

「えーと……この前いつ行ったかしら」

ツッコミどころ満載な回答だった。

……姉さんは強いから、そうやって完璧に隠すことができるのだろう。
でも、妹である私には通じない。
こうやって、有希のところへ向かっているのがその証拠だ。

――ちょっとしたきっかけで、平静が保てなくなるから。



「あ、こんにちは」
私が考え事をしていると、若い娘の声が聞こえた。
我に返ると、
「あら、千夏ちゃんに……遙ちゃんもいるのね。こんにちは」
「こんにちは三里さん。それに、千里さんも一緒なんですね」
楠木姉妹が揃っていた。今日は姉妹の日なのだろうか。
そんなことを考えながら、挨拶を返す。
「はい、こんにちは。……で、私が一緒に居たら不満なのかな、遙ちゃん?」
「あ、いや。お二人が一緒なんて珍しいなーと……」
「それはこっちの台詞だよ、楠木姉妹」
卒業してから機会が減ったとはいえ、個別に会うことはあった。

滅多にない偶然に、私達はしばらく談笑していた。
きっと皆思ったに違いない。――この場に有希が居たら、と。

だからこそ、あえて有希の話をしていた。
有希のことでこんなに笑ったのは……笑った姉さんを見たのは久しぶりだ。
……楠木姉妹に、心の中で感謝した。



「そういえば、遙ちゃんは毎日ここへ来てくれてるんだって?」
「そうですね。……まぁ、この時期だけですけど」
普段はあまり来ないから、と苦笑する遙ちゃん。
「ふーん……」
何故、とは聞けなかった。だから、
「……有希も嬉しいだろうね、こんな親友を持って」
と話を切るつもりだったのだが。

「自分自身のため、っていうのが一番強いんです……」

逆に深い話をし始める遙ちゃん。
「あぁ、無理に聞くつもりは無いから」
先回りして誘導するけど、首を横に振る。
うーん……しくじったな。

「――あ、ちょっと水汲んできますね」
千夏ちゃんがそう言って、桶を持つ。
空気を読んだのだろうか。姉想いの、よくできた妹だ。
「それじゃあ、私も行こうかな」
と、姉さんも言い出した。
「……責任もって聞いてあげなさいよ」
横を通るときに片目を閉じる姉さん。
これは、覚悟しなくちゃいけないみたいだ。

「……気を使わせちゃったみたいですね」
「後でお礼を言わなきゃね。……さて、悩み相談受け付けちゃうよ?」
二人が十分離れてから、促す。
一つ深呼吸をしてから、話し始めた。

あの事件から、皆に心配されていたということ。
そして、心配してくれた皆に『大丈夫』と言ったこと。
簡潔に言うと、そんな話だった。

「――でも、自信が無いんです。私は、本当に『大丈夫』なのか。
まだ、どこかおかしいんじゃないか、って……」
「……なんで、そう思ったの?」
「だって……有希のために泣けないんですよ?
誰よりも、大切に思っている親友のために……。
そう思ったら、有希の話をしながら笑ってる自分にも違和感を覚えました」
そう言って、自嘲するように笑う。
「笑っちゃいますよね、こうやって全部信じられなくなって……。
気がついたら、また塞ぎこんでる自分が居るんです。
そんな姿を見られたから、今日は妹までついてきて……。
『大丈夫』なんて言っといて、これですから……姉失格ですよね」

なるほど……。遙ちゃんの悩みは大体分かった。
こういう人には――

「……それでいいのよ」

自信満々に言ってやる。
「え……?」
びっくりして顔を上げる遙ちゃん。
「そうやって、悩んでいればいいの。何も心配することないじゃない」
「でも……」
「気にしすぎなのよ、遙ちゃんは。……そこまで言うなら、お姉さんヒント出しちゃおうかな」
いや……期待のまなざしで向けられると、ちょっと後ろめたいのだが……。


「――悩まない人間なんて、いると思う?」


ちょっと考えれば簡単なことなのだ。
でも追い詰められると、簡単なことほど見落としやすい。
だから、私は指摘してあげる。『なんでもないことだ』と、軽い口調で。
――普段から様々な相談を受けている、保険医は伊達じゃない。

「大丈夫、遙ちゃんは強くなったよ。それは私が補償する。
……だから、力いっぱい悩みなさい。それで『大丈夫』、よ」

どうやら、ちゃんと気づいてくれたようだ。
お礼を言って頭を下げる遙ちゃん。
……気休めではなく、本当に『大丈夫』だろう。
良い友人に恵まれたし、何より彼女自身の芯が強いから。
あの時、折れかかっていた状態から、ここまで回復するとは……。
若いっていいな、そう思ってしまう。

「――最高の親友を持ったわね」
「え……何か言いました?」
「いいえ、独り言よ」
向こうから、姉さんと千夏ちゃんが歩いてくるのが見える。
きっと、あっちはあっちで何か相談を受けていたのだろう。
でも千夏ちゃんの顔を見る限り、心配する必要もなさそうだ。
……本当に、若いって羨ましい――。



「……どうだった?遙ちゃんは」
楠木姉妹が立ち去った後、姉さんが尋ねてくる。
「もう大丈夫みたい。元々芯は強いからね、あの娘。……そっちは?」
「特に問題はなかったわ。ちょっと心配性だっただけね。……シスコン、ってやつかしら?」
私達には縁の無い言葉ね、と笑う姉さん。
「えー?こんなに姉想いの妹がいるのにー?」
「どの口が言うのかしら?」
「どーせひねくれた口ですよー」
「あら、ひねくれてるのは口だけだったの?」
「お互い様じゃない?」
「それもそうね」

いつものやり取り。でも、こんなに心地よいのは何故だろう。
相談を受けた側が、逆に悩みを解決してもらってる。
今回もそんな感じなのだろう。

「……姉さん」
「……なに?」
「……負けてられないわね」

『誰に』とも、『何に』とも言わなかった。
でも――

「……もちろん。示しがつかないからね」

――きっと、『大丈夫』だろう。
もうちょっと時間はかかるかもしれないけれど。
いつか立ち直ってくれる、そう確信できた。


――皆、『大丈夫』みたいだよ。
だから……心配しなくていいからね。


ここを離れる前に、そう報告した。
意外に繊細だった『妹』も、これで安心できるだろう。


――今夜は久しぶりに、美味い酒が飲めそうだ。





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長編第8弾『12月3日』をお届けします。
今日の紳士様絵は千里おねえさん。
『星空』では、一郎くんとの関係をネタ晴らし。
『晴雨』では、高校に潜入したちなちー&瑞桜を捕獲してました。
そういうわけで、今日の主役は千里おねえさんです。

まぁ、千里さんの性格も掴みきれてないので、かなりアドリブになってます。
「こんなの俺の千里さまじゃねーぞ。死んで詫びやがれ」
という方々に深くお詫び申し上げます(ガトリング土下座)
……特に、三里さんとの会話が難しすぎましたorz
お互いの呼び方すら知りませんよ……
『姉さん』⇔『千里』で良かったんでしょうかねぇ……

そんな感じで、いつも以上に手探り感満載ですが、筆者としてはけっこう満足してます。
と言うのも、『あの事件で最も深い傷を負った3人に一番近い立場』というポジションな千里さん。
この千里さんの目線で、3人の回復の様子を書いてみたかったんです。
これは、この短編集を始めるときから考えてました。
狙い通り、とまでは言い切れませんが、それに近い文章にできたと思ってます。

さて、真面目な話はこの位にして(何)
えー……前回遅れて申し訳ありませんでした。
そのお詫び(罰ゲーム)として、おまけ短編も一緒に作ってあります。
もし読んでない方は……読まないことをお勧めします(何)
いいか!?絶対読むなよ!?(お約束)
尚、本気で後悔しても、当社は一切の責任を負いかねます(m _ _)m

さて、次回予告ですが……
この短編集、もとい長編の予定を立てたとき、唯一内容を全く考えてない部分です(死)
つーか、未だに考えてません。
うなうなは登場させます。これは確実。
でもねぇ……どうも、あのキャラは絡ませづらいorz
明日より、ラスト2回分の話の方は6割ほど考えてあるんですが……
ぶっちゃけ、明日の話無しでも繋がるんですよね(何)
うーん……いっそ、本気で無関係な短編にしてやろうか……
まぁ、何とか読める文章を作れるように頑張ります。

ではまた。

(製作時間:2時間〜4時間(何)……いつから書き始めたんだろう……)

    


その9

  


『12月4日』

「……今日は、誰も居ないみたいね」

無人の墓地。空を見上げれば、曇り空。
今日はこの後、雨が降るとの予報。
冷えた手を擦り合わせながら、今日は早く帰ろうと思った。

……結局、今日も有希のところへ来ている。

昨日千里さんに言われたとおり悩んでみた。
しかし、どうすれば一番良いのかなんて分からなかった。

ここへ来ることが、有希への依存に繋がるのか。
有希を思い出して泣けないことは、何を意味するのか。
一晩悩んだくらいでは、何も分からなかった。

でも、ずっと悩むことは悪くない。それだけは千里さんに教えてもらった。
だから、今日も有希のところへ来ている。
今はこれでいいのかもしれない。



「……今日は、もう帰るね」
有希にそう言い残して、出口へと向かう。
すると、そこには人影が一つ。

「やっほ〜、遙〜」
「……可奈?」

振り向くと、そこには友人の姿があった。
「いつから居たの?」
「ちょっと前からね。……で、中を散歩してたんだ〜」
「……場所、忘れたのね」
「さっすが遙〜。んじゃ、案内してね」
「はいはい……」
彼女も、相変わらずと言うべきか。
この軽いノリはいつまでも衰えることはなかった。
……これは私達の前でしか見せない姿らしいけど。

「ほら、ここよ」
「さんきゅ〜、遙」
そう言って、近づく可奈。
「うんうん、見覚えがある。……騙されなくてよかった、よかった」
「誰が騙すか!!」
「うーん、この痺れるツッコミ。やっぱり遙はこうでなくちゃ」
親指を立てて片目を閉じる可奈。
「場所を考えなさいよ……」
溜め息混じりに言う私。

ずっと変わらない、私達の関係。
意図してるのか、自然なのか……それは私自身にも分からなかった。
可奈は、本音を隠すのが上手いから。

だからこそ、思い出す。
あの事件の時に見せた、可奈の本音。

――あの強い繋がりは……もうないの?
――少しは引きずって欲しいと思うのは……傲慢かな…?
――彼は……有希の代わりなの?

事件が解決した後も、彼女の言葉は鮮明に残っている。
今は目の前で無邪気に笑っている可奈。
その心の中では、何を考えてるのだろう……?


「――遙?」
「……えっ?」
気がつくと、私の顔を覗き込んでくる可奈が居た。
「もぉ〜……私の話聞いてなかったでしょ」
「ごめんごめん。ちょっと考え事してた」
「友達ほったらかして、何考えてたのかにゃ〜?」
さぁ吐け、と意地悪な笑みを浮かべる。
こうやって、楽しんでる姿を見れば見るほど、私の疑問は膨らんでいく。

――有希のことを、どう思ってるのだろう……?


「……ねぇ、可奈」
「なにかにゃ〜?」
「有希のことは……可奈の中で、どうなってるの?」
可奈の動きが止まる。
「今、ここに居るときに、何を考えてたの?」
先程の問いを、そのまま返す形になった。
しかし、その重さが全然違う。
空気が、変わっていく。


私は、彼女の本音が知りたかった。
もしかしたら、今の私に足りないものが分かるかもしれない。
そう、軽い気持ちで聞いてしまった。


そして、彼女は語り始めた。


「前にも言ったけど……私は、遙と有希の関係がうらやましいの」
あの時に見せた、儚げな瞳で私を見る。
「二人とも、私の大事な友達。でも、貴女達のような関係には、きっとなれない。
他の皆もそうだった。どれだけ表面は仲良く振舞っても、強い絆で結ばれなかった。
あれから、たくさんの人に会ったけど、まだそんな関係になれる人が現れてないの。
……どうしたらいいんだろうね……」

そこで言葉を一回切る。
一つ深呼吸。そして――


「そんな目で見てたら、人と関わるのが、嫌になっちゃった。
新しく出来た友達も、皆離れて行っちゃった。
そういえば、美香、美樹、未久とも、最近は話してないね。
……どうしたらいいんだろうね……私にはやっぱり、無理なのかな……」



――私は、後悔した。
軽い気持ちで聞いてしまったことを恥じた。
可奈がここまで悩み、苦しんでいたことに気がつかなかったことを悔やんだ。
……可奈も、あれから立ち直ってなかったのだ。
それどころか、今は――


「でね、ここへ来たら何か分かるかな、って思ったの。
弱いよね、私って。今になっても、有希に頼ろうとしてるんだから……」
そう言って、有希の方を見る。
その後ろ姿は、あの時、夕暮れの教室で見せた姿にそっくりだった。
――絵のような風景だった。……そのまま消えてしまいそうな、儚さをもっていた。

……無意識だった。
私は、思わずこう言ってしまった。


「――無理だよ、それじゃ」


……このときの私は、恐怖を感じていた。
友達を失う恐怖。それが私を支配していた。
混乱していた。頭と言動が噛み合ってなかった。
それでも、私は必死に言葉を紡いだ。

「だって、可奈は本音を言わないんだもん。
いつもいつも、一人で抱え込んで、誰よりも強く振舞って。
蓋を開けてみれば、一番落ち込んでるのが可奈自身じゃない。
自分を大事にしなかったら、疲れるのは当たり前よ。弱くなって当たり前よ。
友達より家族より、誰よりも自分自身が大事にしなきゃいけないんだから。
自分が一番、自分を大事にできるんだから」

初めは、とにかく空回りしてたけど。
話しているうちに、だんだん冷静になってきた。
何か、自分じゃないものが喋っている感覚。

「……どうすれば、良かったの……?」

今にも泣きそうな可奈の声に、もう一人の『誰か』が応える。

「一人で抱え込むからそうなるの。他人を……友達をもっと頼ってよ。
人間って、一人じゃ弱いんだから。私を見てたら、よく分かったでしょ?
私も、一人じゃここまで立ち直れなかったよ……。
皆が、友達が支えてくれたから、今こうやって立っていられるんだよ。
……可奈だって、私を支えてくれたじゃない。本当に感謝してるんだから。
今度は私が支えたいよ。……それとも、私じゃ支える権利もないのかな?」
「そ、そんなことないよ!」
「私だけじゃない……ほら、彼女達だって」
「えっ……!?」

さっきから、こっちを伺っていた人影。
話を聞いてたのか、3人は泣きながらこっちへ歩いてくる。

「かなぁ〜……」
「美香!?美樹に未久まで……」
「ずっと心配してたんだからね……」
「悩んでたのなら、いくらでも相談にのったのにぃ……」
顔をぐちゃぐちゃにしながらも、口々に言うみかきく。
――最高の友達。うらやましいのはこっちの方だ。

「……例え、一対一では強い絆じゃなかったとしても……
たくさん集まれば、それ以上の結束になるんじゃないかな……?」
「うん……うんっ……!」
頬を涙で濡らしながら、何度も頷く可奈。
「ごめん……ごめんなさい……みんな……」
「こっちこそ、頼りなくてごめんね……」

友情を確かめ合い、泣き続ける4人。
その辺のドラマより、ずっと泣ける光景。
……自然に、私の目からも涙がこぼれていた。



「うーん、久々に大泣きしたぞ〜っと」
大きく伸びをする可奈。
その目は赤く腫れていたが、満面の笑顔が輝いていた。
――これが、宇奈月可奈の本来の姿だ。
「そうだね〜」
「でも、なんか清清しいね」
「うんうん」
みかきく3人衆も気持ちいいくらいの笑顔だった。
復活した可奈の姿を見て、彼女達の悩みも晴れたのだろう。
「本当にありがとう、遙。やっぱ、持つべきものは友達よね!」
「当たり前じゃない。私は可奈の友達であることを誇りに思ってるよ」
すると可奈はこっちを向いて、穏やかな笑みを浮かべた。

「……なんか、有希みたいだったよ、さっきの遙」

「……ありがと」



彼女達と別れ、家路に着く。
4人は友情復活記念に、カラオケへ直行するらしい。昔のノリも復活していた。

「有希みたい……か」

正直、自分でも驚いていた。
あの場で、あんなことを言えたなんて、今でも不思議だ。
……多分、可奈の直感は正しいのだろう。

「まったく……死んでもおせっかいなんだから……」

空を見上げれば、綺麗な夕焼けが見える。
天気でさえも、操ったのだろうか。

――私の願いを叶えてくれる、最高の親友だ。


「――ありがと、有希」


私も、彼女の最後の願いを叶えよう。
もう心配させないように、力強く歩いていこう。

そう、改めて決意した。





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長編9弾『12月4日』をお届けします。
現在時刻23時57分。……俺\(^o^)/オワタ

さて、今日は予告どおり、うなうなタイムをお送りしました。
ついでにお供のみかきくも出してみました。強引に。
やっぱり、うなうなと言えばあの夕暮れの教室。
印象深いですねぇ……やっぱり。
というわけで、あの場面の台詞を引っ張って、偽感動ストーリーをでっち上げてみました。
うん、ネタが苦しかったのが良く分かりますね(何)
楽しんでいただければ良いのですが……。

さて、いよいよラスト2回。
ちなみに明日……あ、今日になってる\(^o^)/
……次回の紳士様絵は遙さんですね。
もちろん出しますが、一人では話が書けません。
さて、もう一人は誰になるでしょうか?

勘の良い方ならもうお気づきでしょう。
適度に期待しながらお待ち下さい。
※ヒント:すでに予告済みのあの方です。きっちり救済しますよ。

ではまた。

(製作時間:4時間前後)

  


その10

  


『12月5日』

「――よし、行こう」
いつもの服装に身を包み、戦闘体勢で家を出る。
今日こそ、私は『彼女』と話をしよう。
時間はかかったが、やっとそう決意できた。
「……やっぱり、有希みたいにはいきませんね」

有希なら、思い立ったときに即座に行動してるだろう。
私は、そんな彼女に惹かれたのだ。
自分に無い『強さ』を、その輝きを放ち続けている彼女に。

私は、ここ数日通いつめていた場所へと向かう。
――有希の墓へ。私は毎日通うことになった。

何日かずらせば人も居ないだろう、そう思って来てみたのだが。
タイミングが悪かったのか、先客が居た。
出直して次の日来ても、また誰かが。
計ったかのようなタイミングで人が居たのだ。
「……?」
仕方なく引き返そうと思ったとき、あることに気がついて戻ってみる。
不穏な空気で向き合う少女達。その片方は、昨日も居なかったか?
物陰に隠れて様子を伺う。……確かに彼女だ。昨日は若い男性と一緒だった。
気にしつつも、とりあえずその日は大人しく帰った。

次の日も来てみる……今日は別の少女だ。
「――!!」
だが、その少女は見覚えがあった。
あの時と服装も、身長も違うが、確かにあの時の――。
別の男性と一緒に話していたのだが、時計を見て慌てているようだ。
何か用事を思い出したらしい。
墓の前から立ち去る二人。気づかれないように後を追う。
この時墓の前には誰も居なかったのだが、迷わず少女を尾行する。

――『能力』を使うような素振りは見せない。
日常の役に立たない能力なのか、そもそも開花してなかったのか……。
結論は出せないまま、目的地に着く。

どうやら用事は買い物だったらしい。スーパーで野菜類をいくつか買って、出てきた。
その後も尾行を続けると、途中で誰かと合流する。
驚いたことにその相手は、何度も墓に来ていた人物だった。
「あ、お姉ちゃん」
「千夏?どうしたの、こんなところで」
どうやら姉妹らしい。このまま帰るようなので、住所だけでも調べようと思った。
そして、二人はある家に入っていく。
表札を見て、衝撃を受けた。

「――楠…木……!?」

記憶を呼び起こす。それは有希の――
……全てが、繋がった。

次の日も、その次の日も。
私はこの場所へ来た。
彼女――楠木遙も、毎日来ていた。
すでに、ここへ来る目的は変わっていた。

――彼女なら、私の問いに応えてくれるかもしれない――

それだけが、私を動かしていた。
でも、何と声をかければよいか……。
私にとって都合の悪いことに、常に別の人間も一緒だった。
そのため、今までずっと声を掛けられなかった。

そして今日。
私は『彼女』と――楠木遙と話をする。
その決意を胸に、有希の墓の前に立っている。
もちろん、今日も来るという保証は無い。
でも、私には予感があった。必ず来ると。
そして、私の目の前に、彼女はやってきた――。





「……?」
私は、その人の前で立ち止まる。
有希の関係者とはたくさん会ってきたけれど、その人は記憶になかった。
綺麗な長髪からブーツの先まで、黒一色の女性――。

「こんにちは」
少し迷ったが、とりあえず挨拶をしてみる。
「……こんにちは」
遠慮がちに応える女性。
……そして沈黙。

――ここまで来た手前、引き返すのも不自然。
かといって、先客が居るのに突撃(?)するのも気が引ける。
しかし、このままボーっと立ってるのも……

次の行動を決めかねて、動けない私。
微妙な空気の中、その沈黙を破ったのは、

――くすくす

その女性は肩を震わせて笑っていた。
「……えっと……?」
「いえ……ごめんなさい。百面相してるのが面白かったので……ふふっ……」

……考えてることが、顔に出ていたようだ。
顔から火が出そうだった。
空気は柔らかくなったが……。

「……こほん」
とりあえず、一つ咳払いをしてこの場を誤魔化す。
「えーと……?」
話しかけようとしたのだが、呼び名が無いと……。
「……多奈です。伊勢崎多奈、と申します」
ご丁寧に、頭を下げてくる。
「あ、どうも……。えーと、私は――」
「楠木遙さん、ですね。……有希の、唯一無二の親友」
「……有希がどう思っていたのかは分かりませんけど、私にとっては親友です」
「きっと、有希もそう思ってましたよ。貴女のことを話す彼女は、とても誇らしげでした」
「そうですか……」

第三者からそう言われると、なんだか照れくさい。
悪い気はしないけど。
……照れ隠しに、話題を変えることにする。

「ところで、多奈さんと有希はどうゆう……?」
「…………」
少し表情を翳らせて、黙り込む多奈。

――この空気は……地雷だったかな……?

「……ちょっと、私の相談を聞いていただけますか?」
私の質問には応えず、質問で返してくる。

……やはり、複雑な事情があるみたいだ。
聞いてしまった以上、私にも負い目がある。
それを抜きにしても、聞いてみたい気持ちがあった。
――何か、惹かれるものが、彼女にあったのかも知れない。

無言で頷いた私を見て、多奈は語り始めた。


「……私は、彼女に大変な仕打ちをしました。彼女が、最も嫌がることを。
ですが私は、私の意志を貫く為に、その選択をしました。そのことに悔いはありません。
……悔いを残すことが、彼女への冒涜へ繋がると思ってますから――」

でも、と彼女は続ける。

「――その結末は、最悪の未来につながっていました……。
そのこと自体は、仕方がなかったことなのでしょう。誰にも、止められなかった。
……しかし、私は後悔してしまったのです。自分の行動を。
もしかしたら、有希は助かったのかもしれない――そう思ったら、止まらなかった」

縋るような目で、私に問いかける。

「私を恨むでしょうか?……助かる道を閉ざしたことを。
私を蔑むでしょうか?……後悔しないと決めたのに、揺らいでることを。
――私は、どうすれば良いのでしょうか……?」


……正直に言って、話が大きすぎて、ほとんど理解できなかった。
この問いに応えるには、私の能力は不足していた。
――分かりません。そう言って逃げたい気持ちもあった。

でも、彼女は私に相談したのだ。
『遠野有希の親友である楠木遙』を頼ってきたのだ。
私は、親友として、全力で応えようと思った。


「まず……貴女の決断は、有希も納得していたことだったんですか?」
「……納得はしませんでした。最後まで抗いました。
私達は、お互いの信念を貫くため、闘いました」
「その結果、貴女は有希に勝った……」
「はい。……結果だけを見れば、そういうことになります」

――疑問点は解消された。必要な材料はすべて揃った。
あとは、『親友』の言葉を待つだけだ。
こんなとき、有希なら――





「――多奈」

「――!」
有希、そう呼びそうになった。
目の前に立ってるのは、楠木遙だ。それは分かってる。
でも、雰囲気が変わっていた。私の中の何かが、彼女を『有希』だと錯覚している。

「こんなときに役に立つ言葉を教えてあげる。
――『相談事は相手に相談した時点でもう答えは出ている』」

「……でも、私は…っ……!」
答えなど出ていない。私だけでは答えなど出せない。
だから、他人の声が聞きたかったのに……。
――有希の声が、聞きたかったのに……!

「多奈の中で、『有希』は何て答えてる?……それが、全てだよ」

「それは……都合の良い幻です……」
私の作り上げた幻は、私に都合の良いことしか言わない。
何度、幻が私を許しても、私自身がそれを認めはしない。

「そう、全部幻だよ。……でも、多奈が現在囚われてるものも、幻なんだよ。
もう、『多奈が知っている有希』は、貴女自身の心の中にしか居ない。
だから、それで判断するしかないよ」

「…………」
でも、私は聞きたい。『有希』の声を聞かなければ前へ進めない。
不可能だと分かってても、私にはそれしか道は無い――

「それとも、貴女の中の『有希』は、そんなにつまらない人なの?
貴女を罵ったりするの?貴女が悩み苦しむ姿を望んでるの?
……貴女と『有希』は、その程度の絆だったの?」

心外だなぁー、そう言って苦笑する有希が見えた。



――あぁ、そうなんだ。
私は、やっと理解することができた。
自分を追い詰めることこそが、『有希』を裏切り続けているということ。
自分自身が最も、『有希』を信じていなかったこと。
……なんと愚かなことを考えていたのだろう、私は。


「……ごめん…なさい……有希――」


私は、自分自身に科した禁を解いた。
……有希のために、泣くことを許した。

――信じていいんですよね、有希……。

それが、『友達』なのだと、改めて心に刻んだ。





「――ご迷惑をおかけしました」
多奈は、また私に頭を下げる。
「いいえ。私の方こそ、多奈さんに偉そうなことを……。私は有希じゃないのに――」
そう続けようとしたが。
「私は、貴女に相談したんですよ、遙さん。そして、私は貴女の言葉に救われた」
柔らかい笑顔を作る多奈。
引き込まれそうな、そんな笑顔。本来の彼女の一片を見た気がした。
「本当に、ありがとうございました」
そう言って、立ち去ろうとする。
その彼女の後姿に、

「――あ、待って」

声をかけたのは、無意識だった。
振り向く多奈。そして私は、

「携帯の番号、交換しない?」

これも、きっと『彼女』が言わせたのだろう。
私と彼女を、引き合わせたのも、すべて『彼女』の仕業だったのかもしれない。

「……え?」
目を点にする多奈。
「まぁ、その……『友達』になろう、ってこと」
言いながら恥ずかしくなってきて、ぎこちない笑みを浮かべる。
びっくりしていた多奈だが、言いたいことはは通じたらしい。
身体ごとこっちへ向き直り、そして――


「……よろこんで」


そのときの笑顔は、きっと忘れることは無いだろう。





「――友達、か」

もらったメモを握り締めながら、家路に着く。
……あんな風に笑ったのも、泣いたのも、久しぶりだ。
楠木遙。――有希の親友。

嫉妬していない、と言えば嘘になる。
でも、きっと彼女には勝てないだろう。
そもそも、こんな風に思ってる時点で、私の器が小さいということだ。
悔しいが、有希の唯一無二の親友は、彼女だけだと認めよう。

そして――

「……もしもし、兄さん。はい、私です。……ええ、迷惑掛けてごめんなさい。
それより……久しぶりに、ご飯でも食べに行きませんか?
……詳しくは会った時に話します。……どうしても聞きたいですか?」



認めよう、彼女を。



「――私に、『二人目の友達』ができた記念です」



――明日が、待ち遠しい。





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長編10弾『12月5日』をお送りしました。

きっと読めば分かるでしょう。
この突発企画を始めてから、自分が最も書きたかった部分です。
誰もが想像するであろう、『遙×多奈』のシーン。
自分なりに表現してみましたが、いかがだったでしょうか?
楽しんでいただけたなら、バイトをサボった事に悔いはありません(死)

……ま、ちょっと大雪で外へ出られなかっただけですけどw
おかげで一気に仕上げられました。天の神様、貴方の計らいに感謝します。
……でも、遅刻までしか許してくれませんでした(涙)
というわけで、ちょっとバイト逝ってきます……。
……なんでこんなに雪降るんだよ……天の神様のバカヤロー(何)

〜以下、帰宅後追記〜

とりあえず、吹雪の中を自転車は死亡フラグだと認識しました(←H)
なんとかフラグブレイクに成功、無事に帰ってこれました。

さて、今回の話ですが。

@『遙×多奈』が書きたかった
A長編2弾の多奈さんを救済

という目的があり、最初からいろいろ考えてました。
そのため、無駄に長くなるという罠がががが。
というわけで、全11話中最長を記録いたしましたorz

あと、「1人称を交互にする」という案は真っ先に決まってました。
……嘘です。ごめんなさいorz
初めに決めてたのは、「先に遙さん視点→同じ話を多奈さん視点」でした。
ところが、書いてるうちにネタがなくなってきてしまったので(何)
急遽、交互という形に変更されました。
……即興のわりには、まとまってるほうかな、と思ってます。


さて、部屋の中が寒くて、とても眠くなってきました(死)
次回予告して寝ようと思います。

……というわけで、次回でラストです。
まず、無計画突発長編小説をここまで読んでくださった方に、感謝を。
そして、皆さんが満足できる最終話をお届けしたいと思います。
明日で終わりですので、もう少しだけお付き合いをお願いします。

……とか言って、間に合わなかったら笑いもの(←台無し)

ではまた。

(製作時間:合計6時間……流石に力の入れ方が違いましたねw)

  


その11

  


『12月6日』

「――もう、誰も来ないみたいだね」

空を仰げば、雲一つない青空。
足元には敷き詰められた黄色の絨毯。
秋の終わりの季節。

今日も、私はここへ来ている。

……何故かは、自分でも分からない。
初めは、ここへ来ると心が落ち着いたからだ。
有希と向き合って、私が『大丈夫』であることを確認したかったから。

でも、皆と向き合って、本音で語り合って。

私の未熟さに気がつくことができた。
……未だに有希が居なければ何もできていない自分に。

私の大切なものに気がつくことができた。
……今も私を支え続けてくれる人々に。

私の力に気がつくことができた。
……私の言葉で救える人が居ることに。

そして、これからの私がしなければならないこと――



――私の一番大切な友人に、前進を。
彼女の足で、彼女の体で、彼女の人生を得ることが出来ますように。



それが、有希の願いなのだから。
私は自力で、進まなくてはならない。
もう『大丈夫』だと、有希を安心させなければならない。

「……じゃあね、有希」

その第一歩として、ここへ来ることをやめることにする。
小さな一歩かもしれないけれど、決意の証拠として。


私は、前へ進む。

星のない空――青空の下を。





――行っちゃったね。

「……そーだね」

――もう来ないかな?

「だと良いけどね〜。でもきっとまた来るよ」

――自信ありそうだね。

「誰よりも遙のことは私が知ってるからね〜」

――彼女は、そんなに弱いかな?

「うんにゃ。遙は強いよ、私よりも」

――じゃあ何で来るの?

「来る理由?それは――」


墓地を抜けた遙が誰かと出会ったようだ。
相手は――



「――結婚報告じゃない?」



もう、思い残すこともなさそうだ。





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長編11弾『12月6日』をお送りしました。
同時に、11日間にも渡って投下し続けた作品も、これで終了を迎えることとなりました。
応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。


えーと、最終話が異常に短い理由を言い訳しなければいけませんね(汗)
というか、前話がクライマックスで、今回がエンディングって感じだったんです。
というわけで、話を伸ばすネタがありませn(撲殺)

……期待してくださった方々、申し訳ありませんでしたil||li _| ̄|○ il||l

友情出演として、ヒントの妖精さん&その同僚(詳細設定皆無)に締めを任せてみました。
どう見ても蛇足ですが……orz
でもきっと分かってくれるでしょう、あのキャラを書きたくなる衝動を(何)

書いてるうちにどんどん暴走し始める有希さん!
そのままやり過ぎて、気がついたら収集不能な展開に!
果たして筆者は無事に完結させることができるのか!?

って感じのキャラ。……くぅ〜!書きたい!!(死)
暴走キャラは書いてて楽しいですしね〜。
有希さんの場合は、+シリアスも行ける万能キャラ。
これは主人公にせざるを得ない。……くぅ〜!書(ry


えー……最後までグダグダにお付き合いさせてしまって、申し訳ありませんでした。
お怒りの声は全部こちらへどーぞ↓
  _, ,_
 ( ‘д‘) <
   ⊂彡☆)))Д´) <思う存分いたぶってください

最後まで主張しますが、筆者は決してMではありません。


それでは、また会う日まで。

……あれ? ↑自然に書いちゃったけど、まだ何か書く気なのか俺は……?

(製作時間:2時間……まぁ、短かったので)

  


おまけ

  


『12月?日』

「いってきまーす」

今日も、同じように家を出る。
いつもの風景、通いなれた道を進む。

――親友の眠る場所へと、続く道を。



あの事件から、毎年の習慣としている。
この時期は毎日のように、有希を訪れるようにしてる。
……以下略。

だから、この時はまだ気づいていなかった。
気づいていれば、引き返すことができたのだろう。
でも、もう遅い――



「――あ、楠木先輩」
お墓の前で、名前を呼ばれる。
振り返ると、そこには懐かしい後輩の姿があった。
……隣に上半身裸の筋肉が見えるのは、目の錯覚だろう。
「七穂ちゃん、久しぶり」
完全に無視を決め込んで、後輩に笑いかける。
「どうも。緒方父で――」
「お久しぶりです……遠野先輩も、ですね」
七穂ちゃんはそう言って、有希の方を見る。

しばしの静寂。
「どうも。緒方父で――」
……。静寂。
私は、七穂ちゃんの言葉を待ち続ける。
吹き抜ける風が心地よかった。
「どうも。緒方父で――」
「だぁぁ!!うるさい!!!!」


負けた。私は負けてしまった。
ツッコミストとしての血が黙っていられなかったのだ。
「フフフ……やっと返事してくれましたね、楠木さん……」
屈辱だった。
この悪夢以外の何者でもない存在を、自らの手で認めてしまうとは。
「せんぱい〜……目覚めちゃったんですね〜……」
「へ……?ちょ、どうしたの、七穂ちゃん!?」
気がつくと、上着を脱ぎながらゆっくりと歩み寄る七穂ちゃん。
理性と本能、相反するはずの二つの意思が、危機的状況であることを認定する。
具体的にどう危険なのかは……理解したくもなかったが。

「き〜んに〜くのぉ〜……らぁ〜くえ〜んにぃ〜……」
緒方父も近づいてくる。
あまりの恐怖に、悲鳴さえ出なかった。

そして、七穂ちゃんが最後の一枚を脱ぎ捨てた――!


「「よぉ〜こそぉぉぉぉ〜〜〜☆」」


「…………」
そこには可愛らしい少女の裸体……ではなく。
ヨン様が、立っていた。
…………。
うん、そうだね。逃げようか。

――思考時間、コンマ1秒ジャスト。



「いやあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



私は逃げた。とにかく逃げた。
逃げる。逃げる。逃げる逃げる逃げるにげるにげるにげるニゲルニゲルニゲル……
それ以外、考えることをやめた。

「まぁ〜〜〜てぇ〜〜〜〜☆」

聞こえない。
幼女を意識した口調なのに、完全にミスマッチな重厚バリトン声など聞こえない。
もしつかまったら……?
そのときは人生の最期となるだろう。
あまりの恐怖に、つい後ろを――

「ひぃぃぃ!?増えてるぅぅぅ!!?」

いつの間にか、筋肉'sが増殖していた。
超スピードで『内股歩き』をしながら、つかず離れずついてくる100の筋肉。
あ、たった今、目の前でヨン様が増えた。
へぇ〜。こうやって分裂するのか〜……へぇ〜×14。
…………。


「うおおおおおぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉ!!!!!!」


『火事場の馬鹿力』まで引っ張り出して、私の全開スプリント走法が火を噴く。
必死の加速は、なんとか筋肉ウェーブを引き離すことに成功する。

人間、死ぬ気になればなんでもできる。
――そう、私語録に追加しようとしたとき。悲劇は起きた。

その犯人(?)は、バナナの皮。

…………。

私の全力は、王道に勝つことは出来なかった。


「そんなばななぁぁぁぁぁ!!!?」


敗者のお約束、断末魔の悲鳴を上げて、盛大にずっこける。
稼いだ距離は、みるみる縮まる。
ロリ声風バリトン声を上げながら迫る筋肉の波は、その数1000に達しようとしていた。

迫り来る絶望に、もはや立つ気力さえも尽きていた。


「有希……いまからそっちに行くね……」


そう、つぶやいて空を見上げれば、そこには親友が居た。
その親友は、世間によくいる、お騒がせ魔法少女のコスプレをしていた。

振りかぶる等身大ハリセン。
そして――



「こっちくんな☆」


スパァァァァン!!!




ごがっ!!

「いったぁぁ!!?」

痛む頭を抑える。
ふと見回すと、見慣れた自分の部屋であることが分かった。

――つまり、夢オチである。

こんな夢を見たのは、連日有希のお墓に行ったりしてるからだろう。
有希なりの、メッセージだったのかもしれない。

「でも、筋肉はないだろ……」

精神的ダメージは大きく、その場に突っ伏した。


初めから気づいていれば……やっぱ無理か。
タンコブと共に、悪夢の恐怖を刻み込んだ私であった。





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おまけ短編『12月?日』お送りしました。
罰ゲーム原案:香月様。

言うことはありません。ツッコミも受け付けません。
存分に筋肉分を堪能してください(死)

ではまた。

(製作時間:1時間半……これ以上かけたら負けだと思ってる)