ほしのの。2次製作

   


――星を、待っていた。


「はるねぇ……本当にいいのか?」

私が誰よりも頼りにしている弟は、もう一度私に尋ねた。

「……うん」

――ゆーちゃんはいつも傍に居てくれた。

「……分かったよ」

星野の家に来てからいろいろなことがあったけど、

「……なんで……」

喧嘩したこともあったけど、

「なんで、こんなことになったんだろうな……」

それでも結局は傍に居てくれた。

「……それはね、ゆーちゃん――」

そして――



「――私がそれを選んだからだよ」



最期の時も、傍に居てくれる。






ほしのの。2次創作作品  〜 そらに降る星 〜



 〜第1話〜



ことの始まりは私の通院だった。

私は2006年6月に『左反回神経麻痺』という、簡単に言えば声が出しにくくなる病気だと診断された。
それまでも声がかすれたりして、話づらいことが度々あったけど……
まさかそんな大層な病名が付くとは思わなかった。
自然に治る可能性もあったので、安静治療ということで普段通りに近い生活を続けていた。

それから半年ほど経ったある日。
私はいつもと同じように、病院へ診察を受けに行っていた。
経過は殊の外順調で、最初は辛かった部分もあったけど、今ではそれほど苦もなく日常生活を送っている。
だから最近は通院の頻度も減り、行ってもちょっと診断を受けてすぐに帰れる。
……はずだったんだけど……
「なんですか?これ……」
「ん……ちょっと調べたいことがあってね……」
よく分からない機械を取り付けられる私。
大声が出せない以外はほぼ健康体のはずなんだけど……何を調べるというのだろう。
「何か……おかしい所でもありましたか……?」
「いやいや、病気については順調に回復してるよ。問題ないさ」
不安そうな私の声に、明るく答える医師。
どうやら、病気については問題なさそうだ。
……って、それじゃあ……
「じゃあ、何を調べてるんですか?」
余計気になる。
「うーん……」
しかし、医師はなかなか話そうとしない。
そうやってるうちに、必要なデータは取れたみたいだ。
「あのー……」
「うん、問題ないみたいだね。それでは今日はこの辺で」
……ここで引き下がるのも良くない気がしたけど、早く帰りたかったこともあって、追求せずに帰ることにした。
「……ありがとうございました」
「いえいえ、お大事に」
この医師は悪い人じゃない……と思う。
だから特に気にしないことにした。

「――ってことがあったの」
夜、いつものようにゆーちゃんの部屋にて。
気にしないと決めたけど、一応ゆーちゃんに話だけはしておいた。
その話を聞いたゆーちゃんの反応は
「……阿呆」
「お姉ちゃんに向かって阿呆とはなんだー!」
「阿呆に阿呆と言って何が悪い」
はっきり断言されてしまった。
「何でもっと早く話さなかったんだ……」
「別にいつ話してもいいでしょー!」
「病院の帰りにでも話してくれればすぐに引き返したのに」
ちなみに、病院から早く帰りたかった理由は「ゆーちゃんを待たせていたから」だった。
「そんなに騒ぐほどのことでもないし……」
「患者に説明もなく、何かを調べられたんだぞ?気持ち悪いと思わないのか?」
「全然」
「…………」
ゆーちゃんは深い溜め息をついていた。


この時、私がもう少し気にしていれば未来は変わったのかもしれない。
でも、「もし」は絶対に起こらないことを、私は知っている。
なぜなら、私が、私の意志で選んだことの積み重ねが「現在」なのだから。


私の日常が大きく変化したのはこの1週間後だった。





「あー終わったぁ〜」
大きく伸びをしてみる。
最後の授業が終わると、高確率でこの行動をとるのは人類の本能だと思う。
……あとでゆーちゃんにも聞いてみよう。

今日は金曜日。この後は何をしようかと考える。
友達はみんな用事があるとのこと。明日遊ぶ約束を取り付けて、教室で別れた。
そんなわけで、今日は残念ながら一人で過ごすことになりそうだ。
「一人で甘味処を巡るのも悪くないかな……」
そう思ったので、お財布の状況を確認。
「……明日も遊ぶし、やっぱり大人しく帰ろうかな」
などと計画を立つつ校門へ向かう。
……その時、校門の前に黒塗りの車が止まっていたのだが、気にすることもなかった。
自分には関係ないことだし……
「……お」
タイミング良くその車から、サングラス&スーツといった、分かり易い人が3人ほど降りてきた。
(あんな格好の人が現実にうろついてるんだー)
と、ちょっと感動しつつ、その人達の行動を見物してみる私。
……黒服の人達は校門を堂々と進入。さらに、私の顔を見ながら近づいてきて……
「って……あれ?」
あっという間に目の前に。
しかも、
「和泉榛奈さんですね?」
思いっきり名指し。人違いの線も完全に消えたようだ。
「はぁ……」
事態についていけず、頷くしかない私。
さらに追い討ちをかけるように
「貴女にお願いしたいことがあって参りました」
サングラスを取って、深々と頭を下げてくる。
「一刻を争うので、まずは付いてきて頂きたい」
……ますます混乱。
「あのー……話がよく分からないのですが……」
「詳しいことは、着いてから直接話をさせて欲しいとのご命令なので」
聞いても答えてくれないようだ。
「うーん……」
余りにも怪しい。
一般的な思考の人なら、まず断るだろう。
私も、早くこの場から離れるつもりだった。
――そうする筈だった。
「とりあえず、話を聞くだけなら……」
気がついたら、私は、頷いていた。


後で考えても、何故頷いたのかはよく分からない。
でも、理由があるとすれば、この人達の目に見覚えがあったからだと思う。
――何も出来ない自分自身に対する怒りを湛えた目。
――苛立ちと、諦めの入り混じった悲しい目。

――あの時のみんなと同じ目。

(自分が、助けることが出来るなら……)
反射的に答えてしまったのだろう。
きっと、この目を見たくなかったから。

でも、例え時を遡って同じ場面をやり直したとしても。
何度でも私は同じ選択をするだろう。
なぜなら、私はこの選択を後悔してないから。

(ゆーちゃんが居たら止めただろうな……)
と心の中で苦笑しつつも、私は私自身の信念を曲げない。



こうして、私は生涯で最大の間違いを選んだ。






さて、とりあえず現状を把握しよう。
まず時間。12月1日金曜日の放課後。
次に場所。車の中。正確には栃木市の市街地を走っている黒塗りの車中。
周りに居る人物。正体不明の黒服の方々3名。

……どう考えても誘拐です。本当にありがとうございました。

「って、そんなわけないでしょ!」
つい大声でツッコミを入れてしまった。
黒服の方々がびっくりしてこっちを見ている。
……非常に気まずい。
「あ……あはは……」
とりあえず笑ってごまかしてみた。

現在、私は自分の意思でこの車に乗っている。
なんでも、困った事があって私の力が必要だとか、何とか。
ちょっと体が弱いほかは、ごく普通の女子高生……のはずなんだけど。
一体何がどうなっているのか……。
「で、少しは教えてくれませんか?」
と黒服の一人、亀山と名乗った人に聞いてみる。
「直接話したい、とのご命令ですので……申し訳ございません」
「と……とんでもない!こっちこそ、しつこくて御免なさい」
というわけで、詳しいどころか、断片すらも教えてくれないのが不安なところ。
まぁ、対応も丁寧だし、危害を加える気もなさそうだとは思うけど……。
「あれ……?」
私はここで行き先に気がついた。
「こっちって……市役所ですか?」
「はい、市役所に向かってます」
目的地が市役所。今までの記憶を振り返っても、ほとんど行ったことがない。
一体私に何の用があるのか……。
考えても答えが見つかるはずも無く、私達を乗せた車は市役所へと着いた。

「こちらへどうぞ」
案内する亀山さんに続く。
エレベーターへ乗り込んだので、何階へ行くのかと手元を覗いてみる。
と、亀山さんはボタンを色々操作し始め、
「……ええっ!?」
いきなりエレベーターは下降し始めた。
「市役所って地下あったんですか!?」
そんな話は聞いたことが無い。
「一般には知られてませんが、確かにあります」
答える亀山さん。
……そんな「関係者以外立入禁止」みたいな場所に連れてこられるとは……
だんだん不安になってくる。
(「頼み」を断ったら……口封じとか、されるんじゃないかな……)
いくら対応が丁寧でも、やっぱり怖いものは怖い。
(無事に帰れるかな……ゆーちゃん……)
「――よ」
「……はい?」
気がつけば、亀山さんは足を止めている。
「着きましたよ。どうぞお入り下さい」
そう促しつつ、内開きのドアを開ける。
「失礼しまーす……」
礼儀だと思ったので、言いながら入ってみる。
中は特に広くも無い普通の応接室だった。
と言っても、学校の応接室しか見たことが無いので普通かどうかは知らないけど。
「ようこそ、和泉榛奈さん」
声と共にこちらへ向かってくるのは、人の良さそうな白髪交じりのおじさん。
「私はここの所長をさせてもらってる者です」
「はぁ……」
曖昧な返事しか出来ない。
「いきなりですが本題に入りますよ。とにかく時間が無いので……」
そういえば、亀山さんも「一刻を争う」とか……何事なんだろう。
「和泉榛名さん、貴女に世界を救って欲しい」
――誰も計ってはいないが、きっちり10秒後に、
「………………ふぇ?」
初めて「使命」を聞かされた私の第一声が発せられた。


時は2006年12月1日。
ごく普通の女子高生が、地球を守るヒーロー(ヒロイン?)に指名された瞬間だった。
だが、当の私は――
「えーと…………?」
まだ、情報処理が追いついていなかった。



「……はるねぇ、もう一度言ってくれないか?」
「だから、私に世界を救ってほしいんだってー」
私の頭がフリーズしてから1時間後。
全く同じ場所でゆーちゃんがフリーズしていた。

ゆーちゃんがフリーズした経緯はこうだ。

「あのー……」
「はい、何でしょう」
「誰かに相談しても良いですか?」
とりあえず、理解できそうも無いことが分かったので助けを呼ぶ決心をした私。
「あまり外部には知られたくはないのですが……仕方ありませんね」
許可をくれたので、さっそく家に電話したところ、
「はい、和泉です」
「あ、ゆーちゃん?」
「なんだ、はるねぇか。家に電話するなんて、何かあったのか?」
「んーとね……」
説明しようとするけど……上手くまとまらない。
「……はるねぇ、どうした?」
「……んーと……」
いきなり「世界を救えって言われましたー♪」では何の説明にもならない。
「大丈夫か?はるねぇ……」
心配そうなゆーちゃんの声。
「……うー……」
あー……亀山さんがこっち見てるよー……。
「はるねぇ、今どこだ?何かに巻き込まれたのか?」
「……あー!面倒くさーい!!」
ついに、私の頭が暴発した。
突然の叫びに周りの人はもちろん、電話の向こうでもびっくりしている様子が伝わってくる。
「ゆ…ゆうねぇ、とりあえず落ち着いて――」
「今すぐ市役所まで来て!以上!!」
「はぁ!?何でそんな場所――」
「お姉ちゃん命令!!」
がちゃん!と受話器を乱暴に置く。
周りの人は何事かとこっちを見ている。
「えーと……今のでよろしいのですか……?」
恐る恐る、といった風に亀山さんが尋ねる。
「んーと……」
今のやり取りをよく考える。
そして出した結論は、
「……もう一度電話してもいいですか?」
だった。


その後、何とか市役所にゆーちゃんを呼ぶことに成功し、
「私に世界を救って欲しいんだって」
と言った結果が現在のフリーズ。……まぁ、誰でもこうなるよね……。
「まてまてまてまて。詳しく話してもらおうか」
「んーと、私もまだ詳しくは聞いてないんだよー」
と言いつつ、所長さんの方を見る。
「分かりました。ご説明しましょう」
笑顔で請け負う所長さん。
「榛名さんには、この道具を扱っていただきます」
と示したのは、ビー玉くらいの黒い球体。
「……なんですか?それ」
「これは……」
一息溜めて、
「人類の能力を越えた技術の結晶から作り出された『対宇宙戦最終決戦兵器TEPOどん』です!!」
「ちょっと待てい!!」
すかさずゆーちゃんからツッコミが入る。
「何なんだ対宇宙とか決戦兵器とか!つーか、その名前無茶苦茶不謹慎だし!」
「名前は無かったのでたった今付けました」
あいかわらず笑顔で答える所長さん。
「そうじゃなくて!」
ふと、真顔に戻るゆーちゃん。
「……はるねぇに戦争でもさせる気か?」
……一瞬の間があった。
「いえ、そうは言ってませんよ」
でも、所長さんは笑顔で否定した。
「まず、使い方を説明しますね」
言って、机から書類を拾い上げた。
「――これは、簡単に言えば『持ち主の願いをかなえる』道具なんです」
また現実離れしたキーワードが飛び出した。
「……どういうことですか?」
「そのまんまですよ。願った事は何でもかなえられるらしいです」
どこの猫型ロボットの秘密道具なんだか……って、
「……らしい、ですか?」
「はい」
ちょっと困ったように頬をかく所長さん。
「動かした場面を私は見たことが無いんですよねぇ……」
「なんじゃそりゃ」
馬鹿馬鹿しい、といった様子のゆーちゃん。
「そのビー玉でどうしろって言うんですかね?」
所長さんを睨みつけている。
「……でも」
その視線を笑顔で受け流しながら、
「『テスト』に合格した榛奈さんなら動かせるはずです」
「……ふぇ?私?」
まぁ、この話の流れならそういうことなのだろう。そうじゃなければ、私が呼ばれる理由が無い。
でも、
「はるねぇ、テストって何のことだ?」
「ううん、知らない」
全く身に覚えが無かった。
でも所長さんは、
「この前病院でテストさせて頂きましたよ」
「……病院……」
この前行ったのは、確か……
「あー!あの時!」
謎の機械。アレが『テスト』だったのだろう。
「うん、謎が解けてすっきりしたー」
「すっきりしたー、じゃない!」
こっちに怒鳴ってから、改めて所長さんを睨むゆーちゃん。
「不可解な点はたくさんある……。一つ目、何故使えないのに効果を知っている?二つ目、何故はるねぇだけが選ばれた?三つ目、何故そんな物がここにある?」
所長さんに畳み掛ける。
「挙げればキリがないが……とにかくあんた等の言ってることは信じられない」
「言いたい事はそれだけですか?」
「あぁ、だから俺達は帰らせてもらう」
「うーん……それは困りますねぇ」
本気で困ったような顔をする所長さん。
「今の質問に答えようと思えば出来ますけど……『部外者』には話すことは出来ない」
「つまり『協力しろ』ってことか……」
「話が早くて助かります」
笑顔に戻る所長さん。
「断る、と言ったら?」
「それも困りますね……すでに色々話してしまいましたし……」
「ペラペラ喋ったのはあんた等だろ?」
「それでも、タダで帰すわけにはいかないんですよ……こっちも仕事ですので」
笑顔のままだけど、部屋の中の空気が変わる。
一触即発。そんな状況で、
「所長さーん」
「……はい?」
私のほうを見る所長さん。
「これって、持ったまま願えばいいんですよね?」
「そういう話ですけど……」
「それじゃあ――」
言いながらゆーちゃんの隣へ。
そして、
「今日は遅いので帰らせてもらいますね」
その言葉と同時に玉が光を発する。
「なっ……!?」
所長さんも、周りの黒服の人も、ゆーちゃんも。
何かを言う前に玉は眩い光を放ち――
――その光が収まった時には、私たちの姿は消えていた。


「……いいのかよ……」
気がついたら家の前にいた。どうやら、この玉は本当に願いを叶えてくれるらしい。
「んー、でも遅いとみんな心配するし」
「……まぁ、しゃーないか……」
溜め息をつくゆーちゃん。
「そうそう、そんな事考えるだけ老けるよー?」
「はるねぇはもう少し考えろ!」
他愛無いやり取りをしながら、夕飯の待つ我が家へと入っていった。



――世界を救う。
これがどんな意味を持っているのかも知らなかったし。
この行動がどんな結果を生むかなんて、分かるはずもなかった。
この時の私は、まだ、何も知らない。


そして、自らの過ちに気づいていない――。



〜第2話へ続く〜

  

  



 〜第2話〜



「おーい、起きろー」
朝。鶏が元気に鳴くいつも通りの朝。
「……うーん……」
「起きろって。もう詩穂さんが朝御飯作ってるぞ」
しかし、家の中はいつもとは違う朝だった。
「お母さん……朝御飯……あーっ!」
あわてて跳ね起きる私。今日は朝御飯を手伝う約束の日だ。
「なんでもっと早く起こしてくれなかったのー!?」
最速で着替えつつ、八つ当たりをするが、
「起きなかったのは、はるねぇだ」
ドアの外からは冷たい返答。
「あうー……」
着替え終わって台所へ急ぐ。でも……
「あら、今日は遅かったのね榛奈」
待っていたのはお母さんの笑顔と、食卓に並べられた朝御飯だった。
「うぅ……ごめんなさい……」
「まぁ、たまにはこうゆう日もあるさ」
すでに食卓についていたおじいは豪快に笑っていた。
「朝御飯が冷める前に頂きましょう。ほら席に着いて」
お母さんの言葉で、席に着く私達。
そして全員の、いただきます。
いつもと同じように見える朝御飯の光景だった。

「でも、榛奈が寝坊するなんて珍しいわね」
さっきの話題を蒸し返すお母さん。
「昨夜は遅くまで起きてたようだったけど……ゆうくんと一緒に」
「……げほっ!」
一応、マンガのように味噌汁を噴出すことは堪えることに成功した。
「そ……そんなことないよー。すぐに寝たよね、ゆーちゃん」
……バレバレの嘘だとは承知の上。それでも隠す必要があったから――
「そんなに遅くまで話してたつもりはなかったけど……時間は見てませんでしたね」
……。
よく考えれば「遅くまで話していた」事実は隠す必要はなかった。
ゆーちゃんは頭の回転が速くて助かる……姉としては少々不満だが。
「時間を忘れるほど何を話してたのかな?」
「いつも通り、世間話ですよ。昨日はちょっと色々あって話し込んじゃいましたけど」
お母さんの追及もあっさりかわすゆーちゃん。しかし、
「んー……榛奈の反応は、『ただの世間話』には見えなかったけど……?」
しまった。咄嗟の行動が裏目に出たようだ。
とても楽しそうな笑みを浮かべるお母さん。
笑顔ではあるが、ちょっぴり真剣な目でゆーちゃんの方を見ているお父さんとおじい。
こっちを「どうにかしろ」という目で睨むゆーちゃん。
(うーん……こうなったら『アレ』しかないか)
私はそっとポケットの中のビー玉に触れる。
その直後――
「……あ、電話だ」
いち早く席を立ち電話へと向かう私。
「あ、千鳥?……うん……うん、わかったー」
受話器を置く。
「お友達?」
「うん。……ちょっと早めに来てくれ、って」
今日は友達と遊ぶ約束がある、ということは昨夜話していた。
ごちそうさま、の声と共に部屋へ戻る。
……それから丁度1分後。
「嘘だろ」
私の部屋に来たゆーちゃんが断言した。
「なにがー?」
「電話だよ。……呼び鈴鳴らしたのは『それ』だな?」
私の手の上で転がしている黒いビー玉を見ながら言った。
――もうお分かりだろうが、私は逃げる為の芝居をした。
このビー玉の力で呼び鈴を鳴らし、相手が友達であるフリをする。
ついでに「早く出かける」という嘘をついて逃れてきた、というわけ。
「さっすがゆーちゃん。よく分かってらっしゃる」
えらい、えらい、と頭を撫でてみる。
「……無駄な事に使うなってあれほど……」
最後まで言い切らないうちに、その言葉は溜め息に変わった。


昨日の夜の事。
「どうしよ、これ」
私の部屋に集まって作戦会議を開いた。
……まぁ、2人しか居ないけど。
「どうしよ、って……何も考えずに行動したのか?」
「考えてると思う?」
「威張るな」
最近溜め息ばかりのゆーちゃん。それを指摘すると、
「誰のせいで――」
「ごめんなさい」
姉の威厳もあったもんじゃない。
……お願いだから、元から無いなんて言わないでね。
「ゴホン。……まず、こいつは相当厳重に管理されていた」
さっきのやり取りを無かった事にして、ゆーちゃんの状況分析が始まった。
「つまり、コレを盗まれた事で奴らは取り返そうとする。しかも、その効果等を考えれば……」
一呼吸おいて、
「俺達を闇に葬ってでも取り返そうとする可能性が高い」
「……それって、私達は命を狙われるってこと?」
「そういうことだ」
……正直言って、それがどれほど深刻な事なのかよく分からなかった。
「……どーしよ?」
「……」
絶句&溜め息。馬鹿な姉でごめんね。
「しかし、実はその可能性は低いと思う」
「なんで?」
「それは、こいつをはるねぇが使える、という危険性だ」
まだ分かってない私。
「例えば……もし、俺が連中にさらわれたとする。はるねぇはどうしたいと思う?」
「そりゃもちろん助けたいって……」
「それだけで助かるんだよ。瞬間移動とかできるくらいだし、簡単に助ける事ができるはずだ」
確かに。実験してはいないが、その程度ならできる気がする。
「そして、奴らが『兵器』と言ってたことから察するに、攻撃能力も持ってるだろう」
「そういえば、そんなことも言ってたような……」
「ということは、はるねぇを怒らせた場合の報復を恐れると思う。『地球』とかいう規模の単語が出てくるくらいだから、相当の現象を引き起こせるんじゃないか?だから、連中は下手に手出しできない」
「でも、そう考えなかったら?」
「もちろん俺の想像に過ぎないから油断は出来ない……」
「うん……気をつけないとね」
「はるねぇ、それと……」
私の手の上のビー玉を見ながら、
「それはできるだけ使わないようにしよう」
「そう言うと思ったけど……。でも便利だよ……?」
「どんな副作用があるか分からないし、もしかしたら暴走するかもしれない」
「暴走って……どうなるの?」
「知ってたら苦労しないって……」
ビー玉が少し怖くなってきた。
「それで……今後どうするかについてだけど」
と言ったきり、黙り込むゆーちゃん。
「どうするの?」
「それを今から考えるんだよ……」
部屋の空気が少し重くなる。少しずつ深刻さを理解し始めた。
私も頭の中でどうやったら打開できるか考えてみる。
「あ。これ返したらどうだろ?私には必要ないし……」
「それはもう無理だな……」
あっさり却下される。
「連中の目的を聞いたろ?これを使えるはるねぇが必要なんだよ。返したところで捕まるだろうな」
「あーそうかー……」
「それに、ここまで機密事項を知った俺達をほっとくとも思えないしな……」
完全に手詰まり。
「やっぱり、あの人達の言う通りに……」
言いかけると
「戦争するって?冗談はやめろ」
強い口調で遮られる。
「でも、まだ話が途中だったし……」
「はるねぇは、やる気なのか?」
実感はわかないけど、戦争……つまり人を殺めるなんてしたくないと思う。
「だから、協力というのは絶対無しだ。いいな?」
命令形。ゆーちゃんが必死になっているときの口調だ。
……私のために言ってくれてるのは分かってる。
「……うん、わかった」
頷くしかなかった。

結局、事態に何らかの進展があるまで普通に生活する、という所で落ち着いた。
というわけで、今日は
「「いってきまーす」」
ゆーちゃんと二人で出かけることになった。
……友達と遊ぶ予定だったのだが、都合が悪くなったと嘘をついた。
万が一のことを考えると、一緒に遊べるような状況ではないだろうから。
同じ理由で家からも離れたかった。
半必然的に2人で出かけることを選択したというわけだ。
ここまでは昨夜のうちに決めておいたのだが……
「さて、どーしよ?」
何をするか、までは全く考えてなかった。
「うーん……人が多いと巻き込む可能性が……いや、人気が無いほうが危険かも……」
ぶつぶつ言いながらも、最善の行動を探すゆーちゃん。
「ゆーちゃん」
「……うん?」
「せっかくの休日なんだから、行きたい場所行って思いっきり楽しまなきゃ損だよ」
「はるねぇは単純だな……」
すっかり癖になっている溜め息を吐きながら言ってくれる。
「単純で悪いかー!」
「いいや、たまにはそれも悪くない」
意外にも、あっさり同意を示した。
肩透かしを食らったような気分だったけど……まぁいいか。
「で、どこへ行きたい?」
「まちに行こー。甘味処を制覇するのだー」
おおー、と意気込む私と
「はいはい……」
苦笑しながらついて来てくれるゆーちゃん。
2人で出かける楽しみから、私達は笑いながらで歩いていく。

さっきまでの不安は、期待へと変わっていき。
それは「2人なら何とかなる」という自信へと繋がっていく。
何の根拠もない自信だけど、本当に何とかできると思ってた。

その気持ちが大事なんだと私は知っていた。
その自信を持ち続けることが大事なんだと。
たとえ、絶望しか見えなかったとしても。



「あー、美味しかったぁー」
店を出たところで大きく伸びをする。
幸せな時間が名残惜しい。
「うーん……あっ、おみやげ買わないと」
「できれば甘い物以外にしてくれ……」
続いて出てきたゆーちゃんが釘を刺す。
「えー!?」
「って、本当に和菓子買う気だったのか!?」
「違うよ。帰りに買うのは雪見……」
「却下だ」
「あぅー……」
最後まで言ってないのに……。
「なんでそんなに食えるんだよ……」
「でも、4件しか回ってないよ?」
「……『制覇する』って、冗談じゃ……?」
「ほぇ?なんで冗談だと思ったの?」
「……なんでもないです」
溜め息。……おかしいこと言ったかなぁ?

太陽は傾き始め、夕方と呼ぶには少し早いくらいの時間。
午前中はのんびり歩いたりショッピングしたり。
お昼食べた後は、予告通りに甘味処巡り。
そして、ゆーちゃんがギブアップ。
2人で相談した結果、早めに帰ることにしたのだった。
「昼飯食わないほうが良かったな……」
「お昼御飯はちゃんと食べなきゃダメだよー」
「……」
当分和菓子の話をするのも嫌だ、といった様子のゆーちゃん。
あんなに美味しいのに、もったいない。
「あ、そーだ」
「ん?」
「丁度いい機会だし、こっち行ってみない?」
と指したのは山の方へ向かう裏道。
こっちを通ると遠回りになる上、坂道にもなる。
「何が『いい機会』なんだよ」
「最近運動してないし、時間もあるからハイキングもどきだよ」
ゆーちゃんは少し嫌そうな顔をしたが、
「運動か……俺も運動不足かもな……」
ということで、寄り道が決定した。

山道を歩く事5分。
病気とか色々な理由で元々激しい運動は避けるようにしてきたけど、身体を動かすのは好きな方だ。
小さい頃から、こうやって山中を歩き回っていた。
「うん、たまにはこういうのもいいよね」
「そうだな」
ゆーちゃんが星野へ来てからは、2人で歩き回るようになった。
「……あっちにいた頃は考えもしなかったな……」
「何を?」
「こうやって山道を歩こうだなんて、都会じゃまず思いつかないからな。ずいぶん健康的になったと思う」
「ふーん……そういうものなんだー」
「はるねぇにはこれが普通なんだろうけどさ……」

それは、故郷を懐かしむような、少し寂しそうな……そんな顔に見えたから。

「……後悔してる?星野に来たこと……」

自然に口から出てきた。無意識に尋ねていた。
ずっと、聞きたかったことだったのかもしれない。
でも……返答が怖かった。
もし、後悔していたら。
もし、離れたいと思っていたら――

「後悔も何も、それしか選択肢がなかったから仕方ない」
苦笑するゆーちゃん。
「でも、後悔してない。それどころか、来て良かったと思ってるよ」
「……本当?」
「あぁ。……そりゃ、来たばかりの頃は拒んだけどさ……。それでも今は、こっちの家族、友達……俺を受け入れてくれた皆に感謝してる」
「そっか……よかったー……」
心の底から安堵する。異常なほど不安だった心が晴れていく。
……私は、そんなに何を恐れていたのだろう……?

こんなやり取りをすることも多かった。
家ではあまり話さないことも、歩きながらだと話せたりするから不思議だと思う。
「うん、たまにはこういうのもいいよね……」
「……そうだな」
時間を忘れそうになるくらい、このゆったりとした感覚を楽しんでいた。

と、その時。
「グルルゥゥゥ……」
その場には無かった異質な音。
一瞬で現実に戻された。
「え?何?」
「しっ!……何か居る」
一転して緊張感が高まる。
明らかに獣のうなり声。最近は滅多に見なくなったとは言え、それでも居ないわけじゃない。
「狼とか……そうじゃなくても野犬とか……」
「襲ってきたりは……」
「そうならないことを、祈りたいな……」
だが祈り空しく、林から出てきた野犬が1匹。
どう見てもこっちを威嚇している。
「どうしよ……」
「落ち着け。騒がずに通り過ぎよう……」
野犬に警戒しつつも、ゆっくりと離れようとする。
どうやら1匹だけみたいだ。それが不幸中の幸いか。
少しずつ距離をとり、何とか逃げ切れるかと思った。
その時――
「「「ギャー!!」」」
野鳥の鳴き声。同時に多数の羽ばたく音。
どうやら近くに潜んでいたようだ。心臓に悪い。
しかし、次の瞬間。
「っ!まずい!!」
野犬が走り始めた。真っ直ぐこちらを目指してくる。
考える間も無く、足は全力で離脱を始めている。
――冷静に考えれば、不自然な点は多い。しかし、そんなことを考える暇は無い。
全力で走る私たち。
だが、どうやっても人間では逃げ切れない。
みるみる距離が縮まる――
「――きゃっ!?」
路上の石に足を取られた。そのまま転倒する。
ポケットからビー玉が転がり落ちる。
後ろを気にし過ぎて、前方への注意を怠ったのが原因……なんて考えてる場合じゃない!
慌てて起き上がろうとするが、野犬はもう目の前。
「――ゆーちゃん!?」
私と野犬の間に滑り込む。
その牙がゆーちゃんを捕らえる……そんな映像が脳内を駆け巡る。
目の前に転がる黒いビー玉。
野犬は目の前。
(ゆーちゃんを……守らなきゃ!)
私の望みを受けたビー玉が光を発する。
あまりの眩しさに目を瞑る私達。
そして野犬の悲鳴と、一拍置いて鈍い音。
そして静寂――。
「何が……起きたんだ?」
「分からない……」
とにかく、ゆーちゃんを守ろうと思った。それだけのはずだった。
その望みは……
「な……んだ、あれは……!?」
「……!」
残酷な姿で果たされた。
……野犬は離れた木に叩きつけられたらしい。
内臓を撒き散らし、骨まで見せてながら転がる、「犬だったモノ」。
辺りに漂い始める血の生臭い匂い。
目を閉じれば、さっき聞いた鈍い音がよみがえる。

目、鼻、耳からの全ての情報が……

「わ……わたしは……」


私が、『殺した』という事実を突きつけていた。


「あ……あぁ……」
持っていたものを放り投げる。
「落ち着け!はるねぇ!」
ゆーちゃんの必死な声もよく聞こえない。
……理解できない。理解したくない。
「はるねぇ!!」
「――やはり、やってしまいましたか」
突然の声。
振り向くと、そこには見覚えのある黒服の団体。
そして――
「所長……さん……」
黒いビー玉を拾い上げた所長さんの姿があった。


「いつから尾行していたんだ?」
私を背後に庇いつつ、所長さんを睨みつけるゆーちゃん。
「これでも、あなた方が思ってるより権力があるんですよ」
頭を掻きつつ、前と同じように笑顔で語る所長さん。
「昨夜から。……家の周囲を張らせていただきました」
「いままで手を出さなかったのは?」
「気づいてるかと思ったんですけどねぇ……『コレ』が怖かったんですよ、ハイ」
そう言ってビー玉を示す。
「これの能力は未知数でした。だから、ちょっと『実験』をさせてもらったんですが……」
「実験……だと……?」
「えぇ。普通に生活していては、こんな危機的状況になりませんから」
飄々と言い放つ所長さん。
「てめぇ……!」
所長さんに掴みかかるゆーちゃん。
だが、すぐに黒服に取り押さえられてしまう。
「おっと、乱暴ですねぇ……」
「そんな事のために!はるねぇを!!」
「『そんな事』……?」
目つきが変わる所長さん。
「『コレ』がどれほどの脅威なのか分かりませんか!?望むだけで、世界を滅ぼせるんですよ!?ただ1人の人間の『気まぐれ』で!!」
所長さんの変わりように、圧倒されるゆーちゃん。
「こんな物……存在してはいけないんです……」
そう呟いて顔を伏せる。
ゆーちゃんは何も言うことができない。
所長さんが次に顔を上げたときには、いつもの笑顔になっていた。
「すみません。取り乱してしまいました」
頭を下げて謝罪する。そして、
「……もう一度だけ、お願いします。世界を救っていただけませんか?」
私に向かってもう一度頭を下げた。
「それが終わったら、『コレ』は廃棄します。貴女とその周りの方々には、その後一切の手出しをしないと誓います」
嘘をついているような目には見えない。
ゆーちゃんは何も言わずに私を見ている。

「力を貸していただけますか?」

『力』――望んだだけで、殺すことが出来る『力』。
私は、とにかくこの『力』から逃げたかった。それしか考えられなかった。
だから――


「――分かりました」


――世界を救うための、選択をした。



――この選択は、間違っていたのだろうか?
考えても答えは出ない。人は全知全能ではないのだから。
『その答えを探し続けるのが人生だ』と言う人もいるけれど。
結局は、正しいと信じて、選び続けるしかないのだから。


私はまだ、自らの過ちには気づいていない――。



〜第3話へ続く〜

  

  

〜第3話〜



声が……聞こえる……。
「――」
よく聞こえない……。
「――ろ」
何だろう……何か、して欲しいの?
「何を……?」


「起きろ!はるねぇ!!」
「ふにゃ!?」
頬に違和感。
意識がはっきりしてくると共に、抓られているのが分かった。
「ゆーひゃん、いひゃいー」
「起きない方が悪いんだろ……昨日から2日連続、はるねぇが俺より遅いなんて今までに無いぞ?」
「ふみゃー……」
うーん……確かに、初めてかも知れない。
まぁ、色々あったし……。
「とにかく!さっさと着替えて出かける準備しろよ」
「ふぁーい……」
さっさと出て行ってしまうゆーちゃん。
着替えながら、時計を見る。
9時半。
「って、あと30分しか無いー!!」
10時には迎えが来るはずだった。


昨日の夕方。
世界を救う、と返事をした私。
その後、家まで送ってくれるというので、その間に話を聞くことにした。
「さて、私達の知っていることは全部お教えしたいのですが……どこから話しましょうか?」
車の中で、私達に尋ねる所長さん。
運転しているのは、前にも会った黒服の亀山さんだ。
そして私とゆーちゃんが後部座席。
この車にはこの4人が乗っている。
「まず、何故地球を救わなければならないのか、だよな」
ゆーちゃんの言葉にウンウンと同意する。
「そうですね、一番肝心な話ですが……」
所長さんは少し考える素振りを見せた後、
「その前に、『それ』の話を聞いてもらえますか?」
と切り出した。
もちろん、『それ』とはビー玉のことで、今は私の手に預けられている。
「いいんですか?」と尋ねたところ、
「これで少しは信用してくれるとうれしいのですが……」
と苦笑しながら答えたのだった。
「まず、『何でも叶えられる』道具の存在を聞いた時、どう思いましたか?」
「どうって……よく分かりませんでした」
と私。
「まず、胡散臭いと思いましたね」
とゆーちゃん。
「私は結城君と同じ感想でしたね。まず疑いました。……そんな現実離れした、マンガの世界の話でしか聞いた事ありませんからね」
ここで一息入れて、
「ところが、現に存在しています。……誰が、どうやって作ったと思いますか?」
また質問してきた。
「……って、所長さん達が作ったんじゃ?」
「できませんよ、そんなこと。できるなら自分に使えるものにしてます」
笑いながら否定する。
「というより、地球上の技術では作れないと思いますよ」
それじゃあ一体誰が、と言いかけて思いつく。
「もしかして、宇宙人とか?」
そんなわけない、というツッコミを期待して言ってみた。
……やっぱり自分はボケ担当なのだろうか……
「はい、ご名答」
まぁ、面白ければいいか。こうやってツッコんでくれるのも面白い……
「って、ええぇぇぇ!?」
予想外だった。まさか肯定されるとは。
「まぁ、話の流れからそれしかないとは思ったけど……」
と言いつつも、信じられないという顔のゆーちゃん。
「普通の人は宇宙人なんて知らないですからねぇ……その反応は普通ですよ」
ウンウンと頷く所長さん。
「じゃあ、もしかして……その宇宙人が地球を……?」
確かに、そう考えれば『コレ』を使うしか対抗策が無いのも分かる。
でも、所長さんは首を横に振った。
「その宇宙人は友好的だったらしいです。……直接会ったことがないので分かりませんけど……」
なんでも、その宇宙人達は文明がとてつもなく発達していて、同じように文明を発達させている星が無いかと探したところ、地球を発見して交流を持とうとした、ということらしい。
「その時に手土産として持ってきたのが……」
「はい。『コレ』を『2個』地球に置いていったのです」
「2個?もう一つは?」
ここで所長さんの言葉が止まった。顔は見えなかったが、あまりいい雰囲気では無い。
そして、次に出てきた言葉が、
「……もう一つの持ち主が、地球を滅ぼそうとしているのです」
爆弾発言だった。


友好的とは言え、いつ侵略に来るか分からない。
しかし、今の地球の文明では抵抗すらままならないことは明らかだった。
だから、たった一つのヒントである、彼らの知識が詰まっている道具の謎を解明することから始めたのだ。
そのための研究機関が作られたのは必然だろう。
しかし、いきなり問題が起きた。
この道具の使い方が全く分からなかったのだ。
道具の機能自体を疑問視する声も上がったが、彼らが地球に来た、それだけで文明は遥かに優れていることがわかる。未知のものであることは疑う余地はなく、同時に彼らが脅威であることも否定することは出来なかった。
そのため、秘密裏にではあるが研究を進めるほかは無かった。
場所が悪いのか?使い手を選ぶのか?
様々な環境を試しても効果は無く。
長い年月が経っても、研究は停滞したままだった。
そして、結果の出ないプロジェクトが放棄されかかった、まさにその時。
この道具に選ばれた人を発見したのだった。
『彼』は事情を聞き、研究に協力することに同意した。
そして研究は、今までの停滞が嘘のように、順調に進んでいった。
そんなある日、唐突に事件が起こった――

「……いつもの研究中に彼はその場にいた人をいきなり殺して姿を消しました。道具と共に。その後、研究所に直接通信が入り、『地球を滅ぼす』と一方的に宣言したのです」

そして今日。
予定通り10時に迎えに来てもらい、前にも来た応接室まで案内された。
そこで待っていた所長さんから、話の続きと補足をしてもらっているところだ。
「それで……もう一つを使える人間を探して、対抗しようとしたのか……」
改めて確認するゆーちゃん。
今までの疑問はほとんど解けた。でも……
「なんで研究施設がここ……市役所の地下なんですか?」
「1個目の持ち主の生活区域内なんですよ。その上、新しく建物造ったりすると目立ちますので、色々考えて、ここで落ち着いたらしいです」
そういうものなのかな……よく分からない。
正直それはどうでも良かった。問題は、もう一つの疑問。
「それで……1個目の持ち主は誰なんですか?」
つまり、私達の……敵。
何故地球を滅ぼそうとするのか。話し合う事はできるのか……。
私は、説得して解決しようと思っていた。
だから、そのための情報を一つでも多く入手しておきたかった。
しかし。
「残念ですが……分かりません」
申し訳なさそうに言う所長さん。
「分からない……?そんな筈無いでしょう」
ゆーちゃんが問い詰める。
「資料がないんですよ。どうやら本人が経歴を全て消してしまったらしいんです」
「前の研究員は?誰も知らないんですか?」
「言ったでしょう、その場にいた人を殺したと……全滅ですよ。一人も生き残ってません」
「彼の住所は?家族とか、知り合いとか――」
「何一つ分かりません。……道具の力を使えば記憶でさえも操作できるでしょうから、無駄でしょう」
「そんな馬鹿な……」
やっと引き下がるゆーちゃん。
「力になれず、申し訳ない……」
「いえ……こっちこそ、失礼しました」
空気は重くなったけど、そんなことを気にしてる余裕は無い。
「って、そういえば、『彼』はいつ地球を?どうやって滅ぼすつもりなんですか?」
初めて会った時、『時間が無い』と言っていた。
逆に考えれば、いつ決行するのか、どうやって手を下すのか、全く知らないわけでは無いはず。
「それは……『星』を落とすと予告しました」
そう言うと、傍に居た亀山さんに指示を出す。
それを受けた亀山さんが謎のスイッチを操作すると、
「うわぁ……」
綺麗な夜空が浮かび上がった。もちろん映像だけど。
どんな時に見る夜空でも、神秘的な美しさがある。
「見えますか?この星なんです」
そう示すのは一つの点。
よく見ると少しずつ動いているらしい。
「自然では考えられない速度で動いてるので、すぐに分かったそうです。もちろん地球直撃コースです」
この点が地球を滅ぼす……あまり実感は無いけど。
「専門家が出した計算によると……今夜0時までに止めないと、引力などの関係で地球に影響が出るとのことです」
「本当に時間が無いですね……」
説得する時間が……あまりにも少ない。
時計を見ると12時になろうとしていた。
――タイムリミットまで、残り12時間――。


残り限られた時間でやるべきこと。
まず、私は『道具』を使いこなさなければならなかった。
というのも――
「宇宙船?」
「はい、そうです」
宇宙へ出るために、宇宙船が必要だと言う所長さん。
「ですので、それを造ってもらいます」
笑顔で言い放つ。
「ど……どうやって……?」
「イメージして下さい。その通りのものが出来上がるでしょう」
簡単に言ってくれるけど、一般的な女子高生が宇宙船の細部まで想像できるはずも無く。
「うーん……」
作業は、予想通りというべきか、難航した。
相手も戦闘用の宇宙船を作っているはずなので、宇宙戦に耐えられるだけのしっかりしたものを用意する必要があった。
仕方ないので、ゆーちゃんに図書館へ行ってもらうなど、宇宙船に関する様々な資料を集めてもらう。
そして、やっとまともな物を完成させることができた。
所要時間4時間。
「終わったぁー!」
「はい、お疲れ様でした」
笑顔で労ってくれる所長さん。
……でも、いつも笑顔だからありがたみが半減してる気も……。
「はるねぇ……これからが本番だろ?」
ついでに、ゆーちゃんまで気を重くする発言をしてくれる。
「少しは姉を休ませようとは思わないのかー!」
「『少し』」
「小学生のような揚げ足とるなー!」
「この前どこかの女子高生にやられた記憶があるんだが?」
「あぅー……」
ぐぅの音も出ない。姉の威厳なんてものは存在すら許されなかった。

「さて、宇宙船の動かし方は分かりますか?」
「知りませんよそんなの……」
女子高生を何だと思ってるのか。
「待て、はるねぇ。はるねぇしか動かせないぞ、それは」
「ふぇ?……あ、そーか」
念じれば動くのか。なるほど。
「それで、どこへ行けばいいんですか?」
残り時間は7時間。出来るだけ早く動く必要があるだろう。
「その前に、作戦を練りましょう。迅速に、適切な行動をとる必要がありますから」
と、所長さん。
「とりあえず、宇宙へ瞬間移動して即座に『彼』を叩きます。不意打ちが一番確実だと思います。……その後、『星』の軌道を変えましょう。順調に行けばこれがベストです」
「待ってください」
反射的に口を出してしまった。
「それだと、『彼』を説得することは……」
難しい顔をする所長さん。
「……説得、ですか……。できるならそれが一番良いのですが……」
沈黙。それが意味する事は分かってる。
――『諦めろ』と。
「はるねぇ……」
心配そうにみるゆーちゃん。
「うん、分かってる……地球を救うのが第一だもんね」
安心させようと笑顔をつくる。
……作り笑いって、どうも苦手だ。今もゆーちゃんにバレてるみたい。
「とにかく、今は休んでいてください。もう少しで『彼』のいる位置を特定できると思います」


「はるねぇ……諦めてないだろ」
この後は余裕が無いだろうからと思って、少し早めの夕御飯を食べる事にした私達。
選んだ場所はデニーズ。
注文した後、口を開いたのはゆーちゃんだった。
「……何のことー?」
「とぼけるなよ。……説得するつもりなんだろ」
断言。流石ゆーちゃんだと思った。
「ゆーちゃんは騙せないかー……」
「当たり前だろ。姉弟なんだからさ」
――あれ……?
「……そうだよね」
今、一瞬だけ違和感を感じた。
何なのかは分からなかったけど……。
「で、どうするつもりなんだ?」
「うーん……相手のことが分からないから何とも言えないけど……」
「それでも説得するのか?失敗する可能性は高いぞ」
「うん。……動機だけでも分かるといいんだけど……」
「……引くつもりは無い、か」
「……うん」
引かない、絶対に。
それだけは譲れなかった。
たとえ、ゆーちゃんが相手でも。
「……わかった」
折れたのはゆーちゃんだった。
「いくら危ないって言っても聞かないしな」
「えへへ……」
「褒めてないって……」
ゴホン、と咳払いをした後、
「だけど、一つ条件がある」
と付け足した。
「条件?」
「あぁ、それは――」


「2人で行く……ですか?」
デニーズから帰ってきて、真っ直ぐ所長さんのところへ向かった私達。
そして真っ先にゆーちゃんの条件を話した。
「結城君は何故行きたいと?」
「姉弟ですから」
即答するゆーちゃん。
……まただ、何か引っかかる感じ……。
何かの言葉に反応してる気がする。
――『姉弟』……『きょうだい』?
……ゆーちゃん以外には……。
「だからって……」
考え込む私を他所に、話は続いている。
「ゆうねぇを一人で行かせるほうがよっぽど危険です。どんなドジ踏むか……」
「そうそう……って、なにそれー!」
漫才やってる場合じゃないって。
今考えてた事も忘れてしまった。
「うーん……」
「……姉が心配なんです。お願いします」
「私からもお願いします」
2人揃って頭を下げる。
「いやいや、榛奈さんが望むならその通りにするしかありませんよ。でも、覚悟は出来てますか?」
――覚悟なんて無い。誰だって死ぬのは怖い。

でも――

「「大丈夫です」」

――2人一緒なら大丈夫だって信じてる。



――残り5時間。
「準備は良いかな?」
目の前の画面に映っている、所長さんが尋ねる。
「はい」
声が震えてるような気もするけど、何とか答える。
段々、『地球を救う』という責任の重さが現実味を帯びてくる。
重い。押し潰されそうなくらい――
「――はるねぇ」
声と同時に、左手を包む温もり。
「うん、大丈夫」
――ゆーちゃんが居てくれるから。
声はもう震えてない。
「時間はかかりましたが、その地点から見える映像を入手する事に成功しました」
画面に大きく映し出される風景。
どう見ても宇宙であるが……
「ここへ飛んでください。そうすれば目の前です」
「……飛べるのかな?」
「……俺が聞きたいくらいだ」
まぁ、他に情報が無いんだから仕方ない。
『道具』を両手で握り締め、意識を集中する。
目を閉じ、脳内で今の映像を鮮明に描く。
見えないが、石が発光しているのが分かる。
……行ける……!
「――飛べっ!!」
私の声に応えるように。
宇宙船は宇宙へと移動した。
何の音も無く、それが当たり前だとでも言うように。
数秒把握できなかったほど、自然に移動していた。


目の前の映像は変わらない。
しかし、時折動いてるものが見えるので、さっきの画像とは違うと認識できた。
「……これが、宇宙……」
よく考えれば、日本で2番目の女性宇宙飛行士になったと言える。
すごい事かも知れない。
「……はるねぇ」
「うん」
ゆーちゃんの声で現実に戻る。
目の前には、明らかな人工物が――『彼』の宇宙船が見えている。
「……よし!」
覚悟を決めて、呼びかけてみよう。
――そう思った直後だった。

「――来ると思ったよ、榛奈」

その声が聞こえてきたのは。
――懐かしい声。でも――
「……だれ?」
思い出せなかった。
「はるねぇ、知り合いなのか?」
知ってる。……知ってるはずなのに……。
「うん、忘れてるみたいだね」
「ごめんなさい……思い出せない」
悔しかった。まさか、知り合いだとは思わなかったから。
それに、この人のことは……忘れちゃいけない気がするのに……。

「それでいいんだ。……僕が忘れさせたんだから」

衝撃的だった。
「な……なんで、そんな事するの!?」
分からなかった。悲しかった。
何故だろう、涙が、止まらない――。
「はるねぇ……」
ゆーちゃんが頭を撫でてくれる。
「……相変わらず、結城君が面倒を見てくれているのか」
撫でる手が、止まった。
「お……俺の事も、知ってるのか……?」
誰だか見当もつかない、といった様子だ。
「もちろん。……君達『姉弟』のことは、誰よりも知ってるよ――」
――『きょうだい』……私にはゆーちゃんしか……
否定する……いや、『否定』を否定する声が聞こえる。
『兄弟』。――ゆーちゃん。――弟。――兄……?
最後のパズルが埋まる感覚。
たくさんの、本当にたくさんの大事な思い出が、鮮明に蘇ってくる。
なんで、忘れてしまったのか――。

「立兄(たつにぃ)……?」

たった一人の、血を分けた兄のことを。


「……さすがに、『道具』の持ち主は騙し切れないか……」
観念したように呟く立兄。
同時に立兄の姿が映し出される。
「たつにぃ……って……?」
ゆーちゃんは、まだ思い出せないようだ。
「なんで、こんなことしたの……?」
色々思い出したけど、最後の記憶が曖昧だった。
――夕暮れ。私の部屋。寝込んでる私。
そうだった、私は……。
「治ってなんか、無かったんだ……」

『左反回神経麻痺』と診断された時。手術を避けて、自然に治るのを待つことにした。
治るなら、それが一番だと皆思っていた。
でも、治る素振りも無かった。
半年近く経ち、11月中旬になっても、ホワイトボードの生活が続いていた。
学校も度々休んでしまい、授業に段々ついていけなくなっていた。
それでも友達が面倒を見てくれていた。
とても嬉しかった。でも、これ以上迷惑は掛けられなかった。
高校3年生の秋。進学するため、受験勉強するための大事な時期だ。
もう、私の面倒を見る余裕も無くなるはず。すでに無理をさせてるのかもしれない。
そう思うと、学校へ行けなかった。
学校へ行きづらくなり、登校拒否気味になる私。
家にいる時間が多くなるため、今度は家族の表情を窺うようになる。
お母さんは、暇さえあれば私を元気付けようと、笑顔で話しかけてくれた。
他の皆も、必ず2,3回は私の部屋に来てくれた。
ゆーちゃんも、毎晩私が寝るまで話し相手になってくれた。
皆優しかった。私のために笑顔で話してくれた。泣きたくなるくらい嬉しかった。
でも――。
時折、一瞬だけ見える目。
――何も出来ない自分自身に対する怒りを湛えた目。
――苛立ちと、諦めの入り混じった悲しい目。
私は、自分を責めた。
なんで、こんな病気にかかってしまったのか。
なんで、皆に迷惑ばかり掛けてしまうのか。
なんで、手術する勇気が持てなかったのか――。

「……私は、治すことができなかった……」
そう、治らなかったはずなんだ。奇跡でも起きない限り。
なのに――
「なんで、今は治ってるの……?」
11月の下旬に病院へ行ったときは、既に治っていた。
その前……何が……。
立兄。病気。奇跡。――『道具』。
「……まさか」
「その通りだよ、榛奈。『道具』を使って、僕が治したんだ」
そして、立兄は何があったのか話し始めた――。

私が部屋に閉じこもっている時。
大人達は毎晩のように頭を抱えていた。
一向に治らない私の病気。
手術を勧めるべきか、否か。
精神的限界は既に見えていた。
でも、一番苦しんでいるのは榛奈だと言い聞かせて、無理を続けていた。
そんな姿を見ていた立兄は、自分の無力を誰よりも呪った。
昔から立兄は責任感が強かった。強すぎるくらいだった。
だから何か自分に出来ることは無いかと、仕事の合間をぬってパソコンに向かい続けた。
もっと別の治療法が無いかと。
そんな時、偶然『望みをかなえる道具』の噂を見つける。
半信半疑ではあったが、藁にも縋る思いで研究施設を訪ねる。
もちろん、いきなり来た外部の人間に情報を与えるはずも無く、門前払いされる立兄。
しかし、必死に頭を下げる立兄の姿に、当時の所長が考え直した。
研究も瀬戸際に立たされていたため、とにかく『持ち主』を見つけたかったのだ。
……念のため確かめてみよう、持ち主じゃなければ捨てればいい。
そう考えた所長は、立兄に『道具』を渡したのだった。
そして、1個目の『道具』の所有者となる。
立兄は喜んだ。私の病気が治せると。
所長は喜んだ。研究が続けられると。
お互いの利益が一致し、立兄は研究に協力することとなる。
だが……。
「なんでです!?一度でいい、妹の病気を治したいんです!」
「駄目だ。これは世界規模の機密事項。持ち出しなど許されん」
『道具』の施設外への持ち出しを、所長は絶対に許さなかった。
試しに遠隔で治るか試してみたけど、効かなかった。
どうしても持ち出す必要があったのだ。
こうしている間にも、家族は、榛奈は――!!
……魔が差した、というのか。
誰もが一度は持つであろう『憎悪』。
普通なら、苛立ちだけで止まるもの。
そんな一瞬の感情を――『道具』は実行した。
そして、事故が起きてしまった。
所長を含む、その場に居合わせた人間の命が失われ。
立兄は――壊れてしまった。
――とにかく、妹の病気は治さねばと、私の部屋へ移動した立兄。
冷静になれば、いきなり私の部屋へ瞬間移動するなんて失敗を犯さないだろう。
もちろん、私は見ていた。突然部屋に現れる立兄を。
立兄は私の病気を治すと、我に返る。この時、自らの失敗に気がついた。
――もう自分は人殺し。この家にはいられない――
結論を出した立兄は、私達の記憶を消し、自らの痕跡を跡形も無く消して、消息を絶つのだった。

「……」
想像を絶する話を聞かされて。
私は何も言うことができなかった。
「……大体、そんなところだけど……質問はあるかな?」
「……あぁ」
応えたのはゆーちゃんだった。
「結城君……思い出したかい?」
「なんとか、話にはついていけましたよ。それで質問なんですが……」
ここで一呼吸置く。
そして、最後にして最大の質問をぶつけた。
「――なんで立秋さんは、地球を滅ぼそうとしたんですか?」
今の話では、全く触れられなかった。
動機が――全く無い。
しばらく考えていた立兄は、やがて口を開く。

「――神に……見放されたんだよ……」

「……神……?」
理解不能、といった様子のゆーちゃん。
その様子を楽しむように見ながら、
「……何故かは僕にも分からないよ。言っただろう?僕はもう壊れてるんだよ」
自嘲的に笑う立兄。
「そ、そんな――」
「――そんなわけない」
はっきりと、響く声。
「はるねぇ……?」
「それは嘘だよ、立兄」
自信を持って言える。
「何を根拠にそんな事が言えるんだい?」
「根拠は無いよ。でも、『兄妹』だから、分かるんだよ」
立兄は、何も言わなかった。
映像の立兄と視線が合う。
瞬きすら忘れて、目を逸らしたら負けだとでも言うように。
先に根が尽きたのは立兄だった。
「……じゃあ、教えてくれ榛奈」
私に問いかける。
「僕は一体何がしたいんだい?」
一般的には理解不能な問いかけ。
でも、私には分かる。
「それはね、立兄――」
立兄が苦しんでいるのが分かる。

だから私は『兵器』を立兄にしっかりと向ける。


「――解放されたいんだよ。この『力』から」



――誰もが、解放されることを望んでいる。
それは、不治の病の苦しみかもしれない。それは、退屈な日常かもしれない。
しかし、それはできない。なぜなら、本当に取り返しのつかない手段しかないから。
それでも、苦しむ姿を見たくなかった。私自身が解放されたかった。


この瀬戸際でも、私は自らの過ちに気づいていない――。



〜第4話へ続く〜

 



〜第4話〜



実の兄へと真っ直ぐに向けられた『兵器』。

立兄を解放するための手段。

そして沈黙。立兄は無表情でこっちを見ている。

一瞬とも、永遠とも区別がつかない時間が経って。

やがて、立兄が口を開いた。

「……そうか……そうだね、解放されたかったんだ」
納得したように頷く。
「僕自身も気づかなかったのに……流石は我が妹、という事かな?」
「そうだよ、立兄」
不思議に心が落ち着いていた。
これから、実の兄を殺そうというのに。
「それじゃあ、準備はいいかな?立兄……」
「……うん。いつでもいいよ」
力を込める。石がそれに反応して――

「ちょっと待て!はるねぇ!!」
止めたのはゆーちゃんだった。
「どーしたの?ゆーちゃん」
「どうしたの、じゃない!おかしいぞ2人共!」
本気で怒っている。
「なんで殺す必要があるんだよ!実の兄じゃないか!」
「でも……立兄がそれを望んでるから……」
「この……大馬鹿!!」

――これは、流石に頭にくる。
「お……大馬鹿とはなによー!」
冷静だったはずの心が動かされる。
「立兄が苦しんでるんだもん!こうするしかないじゃない!!」
目頭が熱くなる。乾いたはずの涙があふれ出す。
「だから、頭を使えってば」
私の頭を撫でながら言うゆーちゃん。

「記憶を、消せばいい」

――そうだ、その手があった。
なんでこんな簡単な事に気づかなかったのか。
私もおかしくなり始めてたのかな……。
「駄目だよ、結城君」
静かに、立兄が否定する。
「駄目なんだ。『コレ』を持っている限り、僕は抵抗してしまう」
力なく首を振る立兄。
「全力で、吹き飛ばす以外ないんだよ」

――誰だって、記憶をいじられたくはない。
たとえ嫌な記憶でも、それは、その人の人生そのものなのだから。
他人が介入してはならない、聖域だから。
本能で抵抗してしまうのだろう。
『道具』はそれに反応してしまう。
それを止める事は、出来ない――

「――なら、簡単じゃないですか」
と、簡単に言ったゆうちゃん。
何が言いたいのか分からず、目が点になる私と立兄。
「それをもってるから駄目なんでしょ?だったら――」

あっさりと、言い放つ。

「捨てればいいじゃないですか」


絶句。
「ゆ……ゆーちゃん?」
「何の問題があるんだ?邪魔なら捨てる。何か間違ってるか?」
単純明快。一刀両断。
本当にあっさりと言ってくれる。
「……まぁ、それが出来れば話は早いんだけどね……」
苦笑いを浮かべる立兄。
「手放せないんだよ、自分からは。『コレ』を失うのが怖いんだ」
私も、『コレ』を自分から放棄する事はできないと思う。
『力』から解放されたいと言っても、『力』を失うのが怖い臆病者だ。
だから、立兄の気持ちも――

「――俺なら、捨てますよ」
力強く、ゆーちゃんは断言する。
「分からないから、こんな事が言えるのかもしれない。そんな事は分かってる。……でも」
キッ、と立兄を睨みつける。
「俺は周りの人を悲しませたくは無い!自分が我慢して済むなら、迷わずそれを選ぶ!」
真っ直ぐな目。こんなに真剣な目のゆーちゃんを見るのは初めてかもしれない。
「はるねぇみたいな事は……もうたくさんだ……!」
「――!!」
ハッ、とした顔の立兄。
「確かに……手術を避けるのと同じだな……」
そうだ……ゆーちゃんも傷ついていたんだ。
何も出来ない自分が辛かったんだ。
だから、ゆーちゃんは……二度と繰り返さない道を選んだ。
「これじゃ……兄として失格だな」

――それでも、立兄は道を選んでいた。
確かに、一度は間違えてしまったけれど。
間違えた自分が許せなくて、責任を取る道を選んだ。


――じゃあ、私は何を選んだ?

手術が嫌だった。だから逃げた。時が解決するのを、ただ待つだけだった。
『力』が怖かった。だから協力した。放棄することもできず、ただ流されただけだった。
立兄の苦しんでる姿を見たくなかった。だから殺そうとした。最善を尽くそうともせず、ただ立兄の望み通りにしようとした。

――私は……何も選んでなかった。

今まで、選んできたつもりだった。
自分の正義の下に、最善だと思った行動を取ってきたつもりだった。
それが口だけだったことにも気づかずに。

この時、初めて自らの浅はかさに――過ちに気づいた。

「私……お姉ちゃん失格だよ……」
「はるねぇ……」
「……私は何も選んでなかった。用意された道を歩いてただけだった。……最善の道を探す努力もしなかった!」
「……そんな事はない」
ゆーちゃんは、私の頭を撫で始めた。
私が落ち込んでる時は、いつもこうして慰めてくれる。
「間違えていた俺を正してくれた。今思えば、あれは最善の道だったと思う」
星野に来てすぐのことを言ってるのだろう。
「俺にとって、はるねぇが姉になってくれたことが、人生で最良の出来事だ」
今のところだけどな、と恥ずかしそうに付け足す。
「人間なんだから間違える事もあるし、最善を選び損ねる事もある。それでも、正しいと信じて選び続けろって教えてくれたのは、はるねぇだろ?」
――そんな偉そうなことも言ったっけ。
「それで間違えたら、やり直す。最善じゃなければ、次は最善を選べるように頑張る。それでいいんだよな?」
「……完全に立場が逆転してるよー……」
でも、それで良いのかもしれない。
だって――

「じゃあ、今度は間違えないようにするね!」

――私にとっても、ゆーちゃんが弟になってくれたことは、人生で最良の出来事だから。



「それじゃあ、立兄の『道具』に関する記憶を封じて家に送って……」
「その後『星』を止めれば完璧だな」
手順を確認する。
タイムリミットは残り1時間ちょっと、といったところ。

あの後、立兄は無事に『道具』の破棄に成功。
「最後に何か願い事しておけばよかったかなぁ……」
冗談を言えるほど、精神的に落ち着いてきたようだ。

「さて、それじゃあ行くよー」
「ちょっと待ってくれ」
立兄が待ったをかける。
……ちなみに、『道具』を破棄した時点で宇宙船はゴミとなるため、その前にこっちの宇宙船に移っている。
「どうしたの?立兄」
「どうやって『星』を止めるつもりなんだい?」
そういえば、全然決めてなかった。
「まぁ、何とかなるでしょ」
と、楽観的に考えてるんだけど……
「『限界』を越えるんじゃないか?」
立兄が不吉な単語を放った。
「『限界』……?なんですかそれ?」
「聞いてない……?」
びっくりした様子の立兄。
「時間が無いから簡単に説明するよ。この『道具』は無償で望みを叶えてるわけじゃないんだ。その人の心、『精神エネルギー』とでも言うのかな?それを使っている」
ここまで一息で喋る。
「使いすぎると、回復するために睡眠時間が増えるといった症状が出てくる」
「……なるほど」
また一つの謎が解けた。
「それでも使い続けると……どうなるかは僕にも分からない。その前に、半強制的に冬眠状態に入るよ。本能的に身を守ろうとするんだろうね。これを『限界』と呼んでるんだ」
「つまり、『限界』を越えるとはるねぇは倒れる、と?」
「そういうこと」
ゆーちゃんに頷く。
「榛奈……僕の時は『星』を動かすだけで相当消耗した。だから、僕の事は後回しでも――」
「――それじゃあ、行くよ」
「!?はる……」
静止の言葉を言い終わらない内に、立兄はその場に倒れこんだ。
「はるねぇ……?」
「もう時間が無いんだよ?さて、次は――」
「はるねぇ!」
肩をつかまれる。
「ゆーちゃん……」
「……知ってたんだな、『限界』のこと。――もう『限界』が近い事を……!」
……本当に、ゆーちゃんには隠し事ができないみたいだ。
「なんとなく、ね。宇宙船を作ってたときから眠気はあったんだよ」
立兄を送るために、意識を集中する。
『道具』はそれに応えてくれる。
「立兄の話を聞いて、確信した……もう無事に『星』を止めることはできないって――」
光が立兄を包み込み、それが収まった時には立兄の姿は無かった。

――もう『限界』なのだろう。ひどく眠い。

「――犠牲が必要だと確信したんだよ」

――タイムリミットまで、残り1時間を切った――。






――星を、待っていた。


「はるねぇ……本当にいいのか?」

私が誰よりも頼りにしている弟は、もう一度私に尋ねた。
――私が『世界を救う』と決めたから、引くつもりは無い。

「……うん」

――ゆーちゃんはいつも傍に居てくれた。
私の我がままを、聞いてくれた。

「……分かったよ」

こうやって、結局は私が押し通してるよね。
……これは姉の特権かな?

「……なんで……」

何度目か分からない疑問を口にするゆーちゃん。
――私は『道具』に意識を集中し始めた。

「なんで、こんなことになったんだろうな……」

光が辺りを包み始める。
もう声も聞こえづらいほど、意識が飛び始めている。

「……それはね、ゆーちゃん――」

光の奔流。ゆーちゃんの気配が消えようとしているのが分かる。
そして――



「――私がそれを選んだからだよ」



最期の時も、傍に居てくれる。
でも、私はそれを許さなかった。
――犠牲は一人で十分だから。


目を向けると、画面には動く光が映し出されてる。
その『星』は真っ直ぐこっちへ向かってくる。

さて、最期の仕事を始めようか。

途切れそうな意識の中、それでも気合で集中する。
最後の力を振り絞っているのが分かるのか、いつもより力強い光に見える。
全身全霊。失敗するわけにはいかない。
(――もしこれで失敗したら『ごめんなさい』じゃ済まないんだろうな……)
こんな事が考えられるなんて、意外と余裕があるものだ。
『星』はどんどん大きくなっていく。速い。
――でも、これで終わりだ。『星』も私も。
脳裏に立兄の言葉が蘇る。

『最後に何か願い事――』

私の願い事。もし叶うのならば……

光があふれ出す。もう何も見えない。

(私は――)

私の意識は、光に溶けていった――。






「……すべて、知ってたんですね」
ここは研究施設の応接室。
中に居るのは俺と所長さん、黒服の……亀山さんとかいったかな?
それだけだ。
「すべて、とは?」
何のことか分からない、と首をかしげる所長さん。
「まず、1個目の所有者が立秋さんだったこと」
これは簡単だ。2個目の持ち主を探すなら、まずその家族にいるのではないか、と考えてもおかしくない。
その予想が見事に当たって、はるねぇが持ち主に選ばれた。
また、病院もグルでなければ、突然完治したはるねぇを放っておくはずも無い。
判断する材料はいくらでもあった。
「それは、認めましょう。……万が一、榛奈さんに投げられては困りますので、黙っていました」
「でしょうね」
嘘をついたことは腹立たしい。でも、それ以上に正しい判断だと分かるのが悔しい。
「そして、もう一つ。……『限界』のことをわざと伏せてましたね」
これは半分勘だったが、
「……はい」
所長さんは認めた。
「といっても、これは榛奈さんに話しても良かったことです。ですが、貴方には話せなかった」
「……俺、ですか?」
これは予想外だった。
「榛奈さんだけなら、この事実を知っても最後までやってくれると思いましたが、貴方が居るなら話は別です」
俺の目を真っ直ぐ見ながら、尋ねる。
「もし、知ってたらどうしました?」
「……」
止める。間違いなく。たとえはるねぇを裏切ってでも止めただろう。
「……言いたいことは分かりました」
「ご理解いただけて幸いです」
やっぱり腹が立つ。
そろそろ時間が来たので席を立つ俺。
「もう二度と来ませんよ」
「その方がいいでしょう。ここも閉鎖ですからね」
研究の対象が消失したことで、プロジェクトも解散になるらしい。
「……じゃあ二度と会わないでしょうね」
「寂しいですか?」
「とても嬉しいです」
「やれやれ……嫌われましたねぇ」
「自分が悪いんでしょう」
最後まで食えない人だ。
「では、失礼します」
一応礼儀として言っておく。
「はい、お元気で。――榛奈さんにも、よろしくお伝え下さい」
「……わかりました」


あれから一週間になる。
立秋さんは普通に家に戻って、前と同じように仕事をしている。
最初、少しだけドタバタがあったらしいが、記憶をいじったことによる副作用なのだろう。
皆の記憶は、あの夜には回復していた。……立秋さんが一時期失踪していた部分を除いて。
本人も覚えてないのだから、思い出すことも無いだろう。
なんとも都合の良い話だが、はるねぇがそれを望んだのだと思っている。

そして、はるねぇは――

「おう、元気か?」
病院の一室。
マンガを呼んでいたはるねぇは、俺に気づくと笑顔になった。
――犬のように感情が分かり易い。
そういえば、どこぞの元委員長が『こいぬ系癒し娘』と表現してたな……。
『あきたー』
秋田?あぁ、『飽きた』か。
「マンガはもう読み終わったのか?」
『もちろん』
「うーん……他に暇つぶしになるようなものあったっけ……?」
すると、はるねぇは俺を指差す。
「……俺は暇つぶしのおもちゃじゃない!」
若干控えめだが、ツッコミは忘れない。


あの夜。
気力・精神力、完全に使い果たしながらも、はるねぇは帰ってきた。
……流石に、俺の部屋に直接湧いて出たのはびっくりしたが。
ちなみに『道具』も無かった。消失したか、宇宙に放り出されたりしたのだろう。
完全に爆睡していたので、仕方なくはるねぇを部屋まで抱えて行った。
そして翌朝……いや、夕方だった。
俺が学校から帰ってきた時に、丁度はるねぇが起きたらしい。
しかし、予想もしなかった事態が起きていた。
病気が再発していたのだ。
『限界』を越えた反動なのか、『道具』の効果が切れたのか……。
とにかく、ホワイトボードの生活に戻る。その生活を想像したのだが。
『手術受けたい』
はるねぇは、力強く意思を伝えた。
――それは、はるねぇが選び取った『最善の選択』だった。
……同じ過ちは繰り返さない。
そう聞こえた気がした。


「……だから、頭撫でるのやめい!」
……そんなわけで、手術は無事成功。
今は経過待ちということで、入院生活を送っている。
『なんでー?』
「……恥ずかしいからに決まってんだろ……」
もちろん、他に入院患者のいる部屋だ。
皆こっちを見ている。非常に恥ずかしい。
「……あ、そうだ。所長さんから伝言。『よろしく』ってさ」
一応伝えておく。超投げやりだが。
『?』
……まぁ、分かるわけないか。
研究所が閉鎖になったなんて知らないだろうし……。
ちゃんと説明しようとしたところで、はるねぇの方から耳打ちのジェスチャー。
「?」
よく分からないが、聞いてみることにする。
「今日ね、担当の、お医者さんが――」
ここまで聞いた時だった。
「おやおや、あまり声を出さないようにって言った筈ですよ?」
すごく聞き覚えのある声。しかもついさっき聞いたような……
「って、なんでここに居るんだ!?」
所長さんだった。
「こらこら結城君、病院では静かにって習わなかったのですか?」
相変わらず、食えない笑顔で喋る。
……と、はるねぇがホワイトボードを出す。
『所長さんが担当医になったの』
さっきの続きなんだろう。
「……って、所長さん医者だったのか!?」
「だから、大声は出さないようにしましょう。それと、私のことは『先生』とお呼びください」
しゃーしゃーと言い放つ所長さん……もとい『先生』。
頭を抱える俺に向かって、追撃を放った。
「というわけで、これからも宜しくお願いしますね」
『はーい』とはるねぇ。
俺は返事する気力も残っていなかった。



――季節は冬。
寒いものの、空を見上げれば雲ひとつ無い空が広がっている。
夕暮れの太陽が綺麗だった。瞬き始めた星が美しかった。
ずっとこの空を見ていたい……。
でも、それは許されないと分かっている。
曇る日もあるだろう。もうじき雪も降るらしい。
人間の心と同じように、ずっと晴れていることなど無い。

でも、ずっと曇っていることも無いから。
だから、俺は前へ進む。明日を信じて、前へと進む。
たとえ、永遠のように曇り空が続いていたとしても。
明日はきっと、この空に会えると信じてるから。



――そんな俺を見ていた空で、流れ星が一つ、降っていた――。







ほしのの。2次創作作品  〜 そらに降る星 〜

――完――

 




 〜あとがき 兼 作品解説 兼 作者言い訳(何)〜


皆さんこんにちわ。海老天と申します。

……とりあえず、「今は夜だから『こんばんわ』だもんねー。バーカ」というツッコミは受け付けませんので、そのつもりで(何)

まずは、この長ったらしい&こっ恥ずかしい文章を読んでいただき、真にありがとうございます(m _ _)m

……本当に長いと思います。自分自身、ここまでになるとは思いもしませんでした……。
何故こうなったのか、理由は3つ。

@文章力が無く、まわりくどいから。
A書いてる傍から妄想が爆発するから(何)
B(後述)

……どう見ても中二病です。本当にありがとうございましたil||li _| ̄|○ il||l

き、気を取り直して……(汗)

自分ははっきり言ってド素人です(きっぱり)
というか、こんな書き物自体初めてです。
ですので、読みながら
「うがー!なんだこの幼稚な文章は!!」
と赤面して凹○ゴロゴロしていただければ、それが作者の思う壺です。

ふははは……せいぜい悶え苦しむがいいわー!

もちろん、自爆コマンドなので、作者はすでに死んでいる(何)

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さて、一応「作品解説」と銘打ってるので、動機から解説させていただきます。

事の発端は6月10日。
……勘のよい方はもうお気づきでしょう。
そうです、某チャットに吉村氏が降臨した日です。

その前の日記で「行くかも」的な文字を目にしていたので、
「マジで!?こりゃ見るしかねぇ!!!」
と、チャット画面をチェックし続けていた自分。
……ちなみに、タイプが遅い&気が乗らなかった為、ROMに徹してました。
すると、本当に降臨したではありませんか。
真夜中に絶叫するくらいテンション上がりつつ、ROMってる自分(ヘタレ)
中の会話を読んで、有意義な時間を過ごさせていただきました。
あの時の中の人(10人ちょっとでしたっけ?)この場をお借りしてお礼申し上げます(m _ _)m
……って、何かおかしい気もするけどw

さて、本題です。
その時の中の会話で「2次製作について」の話題が出てきました。
普段から、やりたいかも、くらいに思ってた自分ですので、少し食いつきました。
すると、

吉村麻之->「流石に一週間で来るとは思ってないけどっ!」

俺は思った。

「これは俺に対する挑戦だ」


……どうみてもパクリです。本当にあr(risouさん、申し訳ございません(m;_ _)m)

でも、これが本当に動機なんです。
で、チャットの内容より「自分の考えた偽3話とか……」といった文面を見つけたので、
「これだぁぁぁぁ!!!!」
と、作り始めました。「偽3話として」。
チャット画面の傍から、既に書き始めてたんです(爆)

「2話の続きからだから……うん、こんな感じで始めて……」
「ま、てきとーに作ったら短編になるだろ。後で煮詰めていけば……」
とか、色々考えていたのですが、ここで大問題が浮上したのです。
その問題が、本作品を長編にしてしまった原因なのです!!

それは……



吉村麻之->「第3話は宇宙編です」(※ログ取ってないのでうろ覚えです。間違ってたらすいません)


「「「な・・・なんだってー!!!!」」」


何という爆弾発言。
完全に固まる自分の前で、吉村氏はさらに爆撃を続けます。

吉村麻之->「市役所の地下にある決戦兵器が・・・」(※以下同文。これ以上覚えてません(涙))

……正常な人間なら、これがネタであると判断できます。
もちろん、自分は正常です(何)

……だからこそ。

 あ え て 組 み 込 ん で や り ま し た (核爆)

書き出しがシリアスだったので(本当にシリアスにする予定だったので)、このネタを入れるのは途方もない苦労を伴いました。
完全にギャグとして作り直す手もありましたが、それではつまらない。
……正直、自分のギャグに自信がないんだ。すまない(´・ω・`)

と、色々試行錯誤した結果が本作品です。ありえない設定は全て吉村氏の成せる業だったのです。マジで。

まぁ、コレでこの無茶苦茶な作品の謎は解けたと思います。
あと、解説が必要だと思われるのは、黒幕である立秋兄さんの動機でしょうね。
なぜ彼がラスボスなのか。
その理由は……やっぱりチャットの話題でした(何)

2次製作の話題で盛り上がったチャット。その後、「立秋兄さんの水着の絵を……」という話が出たんです。……ですよね?(汗)
で、盛り上がるチャット。その中で、「何故、立秋兄はそんなに人気があるのか?」と吉村氏が問いかけたところ、その返答は――


……すいません、なんて言ってたか覚えてませんil||li _| ̄|○ il||l


と、とりあえず、彼は人気が高かったんですよ、ハイ。
そして、吉村氏が放った発言が

吉村麻之->「ただのヘタレ眼鏡ですけど(笑)」(※以下同文。でも本当にこんな感じだったw)

……この発言を見た瞬間、
「製作者(神)に見放された……カワイソス(´・ω・`)」
という感情が自分の中で芽生えました(何)


……あ、「神に見放された」って使えるんじゃね?


これが黒幕の誕生でした。

……ツッコミは全部スルーします(何)


解説はこんなものですかね?
あと、終わり方はいくつか考えました。
中でも迷ったのが、本編の「ハッピーエンド」とホラーでありがちな「無限ループエンド」です。
簡単に言うと、最後のはるねぇの願いが「時を遡る」ということにして、同じ過ちを繰り返す、といったエンドにしようかって……。
でも、そうすると「打開編」とか次回作の構想が浮かび始めたため、ギブアップ(何)
もう無理。気力と能力が限界なので勘弁してください。

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もう一度言いますが、作者はド素人です。
誤字・脱字・間違った日本語・おかしい表現・えとせとら、が山ほどあると思いますが、生暖かく見守ってください(m _ _)m
その上で、感想などがありましたら、レスでも付けて頂けると、作者が泣きながら喜んで踊り狂うでしょう(何)


最後に、「あとがき」の癖にクソ長いものになってしまって本当にすいませんでした(汗)

それでも、ここまで読んでくださった貴方へ。

最大限の敬意と感謝を込めて――


「 貴方の声援に 感謝します 」










……うん、雲雨のあとがきのパクリだね。やりたかっただけなんだ。反省も後悔もしていない。
さて、逃げy(撲殺)

 〜了〜